見出し画像

夜道の衝撃

すんごいタイトミニのスカートのお姉さんが、俺の前を歩いてる、後ろを気にしながら。
これは絶対、チカンと間違われてる。
誤解を避けようにも、ここは一本道で、回り道なんて無い。
脇道は行き止まりの私道か、山越えの道路だけ。

困った。
サッカーの中継始まっちゃうよ。

街灯の寂しい駅前通りだけど、悲鳴が上がればきっと誰か出てくる。
ぞろぞろ出て来て、お祭り騒ぎになるかも知れない。
さらに困った事に、このお姉さんはどうも俺に歩調を合わせてるみたい。
追い越そうとすると急ぎ足になるし、見送ろうとゆっくり歩くと、前屈みでお尻を付き出し摺り足になる。

不気味だ。
もしかして罠?
おとり警官で、触ったとたんに逮捕とか?こんな田舎で?。

雲ひとつ無い夜空の月が照らすお姉さんは、背中に乗るストレートロングヘアーに網タイツ。
そして、何故かスニーカー。
推し量りがたい姿で怖い。

雪国らしい太い柱のがっしりした軒の下で、リュックを背負った青年が立ち止まって携帯電話を取り出す。
その前方では、背中を向けた女性が身体をくねらせ、あれこれポーズをとっている。
今にも踊りだしそうなお姉さんの背中を見ながら、携帯電話を耳に当てた青年が、深いため息をついた。

「もしもし、お母さん俺、迎えに来て。
いや、変な女の人が前を歩いてて、チカンの容疑をかけられそうな危機的状況なのよ、お願いします。」

盆地を照らす月明かりに、周囲の山々の稜線がくっきりと見える。
俺はここに、癒されに来たのに。

小走りでやってきたお母さんが、変なお姉さんと立ち話。
え?なんでどうして、知り合いなの?。

「おじいちゃんよ。
あんた帰って来るの久し振りだから。
ストレス解消の散歩らしいのよ。
あれ、ウォーキングウェアね。
誰に迷惑かける訳じゃないし、いいんじゃない?。」

あはははじゃないよ、迷惑かかってますから!。
おいおい、手なんか振っちゃって爺ちゃん余裕かよ!。
もういや!帰る。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?