緊急事態0日目

大学生のとき、仏文科設置の授業で1968年5月革命を扱った授業があった。そのなかで当時流行ったスローガンやアネクドート、壁の落書きなどについて講師が分析するという少し変わった回が何回があり、それをよく覚えている。当時のジャーナリストたちはこうしたものをよくも色々と収集して残してあったものだと感心した。おそらくいまも「コロナ・ジョーク」のようなものが日々たくさん作られている。そのなかには秀逸なものもあれば、差別的なものもあるだろう。だれか熱意あるひとが収集しておくことに期待している。

緊急事態宣言が出る日ということだが、昼前に起きて少し本を読んでからランニングに行った。本はユンガーの『パリ日記』。ユンガーは自分と同程度の知能の持ち主以外としゃべるとしゃべりすぎて失敗するらしい。カール・シュミットと散歩しながら時局について抽象的な話をし、人類学博物館で物思いにふけるらしい。押井守のキャラか。ランニングは10km。

夕食をしてからウィリアムズ「道徳的な運」のオンライン読書会。興が乗ったので時間を延長して議論した。ウィリアムズというのは明晰とは程遠いのだがとにかく暗い性格で、ドロドロしている。この論文も基本的には行為者後悔というものが主役であり運の問題はその前提である。

首相や都知事の会見を見たがたいして頭に入ってこなかったのでフジテレビオンデマンドに登録して古畑任三郎を見る。堺正章の回と藤十郎の回を見た。一見人当たりがいいが、腹の底が読めないという個性は両者に共通しているが、堺正章の演じる歌舞伎役者はおぼっちゃんがそのまま中年になった人物であるのに対して、藤十郎の演じる骨董商はより複雑なパーソナリティを備えている。拝金主義の悪徳骨董商と美の求道者という二面性がたまらなく面白い。これがシリーズ通してのベストだろう。

今日は酒は飲まなかった。

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