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Eddieちゃんが逝ってしまった

Eddie Van Halenが逝ってしまった。

Eddieちゃんは初めて夢中になったミュージシャンで、私の最初のギターヒーローで、永遠のギターアイドルだ。だいすきなギタリストはたくさんいるけれど、1人しか選べないならEddieちゃん一択。カラフルでキラキラしてて騒がしくて落ち着きがなくてカラッとしてて楽しくて。ぶっ飛んだ速弾きも、ゆったりしたメロディアスなフレーズも、ハーモニクスもノイズも、何もかもが唯一無二で、絶対にEddieちゃんだってわかる。ソロだってカッティングだって、いつだってEddieちゃんのギターは「わめいてる」。

それに、あんなにニコニコ楽しそにギター弾くヒト、他に見たことない。笑ってる顔しか覚えてない。

12歳、打ち抜かれる

Eddieちゃんに恋に落ちたのは12歳のときだ。

中学に上がって演劇部に入り、最初の舞台でやったダンスに「Jump」が使われてた。応援団でやったダンスでも「Jump」を使った。MTVが大流行りで、日本でも「ベストヒットUSA」が人気で、CMに米英のヒットチャート上位の曲がよく使われるようになりはじめた頃。「Jump」も初めはそんな中ですごく気に入ってる曲の1つに過ぎなかった。「えらくかっけー曲やなー。キーボードがかっけー。しかし、えらくおっさん声やなー」くらいの認識で、どんなヒトたちが演ってるか知らなかったけれど、あのキーボードのリフとソロはすぐに練習した。家のピアノはもちろん、学校の音楽室のエレクトーンや楽器屋さんの店頭に置いてあったDX7で弾きまくった。

1985年、年が明けて両親とデパートに行ったとき、お年玉で「1984」を買った。買う前にレコードの裏ジャケ見たら髪の長いおっさんが4人並んでて、一瞬ひるんで棚に戻したけれど(笑)。レコードプレーヤーはリビングにあったから、自室のラジカセで聞けるようにカセットテープを買った。

自室にこもって早速聞いた。大音量で聞きたかったから、イヤホンをラジカセにぶっ挿して。M1「1984」はキーボードのインスト曲。M2は「Jump」。あんなにボリューム上げるなんて、なんて不用意な(笑)。Van Halenのこと、ほんとに何も知らなかった。あの4人の長髪のおっさんたちが何者か、どんなバンドなのか、1ミリも。鼻歌交じりでノリノリで頭ぶんぶん振って、「Jump」のアウトロがご機嫌にフェイドアウトしてって、そしたらM3のイントロでバーン!ってぶっ飛ばされた。

10メートルは飛んだよ。風を感じたもん。

ものごころついたときにはオルガンを弾いてて、幼稚園に上がってからはヤマハに通って、ピアノを中心としたクラシックをずっとやってた。歌番組もよく見てた。「ザ・ベストテン」「ザ・トップテン」にランクインしてる歌は、歌謡曲だろうが演歌だろうがポップスだろうが、全部歌えてた。

でもあの日、「Panama」に打ち抜かれた12歳のあの日に、私の中心はロックに変わった。不可逆に、永遠に。

高校に入ってバンド始めたときも、楽器は迷わずギター一択。Van Halenをやろうとかいう大それたことを思ってたわけじゃないけれど、ごく自然に導かれた。入学祝いで買ってもらったのはFernandes、フロイドローズ系で、PUはシングルコイル×1+ハムバッカー×1の黒いヤツ。

「Daveじゃない!」

Van Halenは初めて夢中になったバンドで、初めて儚さを思い知らされたバンドでもあった。1985年の1月にはまったのに、7月にはDavid Lee Rothが脱退した。ウェブなんてない時代だから、書店で「Player」だか「Young Guitar」だかを立ち読みしてDaveの離脱を知り、ぼう然と立ち尽くした。

「バンド」という形態には、あらかじめ終わりが内包されている。解散したり、誰かが脱退したりする日がいつか必ず来るし、いつ来るか誰にもわからない。青くて儚くて切なくて、だからこそ愛おしい。だから愛するバンドのライブが決まったら万難を排して行くしかない。だって、その一瞬を逃したら、自分が好きになったときのバンドの姿を一度もその目で見ることができないかもしれないんだよ。

実際、オリジナルラインアップのVan Halenには間に合わなかった。最初の来日は1978年6月、2度目の来日は1979年9月。幼すぎた。好きになってから初めての、通算3度目の来日は1989年1・2月。Daveはいなくなってた。ボーカルはSammy Hagerに代わってた。

Sammy時代にもいい曲はある。3度目の来日までにリリースされてた「5150」「OU812」は愛聴してたと言っていい。「5150」を初めて聞くときは、ボーカルが代わってどうなっちゃってるんだと不安だったけれど、聞いてみたら、うん、確かにボーカルは違うけど、「1984」までとはまた違った地平が開けてたし、EddieちゃんがいればOKって思えた。だから、来日が決まったときには素直に喜んだ。

会場は東京ドーム。2月1日だったか2日だったかは覚えてない(けど最終日を選んでそうな気がする)。東京ドームでのライブは初めてで、行ってみたらアリーナの2列目だった。でも2列目でも、ステージ遠いんだよね。

ライブのことはほとんど覚えてない。

1つだけ。最後の曲が「Jump」だった。Sammyは原曲より半音上げて歌った。あの「Jump」のPVで、ギターとキーボードのソロの後のサビで、EddieちゃんとDaveとMichaelが3人並んで、ぴょんぴょんジャンプしながら前進してくるシーン、あれをEddieちゃんとMichaelと、Sammyがやった。

「Daveじゃない!」

泣き崩れた。知らずこらえてたらしきものが噴き出した。一緒に行った友人は困惑したことだろう。ごめんよ、きーちゃん。

そこからは少し心が離れた時期があった。「For Unlawful Carnal Knowledge」にはいくつか好きな曲がある。でも「Balance」「Van Halen III」は……。ボーカルがSammyからGary Cheroneに代わったと思ったらまたSammyが戻ったり、MichaelがクビになってWolfieが加入したり。Eddieちゃんはがんや腰痛、アルコール依存症などで体調が不安定で落ち着かなかった。こっちはこっちでMadchesterやBritpopに夢中になってた。それでもVan Halenを忘れたことはなかった。iPodからVan Halenを欠かすことは、ただの1度だってなかった。

Dance the Night Away

突然だった。2007年にDaveが復帰した。北米ツアーがあって、またしばらく音沙汰がなくて、2012年に「A Different Kind of Truth」が出て、ツアーが始まった。今度は日本にも来てくれた。

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Michaelはいなかったけど、EddieちゃんとDaveが一緒にいる姿をやっと見られた。そんな日が来るなんて思いもしなかった。しあわせな夜だった。ありがとう。

Eddie, you are my first guitar hero, my guitar idol forever. You've changed me completely. Thanks for everything. I miss you already. I love you. R.I.P.


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