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まんじゅうこわい台本


昔から十人寄れば気は十色
なんてことを申しまして
一人一人お顔形の違いますように
ご希少というものもそれぞれ違う
そうなると召し上がるもんなんかも
いろいろですね

おー集まってくれたかい
今日はねそれぞれでみんな好きなもん食べようってんだ
お前さん何が好き?

私は誰が何と言ったってナッパだね

ナッパ?まるで鳥だねぇ
だけど好きなんだからしょうがないよな
お前なんだ?

俺?俺メン類だよ

メン類?メン類いいね
メン類といってもいろいろ種類があるよ
メン類ってお前さん何が好き?

もちろんソフトクリーム

なんだよお前こいつメン類知らねえんだよ
もうちょっとマシな野郎いねえかな

おつかれ!おつかれ!おつかれ!
どいつもこいつも
くだらねえこと言い合って
江戸っ子だったらもうちょい
マシなもん食えってんだ
え?
俺はね中トロの刺身口の中に
ポーンと放り込みてえねえ

(  ポンと膝叩く )
えらい!この人は江戸っ子の鏡だよ
刺身ってのは酒によくって
おまんまにいいんだ
すると何かい?
涙がボロボロボロボロこぼれるほど
わさびを効かしてか?

ああジャムつけて

いろんな方がいるものでございますが

お~いみんな集まってくれたかい?

おい今日はこんなに集まってどうしたんだよ

実はな今日は俺の誕生日なんだよ

何?勘定日?

勘定日じゃないよ誕生日

何その誕生日ってのは?

だからさ俺が生まれた日よ

お前が?
生まれたのお前が?
おい聞いた?
こいつ生まれたんだってさ
生まれるわけないよな

裏のドブで湧いたろ

よせよ 俺ボウフラじゃないから
生まれたんだよ誕生日だから
え?
でみんなで集まってもらってさ
こう陽気にわーっと
まあまあこれだけおしゃべり大勢いるんだから
陽気になるんだ
うん

おしゃべりで思い出した
松公のやついねえな
あいつ一人でいるって言ってたら
いつも10人も20人もしゃべってんだ
ああ向こうの方から来た
ああ息せき切って駆け出してきたよ

松公
ドアッハッハッハッハッハ

来た途端にうるさいねぇ
どうしたよ

松公
誰か追っかけてこないか?
誰か追っかけてこないか?

な、何だよ
何か追われてんのか

松公
そうじゃないよ
いや俺もう今日ほど驚いたことはないね
もうみんなが集まってんの知ってたから
遅れちゃいけねえと思って
あの梅の湯の裏
あそこ抜けるって言うとちけぇんだよ
ここは
で路地抜けるって言うとな
後ろから

おい…
松公…
声がするんだよ
でっ振り返ってみたら誰もいないんだ
で行こうかなと思うとまた声がして

松公…
待たねえか…

ってまた声がするんだよ
振り返ってみたら驚いた
いたよ
蛇!
こんな太い蛇がトグロを巻いて
鎌っ首もたけて
松公!ちょいと待て!
俺は貴様を飲んじゃうぞ~
と言われた時は驚いたね~
飲まれちゃいけねえと思ったから
待ってください!
せめて来月までは~

なんだよ
なんか借金の言い訳してるようだね
え?
お前いいじゃねえかお前
蛇なんかあんなとこいるわけねえだろ

松公
そうじゃないよだって
俺、松公って呼ばれたんだから

だからそれだよ
蛇がおめえの面知ってるわけねえし
松公だろって言えるわけねえだろ
誰かにかわかわれたんだよ
お前が臆病だからってんださ

松公
んなことないよ
俺長虫苦手なんだ
俺長いものみんなきれぇなんだよ
お前知ってるだろ
蕎麦だって食わねえし
うどんだって食わねえんだから
だからごらん(パンパン!)

ふんどしもしめねえ

いや見せなくていいよ見せなくて
 そうか
そういうことあるかもしれねえな
うん。あ、そうだよ!
うん、まあ
こんだけ大勢いるんだからさ
子供心に帰って
あんな虫がきれぇ
こんな虫が怖いのって話しねえか
おう
金ちゃん!お前さん何が嫌い

金ちゃん

俺カエル


カエル
カエルはやだねえ
もうゲロゲロゲロゲロゲロゲロ言ってんの
夏に走ってると畑のふちで
大合唱してんだよ
お前なんだ

俺なめくじ

蛇にカエルになめくじってか
妖怪大戦争じゃねぇかよ
お前なんだ

俺?
俺は蜘蛛

蜘蛛!
蜘蛛やだねえ

蜘蛛はもう
やだやだって
もうなんか
もうなんか
天井からつ~っと降りてきて
足がこんなになって
なんか8本
もうあんなの見たら
もうわーって
どっか行きたくなっちゃうよ
もう
これが本当の
公文行くもん?

くだろねえな言うことが

お前どうだ

俺ムカデ

ムカデ
ムカデはやだよ

ムカデはだって100の足って
お前蜘蛛より92本も多いんだよ
それでも
俺がムカデになったらと思うと
なあ
なお怖いねえ

なんでぇ?お前がムカデになったら?

考えてみろよ
どっかに出かけようかなと思ったって
わらじ履くのにどのくらい
時間かかるかわからなねぇ

つまらない心配をしてんねぇお前は
お前はなんだ

俺イモムシ

イモムシ
イモムシやだねえ

あれはあべこべに
手も足も何にもないんだよ
もうなんか
腰をなんか
ピコピコ
ピコピコ
ピコピコ
ピコピコ
動かしながら浮くんだよ
俺腰の動かし方
うまいやつはやけちゃうね

下ネタかよ
お前はなんだ

俺アリ

アリ
アリはやだねえ

ちっぽけだって怖いんだよ
あいつはね
一匹であるかねえ
隊列を組んで
こっちの方から
ツッツッツッツッツッツッ
こっちの方から
ツッツッツッツッツッツッツッ
でもう口がないんだよ
でなんか変なもんが伸びてやって
それでもって
ピッピッ
ピッピッ
なんかしゃべってんだ
アリ語でもって
で俺じっと見てるとさ
ひょっとしたら
俺の悪口言われてんじゃねえかと思って

こいつもつまらない心配してんの
お前はなんだ

馬?
馬は虫じゃねえじゃねえかよ

虫でなくったって怖いんだよ
お前馬は
遠くの方でパッカパッカパッカパッカ
走ってんのはいいよ
路地かなんかで
いきなりバッタリ出くわして
ヒヒーん!!
いななかれてみろよ
あんな怖いもんねえや
もっと怖いのはね
俺はサブロクを持ってんだよ
ゴール前なお怖いねえ
サブロクサブロクサブロクサブロク
サブロクサブロクサブロク
サブロクサブロク
わーちくしょう
3-5になっちゃった~

それ馬じゃなくて
馬券がこえぇんだよお前は
面白いねえ
いろんな怖いものがあって…
誰?それ後ろに踊ってる
え?タバコ飲んでんの
ああ、こっち向け
あ、てっつぁんか
てっつぁん!

てっつぁん
なんでぇ(イケボで)

おっかない顔してんねえ
いや今みんなでおもってさ
あんな虫がきれぇ
こんな虫が怖えって話してんだけど
お前さん何もねえかい

てっつぁん
ツッ 何を言ってやがるんでぇ
俺に怖いもんなんぞ何にもねえよ

あそう
んならいいよな
そんなにとんがらがること
ねぇじゃねぇかよ
かぼちゃに手裏剣が刺さったような
顔しやがって
いやみんなが子供心にかえって
言ってるだけなんだから

何を言って
お前たちいい年をした連中が
えあんな虫がきれい
こんな虫が怖え
情けないとおもわねぇのか
人間ってのはな
万物の霊長ってんだ
一番えれぇのが人間なんだよ
え何が怖えって言ったお前は
蛇が怖え
俺は蛇見るとな
ゾクゾクするんだよ

やっぱり怖えんじゃないか

食いてえのよ

え食うのか

あったりめぇよ
なまじ間違いなウナギ食うよりも
蛇食ったほうがよっぽどうめえんだよ
俺は徹夜でもって仕事するときにはな
ハチマキの代わりに
蛇を頭にぐるぐるっと巻くんだよ
ハチマキが自然に締めてくれて
冷たくて気持ちがいいや
何が怖えって言ったお前
蜘蛛が怖え
俺はな
朝おまんま食うとき
納豆の中に蜘蛛5、6匹
ターンって言って
叩き込んで
カーって言ってかき混ぜるんだよ
もう納豆がより糸を引いて
うめえのうまくねえの
何だお前は
芋虫がきれぇ
冗談言っちゃいけねえ
こちとらな
芋虫2、3匹捕まえるってぇと
口の中にポーンと放り込んで
奥歯で持ってカチッとやると
青い汁がトロトロトロ
うえぇえ

気持ちが悪いこといってんなぁこいつは

何が怖い
お前アリが怖い
こちとら
こわ飯
赤飯食うときには
アリを何十匹もバーってかけるんだよ
鼻の内はゴマ塩が動き回って
食いにくいけどもな
お前何が怖いって言った
馬が怖い
お前馬が怖くて
道産子やってられっかってんだ
え?
もう馬なんてな
俺ら蹴飛ばしにいくってんで
でぇこぉぶつだ

俺ら四つ足だったら何でも食うんだよ
だけどな
こないだこういうことを話してたら
四つ足だったら何でも食えるんだったら
こいつを食ってくれよってんで
こたつを持ってきたやつがいるけどな

なるほど
あいつは固くて食えねえや
お前もさすがに謝ったろ

謝るもんかい
だから俺は言ってやったんだよ
俺が四つ足だったら何でも食うよ
何でも食うけれども
こういうあたるものは食わない

こいつ
落とし話してやがらぁ

何を言ってやがんでぇ
俺に怖いものなんて何にもねえんだ

あそう
分かった
本当にないの?
え?
何が?
なんだよ
ないよ
なんだその目
ないよ
ないよ
ないでちゅよ

ないでちゅよって
本当にお前ない?

ない
ありません
思い出してしまった

ある
怖いものある
あるんじゃねぇかよ
みんな話したんだからお前も言えよ
何が怖い?

いやダメだよ
俺口にするのも嫌だから
みんなの前でつよがっちゃったんだよ
思い出したくないから
あああった
俺怖いもんある怖いもんある

なんだよ
言ってみろよ
何が怖いんだ
饅頭
え?
饅頭

ボンジュール?

ボンジュールじゃないよ
まんじゅうだよ

え?
まんじゅうって何?
まんじゅうってあれ?
あの
食うまんじゅう?
とうまんじゅうとか
こし高まんじゅう

こし高まんじゅう!!!
高くなればなるほど怖い

え?
お前何?
え?
まんじゅうが怖いの?
聞いた?
みんな
こいつまんじゅう怖いんだって

まんじゅうまんじゅう
まんじゅう言うなよ
もうだめだ
ああ
力が抜けてきた
すまねえけど
床延べてもらいて

そう?
じゃあ奥の山上布団敷いてやんな
医者呼ぶほどじゃねぇだろ?
うん、ピタッと締めといてやんな


集まれ集まれ
哲公のやつ好きなやついる?いないだろ?
俺昔っからきれぇなんだよ
おいどうだみんなで持ってよ
まんじゅうを持ち寄って
あいつを枕元にドーンと置いて
うわ、まんじゅう怖いっていうの見て喜ばないか?

その遊びはよくないよ
だってまんじゅうって聞いただけない
あんなにガタガタ震えてんだよ
物見たら大変だよ
死んじゃうかもしれないんだから
まんじゅうで殺してみろ
これが本当の暗殺?

何くだらねえこと言ってんだよ
いいんだよ
あんなやつ国家のためになるようなやつじゃねぇんだから
いいから持ってきてくれ、頼んだよ
おー来てくれる、来てくれる
じゃあそのお盆の上にどんどんのせていって
そっちは?
くずまんじゅう、そばまんじゅう、とうまんじゅう
こしだかまんじゅう
そっちはなんだよ
温泉まんじゅう、葬式まんじゅう、いつのだよそれ
10円まんじゅう、谷中からかってきたんだな
そっちは?
大福、同じようなもんだからいいか
萩の月、全然違げぇだろ
まあいいか
おいおい、なんでそのくずまんじゅうを食おうとすんだよ

いや食おうとしたんじゃない
これね、野郎のほっぺたにビターンとぶつけて
うわーまんじゅうが食いついたー
かなんか言うの見て楽しもうかなと思って

いいねそれ、それだったらいいんだよ
そーっと襖開けて
おめぇら静かにすんだよ
今枕元に置いて襖閉めるからな

てっつぁーん、具合はどうだよー

あーなんだか寒気が収まらねえ
気のせいか、まのあたりにまんじゅうがあるような気がする

やっぱりけはいを感じるんだね
怖いから間のあたりにあるんだって
おいてっつぁーん、間のあたりを見てごらんよー

なんだよこっちが
こっちがもうあれなのに、間のあたり見ろって
あーまんじゅうー怖いよー
俺が怖いの知っててこんなに持ってきやがったー
なんだこの一番上のわ
うわー中は潰しあんで怖いよー
こういう怖いのは目の前にあるといけねえから
口の中に入れやがれ
んーんーんー
怖いわ、怖いわー

くずまんじゅう、放れくずまんじゅうこの野郎

あーいたーいー、くずまんじゅう怖いわー(もぐもぐ)

どうだい、まんじゅう野郎に食いついてるか?
変なのか?
あ、違う、野郎がまんじゅうに食いついてるよ

へー、もうこれ目の前にあるといけないから
このたもとにしまって、あとはみんなが食えねえように
ぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺ

この野郎、まんじゅう怖い怖いって食っちまうやつあるか
本当はお前何が怖いんだよ

あー今度は渋いお茶がいっぱい怖い

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