ミュージックスクエアに没頭していた頃

「マイ フェイバリット ミュージシャン イズ ”スーパーカー”!!!」


当時若干16歳、高校1年生の私はクラスメイトの前で鼻息フンフンしながら、前のめりでこう発していた。


英語の授業の一環で「自分の好きなものを英語でスピーチする」という課題が出た。
私が当時好きなもの、それは今は解散したバンド「スーパーカー」の1stアルバム「スリーアウトチェンジ」。たまに行っていたCDショップでやたら目に付く真っ青のポスターが気になり購入。家に帰っていざ聴いてみると、1曲目「cream soda」のイントロから私の心はギューンと鷲掴みにされた。それから全19曲、約80分を心躍らせながらいっきに聴いた。


メンバー皆青森県出身で、まだ都会に染まっていなビジュアル。特にベースのミキちゃんが好きだった。ミキちゃんの声、顔、小柄な体に大きなベースを持つ姿。ミキちゃんが出てたミノルタのCMなんて見れた日にゃ飛び上がるほど嬉しかった程。


しかし、この頃お世辞にもメジャーなミュージシャンではなかったスーパーカー。クラスメイトのキョトン顔は想定内だったが、私はどうしても好きだったので迷うことなくスピーチした。どうしても「cream soda」のイントロだけでも聴いて欲しくて、学校からラジカセを借りて、実際に聴いてもらうことにした。


そしていざ発表、ラジカセをスイッチオン。ほーれみろ、みんなキョトン顔。それでも私は「どうだ!いいだろ?」という顔でみんなを見ていた。そしたら…1人の男子が興味津々にこっちを見ているではないか!!!「よっしゃ!!」私は心でガッツポーズ。


授業が終わって、その男子から「スーパーカーいいよね!」と話しかけられた。嬉しかった。知ってる人がいた。
それから話は盛り上がり。彼は「the pillows」の大ファンであり、後日CDを借りた。
そして当時NHK-FMで月曜~金曜の21時から放送されていた「ミュージックスクエア」というラジオ番組を教えてもらった。
「これ、ながしまさん好きそうだから聴いてみてよ」これが私とミュージックスクエアの出会いである。


初めて聴いたのは、オープニング曲がHarvestの「Good Day」だったとき。「チャン!チャン!チャン、チャン、チャン!」ではじまるあの曲。(こんなんで誰がわかるよ)2か月ごとにかわるオープニング曲、エンディング曲も楽しみの一つ。


ミュージックスクエアの魅力をあげたらキリがないが、私の記憶が残っている限りあげてみようではないか。

・何といっても貴ちゃんの癒しの声
私なんぞが「貴ちゃん」なんて呼ぶのは大変おこがましいけど呼ばせてもらおう。貴ちゃんこと中村貴子さんの声はなんてったって癒し。金曜日はパーソナリティが変わるのだけど、なんだか納得いかない訳です。毎週金曜日には貴ちゃんの声が聴きたくなるという貴ちゃんロスに。

・1曲フルで曲がかかる
MDが主流だった当時。番組がスタートする21時前に空いているMDをセッティングし、気になる曲がかかるとMDに1曲まるまる録音。MDは優れもので、曲の前後の気になる部分はカットできる。なので、私のお気に入りがつまったオリジナルMDが完成するという訳です。

・ゲストと貴ちゃんの話が楽しい
会話の節々で、貴ちゃんとゲストの「絆」のようなものが見え隠れするんですよね。なぜか。「こう言う事を知りたい」っていうのを聞いてくれる貴ちゃん。さすがです。特に大の仲良しのthe pillowsとの会話は聴いていてとても楽しかった。

・メジャーじゃないいい曲がかかる
これは非常に大きな魅力。当時の流行と言えば、TK関係、浜崎あゆみ、モーニング娘。など。だけど、当時の私は流行を非常に毛嫌いしていた。スーパーカーに出会い、ミュージックスクエアを聴き始めて、「この世にはメジャーじゃないけど素敵な曲がたくさんあるんだ!」と確信した。その素敵な曲を教えてくれるのがミュージックスクエア。まさに神。


ミュージックスクエアの中でも一番の出会いは今やとってもメジャーになったBUMP OF CHIKEN。
初めてミュージックスクエアで紹介されたのがまだインディーズ時代だった「とっておきの唄」。確か「ピロウズのさわおさんが推している」というので曲紹介があり、「これは録音しなければ!」とたまたま録音した曲。何度聞いても鳥肌が立つくらいいい曲で、でも曲紹介の「バンプオブチキン」がなかなか聞き取れず、「バンクオブチキン」と勘違いしていた。


次の日からCDショップに通いつめ、「バンクオブチキン」の「B」コーナーを探し続けた。しかし、その頃はまだこの田舎にはCDはなく。それでも通いつめ、通いつめ…ついにTOWER RECORDで発見!!!!!!家に帰って何度も何度も聴いた。全ていい曲。涙が出る。テープにも録音して、通学中ウォークマンで聴きまくった。CDもテープも擦り減ってなくなるんじゃないかってくらい聴いた。


こんな感じでミュージックスクエアにどっぷりハマっていた当時。ラジオだけにとどまらず、暇さえあればTOWER RECORDに行って試聴コーナーを独占したり、インストアライブがあれば部活でもなんでも抜け出して見に行ったり、「ロッキンオンジャパン」を聖書の様に読んでいたり。とにかく音楽を聴くのが好きだったなあ。


今となっては子育てに追われて、口ずさむ曲といえばEテレ関係のものばかし。たまに、ふと当時の曲を聴くとあの頃に戻る。いつまでたっても、いい曲はいい曲。そして、ふと貴ちゃんの声を聴きたくなる。


あ、ちなみに、ミュージックスクエアの存在を教えてくれた男子とは数か月お付き合いしました。


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