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ぼく4℃

「ところで、僕のこと愛してる?」

「あはは、何言うてんのやこの自意識ダダ漏れ野郎。」

文字にするのは平気でも、口にするのは恥ずかしいセリフをよく言えたもんだ、でもそんなとこ好きやでと。そしてだから?といった感じで。

「愛しとるで。」

と、片方の眉を上げて微笑む彼女。

「うれしい。ぼくも愛してる、とっても。」

と答えたところで、実は僕には秘密があるんだと告白したら、鼻の頭がジッ!と焦げそうな眼でにらまれた。

「よそに女おったら、殺す。」

理解しやすい殺気を放つ彼女。

「ち、ち違います。実は僕、雪男なんです。」

「なんじゃそれ、見事に凍りついてまう話やなあ。」

「いやいや、本当なんです。」

ひいお婆ちゃんは、氷が作れたらしいのです。
しかし残念ながら僕は、コップの水を冷やすくらいしか出来ませんけど、ほんとうなんですよ。
手品とかで営業出来るのじゃないかと、人前で実演した事もあります。
でも地味すぎて、まったく受けませんでした。

「おもろいやん!気に入った。」

迫り来る彼女。
エアコンにはなれませんよと言うと、中途半端な奴っちゃ!と怒られた。

「まあええわ。なんでも最初はちょびっとからや、子供に期待しよ。」

と、やにわに押し倒された。
僕の両肩に手を置くと、ヒヒヒと笑う彼女に、鼻先を舐められた。
前頭葉に、キンッ!と冷気が走った。

「何もだえてんねん、はは。かわいいやっちゃ、うちが解凍したる。」

「きゃー、いや~ん。」


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