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最近のわたし

前回の更新から約三か月たった。4月30日は緊急事態まっただなかだが、どこか余裕がある感じで大変よろしい。

ではそれから三か月どうしていたかというと、これは本当に忙しくて肉体疲労的にかなり危ない橋を渡っていた。まず、授業の準備がものすごく忙しい。今学期は慶應で講義を1コマ、早稲田で講義を1コマ、演習を3コマやっていたが、去年までの対面授業ではありえないくらい大量の質問が出るので、それに答えるのに半日、授業準備自体に半日かかる。冗談ではなく、質問に答えるのに8時間くらいかかるのである。

どうしてこうなるかというと、まずあちらはかなり配布した資料を読み込み、自分なりに調べて質問してくる。初歩的な質問もあるが、なかには凝ったものもある。どういった質問であれ、次の授業資料では取り上げて説明をしなければならないが、その質問をした人のモチベーションをこちらが敷衍した上で他の学生にも伝わるよう文脈をつけてあげる必要がある。これがなかなか難しく、改めて新しい論文やSEPを確認することもままあった。これは例年のことだが、カントの道徳哲学は普通のひとには完全に正気のものとは思えないだろうし、実際半ば正気ではないのだが、どうしてもあのようにしたい理由が彼にはあるので、そこを説明するのがなかなか難しい。今回は非常に丁寧に調べて質問をしてきた学生がいたので、こちらもそれに応じていたらかなり大変だった。

早稲田の方も色気を出して学生のコメントにフィードバックをしているとかなり時間を取られる。生命倫理は倫理学者だけのものではなく、法学や社会学、宗教学、公共政策が関わっていて新しい資料やニュースを集めるのに苦労した。最低でも年に一回は情報を更新しないといけない分野で、倫理学者はこういうのが苦手である。生命倫理学ニュース置き場みたいのが多分地球上にいくつかあると思うのだが、知らないので誰か教えてほしい。

演習はslackを使うことでかなり楽になったが、こちらはやはり対面の方がやりやすい気がする。いくつか自分の好きな論文を読んでコメントしたり要約したりしてもらっているが、どうしても学生ごとの発言量に偏りが……。対面だとノウハウがあるのだけど。

これにプラスしてある学会の事務局幹事を引き受けてしまって、こちらもかなりの作業ボリュームがある。印刷や郵送という苦手な作業がある分、授業より苦痛が大きい。でも自分しかやる人がいないのは本当っぽいので引き受けます。英雄だから。

ほかにも通信教育でレポートの添削をやっている。これはまあまあ楽しい。

重ねて、実は5月から大阪大学の研究所で特任助教として楽しく働いているのだった。基本的に企業向けのコンサルタントとレクチャーをやっていて、これはかなり自分にあっている。一生これをやっていても良いかなと思うが、まあ授業も研究も好きだから……。

こういう困難な時期でもTwitterに知り合いがいるというのは心強い。特に同世代の同業者は自分と似た境遇のひとが多いので、深夜にTwitterで「うげー」「死ぬー」とか気軽に聞いてもらえて、良い。

つくづく思うが、私はだらだら飲み会をしながら愚痴や悪態をつくのが好きで、そういうのが人生で一番美しい瞬間だと思っている。死後に快楽はない。

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