知識や戦略で勝負するコンサルタントが、なぜ熱量にこだわるのか。
「今やっている仕事を成功させたい」
仕事に対して真剣な人ならそう思ったことが一度はあるだろう。そう思う人はみんなそれぞれ、自分が得た知識や経験によっていろいろな“成功法則”を持っているんじゃないだろうか。
私にも、オウンドメディアマーケティングのエージェンシーとして、クライアントを成功させるための秘訣がある。でもそれは、複雑なスキルとかシステムの導入とか、そういうことじゃない。
だから今日はその秘訣を1人でも多くの人に知ってもらい、「プロジェクトがうまくいかない」「うまくいくかどうか不安」という人の何かの助けになりたくてnoteを書こうと思った。
結論からいうと、その秘訣は熱量と行動量だ。
こう書くと当たり前のことだと思う人も多いのかもしれない。でも普段仕事をする中で、このあまりにも当たり前のことが欠けているプロジェクトが多いと感じる。
プロジェクトの当事者であるクライアントと、私のようなエージェンシーがどちらも熱量を持つこと。熱量がベースにあれば、成果を出すこともそう難しくない。
といっても、「やる気を出そう!」とか「成果が出るまで徹夜で働こう」とか、根性の話ではない。もちろん最後は気持ちの問題なのだけど、熱量を高めて行動量を増やすためには、一定のプロセスがある。
マーケティングの中にもいろいろな分野があるし、気合いだけじゃなく戦略を緻密に組むことも当然大事だ。けど、主にオウンドメディアという領域で戦略を考える仕事をしていて思うのは、どんなに良い戦略をつくっても、熱量や行動量がなければ成功しないということだ。
この話は、私のようにクライアントを支援するエージェンシーもそうだし、クライアント自身もそうだ。お互いに相手の「熱量」をものさしにして、パートナーを選ぶ必要があると思っている。
メディアや事業を育てるのは誰か?
私の仕事はクライアントがいて初めて存在する。だけど仕事をする以上は、「お客さまと下請け」という関係性じゃいけないと思う。
なので社内でも「クライアントのオウンドメディアや事業を一緒に育てる、当事者意識を持った関係性であれ」という意味で「パートナー」や「仲間」という言葉を使っている。
これは社内の意識付けでもあるけど、実は一緒に仕事をするクライアントに対するメッセージでもある。
メディアや事業のオーナーは誰か。プロに依頼したからあとはお任せ、ではなく、それらを「自分が育てる」という意識をクライアントが持っているかどうか。
たとえばコンテンツマーケティングへの知識や経験があるかないかは実は関係ない。分からないことはいつでもエージェンシーに聞けばいいからだ。それが外部からパートナーを呼ぶ意味でもある。
私はクライアントの前を走ったり、時には後ろから押したり、「自分の足で走ろう」と決めている人がいればそれに合わせて最適な伴走ができる。だけど、そもそも走っている人がいないと伴走はできない。
だから私は仕事をもらう側ではあるけど、クライアントの姿勢が非常に重要だと思っている。
これが前提にないと、戦略もPDCAも机上の空論になってしまうからだ。
熱量を高めるゴール設計方法と、それを他人事にしないために
熱量を高めるには、チームとしての「ゴール」を持つことが欠かせない。私が新しいプロジェクトに関わるときは、これをすごく大切にしている。
目指すものがなければ人はどこに進んでいいか分からなくなるし、ゴールなきプロジェクトは存在意義がないのと同じ。だからどのプロジェクトでも、これを確認したり、なければ定義したりすることから始めている。
具体的には現状の課題を聞いて、課されている数値的な目標をクリアするために、より細かくフェーズを区切る。その上で、事業をつくるための士気を上げて、チームを強くできるようなゴールを設計する。
そのときのポイントは、事業の全体像からプロジェクトを見つめること。プロジェクト自体はオウンドメディアに関する取り組みだけだとしても、事業全体を俯瞰できているかどうかで、プロジェクトの意義が大きく変わる。
たとえば、オウンドメディアをやっているとよく聞く「検索流入を増やしたい」「コンバージョンを増やしたい」といった話。私もこの相談をよくされる。そんなとき、必ず聞き返していることがある。
「事業成長を見据えたときに、なぜその指標が大事なんですか?」
なぜ月間100万PVが目標なのか、なぜリードを100件獲得したいのか。それは、オウンドメディア運用の先にあるマーケティングや営業のプロセスの中で、PVやリードが利益につながるからだ。でもそれを理解しないで、単に数字だけを追いかけている施策には意味がないと思っている。
だからこそ、目標数値(KGIやKPI)の先にあるゴールを「みんなの共通認識」にしないといけない。何のために100万PVやリード100件獲得を目指すのか、理由があるとチームの士気は大きく変わる。
分かりやすい例を出すと、過去には「〇〇市場で日本一になる」「この領域で〇〇といえば✕✕社という評価を得る」といったゴールを設計したことがある。
少し大げさに聞こえるかもしれないが、ここで掲げるものは高ければ高いほどいいと思う。なぜかというと、ゴールがチームと個人の成長幅を決めるからだ。
以前、クライアントの中に受け身のスタンスで仕事をしているメンバーがいて、本人から「与えられた仕事に意味を見いだせない」と相談された。
「ゴールにたどり着いたら、キャリアアップなど、チームだけでなく個人にもどんな未来が待っているか」
「業界で日本一になったときに振り返れば、今やっている仕事は業界一のオウンドメディアやコンテンツをつくるプロセスになっている」
私はそんなことを伝えた。彼は与えられた目標を達成する意味を理解した瞬間から、自発的に仕事に取り組ようになり、最終的にプロジェクトにおけるキーマンになった。
もし設定したゴールがそれなりだったら、彼にかけた言葉も強く響くものにはならなかったかもしれない。
ゴールがあれば目標は常に変化し続ける
あるとき、複数のメディアを運営する企業からインバウンドを増やしたいという相談があった。リード獲得数を月間1500件にすることが目標だった。
この案件では最終的に、リード獲得数が月間4000件以上に到達した。だが、目標をクリアしたチームは同時に進むべき方向も見失い、チームの意識も当初のような一体感がなくなったように感じられた。
もちろん既に成果が出ている中では、それ以上自分たちにシビアになることが難しい。でも私は、そういう時こそ「MOLTSを上手に使ってほしい」と思う。
私もそうだけれど、人は評価されている状況だと現状に満足してしまう。成果が出て喜ぶこと自体は大切だ。だけど、もし目標数値をクリアした先に、より大きな未来を描いている場合は、過去の成功は次なるステップの壁にもなる。
オウンドメディアはあくまで事業課題を解決するための手段。だから、事業が発展するための通過点でしかないこともよくある。事業を俯瞰したゴールがなくて、与えられた数値目標しかないプロジェクトはこういう場面で弱い。
私たちはクライアントのパートナーだけど、第三者でもある。だからクライアントが変化すべきタイミングに気づくこともできる。もしゴールを見失っているのであれば、私はクライアントにも厳しく接する。
この私のスタンスが、人からは失礼で常識外れだと思われることもある。実際、あるクライアントには笑いながら「鬼」と言われたこともあった(笑)。
時に遠慮なく言うべきことを言うのは、私が誰よりもゴールを大切にしているからだ。もし最初に決めた目標を達成しても、ゴールがまだ先にあるならば次の目標を自分たちでつくって、あくなき挑戦をし続けなければならないと私は思う。
成果を生むために、チームを「成功体質」にした2つの事例
成果を売るからこそ、立ち入りづらい仕事も時には必要になる。
これはゴールに到達するためだけど、実はクライアントの担当者にとって思わぬ変化のきっかけになることもある。
あるB to B企業の案件で、コンバージョン改善のためにバナー制作が必要になった。それを私たちが「2日後に出します」と伝えたところ、驚かれた。聞くと、それまでは同じ作業に2週間かけていたらしい。
バナー制作に限らず、記事の原稿やウェブデザインなど、あらゆる作業でこうしたスピード感の基準を示し続けたところ、ある日クライアントから「この稟議を最速で通すためにはどうしたらいい?」と質問されるまでに意識改革が起こった。
別の企業では、記事を書いたこともなく、リソースも少ないオウンドメディアでいかに成果を出すかが課題だった。オウンドメディアで主要な戦い方であるSEOでは、コンテンツの構成が重要な要素の一つ。でも、クライアントの担当者はその作り方も知らない状態でスタートした。
外注もできないので、クライアントが自分で作るしかなかったが、とはいえアウトプットの基準を曲げることはできないという状況で、「答えを教えるのではなく考え方を教える」アプローチをした。
提出された構成にはあえて赤字を入れず、どこをどう修正すればいいか対話を重ねた。私も会社として割いて良い工数とのせめぎあいの中だったけど、できる限りフォローアップしてモチベーションが維持できるようにした。
もちろん答えを提示するほうが早い。でも時間がかかることを覚悟して伴走した結果、ある時から「こういうことですか」と考え方が伝わるようになり、その後はコンテンツのクオリティ、コミュニケーションのスピードが増して成果につながった。
良いコンテンツをつくるには、文章の巧拙も大事だけど、考え方が重要だと思う。また、考え方を実行に移すには機会やモチベーションも欠かせない。「厳しい」と言われることもあるけれど、伴奏するプロセスが成果を出しやすくするための「体質改善」のような効果をもたらしているのかもしれない。
ゴールとプロセスに熱量があるからこそ、成果が出る
私の所属するMOLTSは「成果を売る」ことを掲げているけど、もちろんそれこそが最も価値のあることだとは思っているものの、本当に価値があるのは成果を出すまでのプロセスを一緒に体験できることである、とも考える。
だからこそ、時に長くてつらいことも多いプロセスは、誰と走るかが大事なのだと思う。
それはクライアントにとってもそうだし、そこに添い遂げるエージェンシーもそうだ。私からすると、工数と報酬が見合っているかどうかより、お互いの熱量が見合っているかが大事だ。
上場か非上場か、大企業かスタートアップかなどを問わず、高い目標を掲げてオウンドメディアを運用している企業は多い。
けれど、それはどれだけ本気なのか。その目標には意味があるのか。
これからも同じ温度感を持った、本気のクライアントとぜひ一緒に良いプロジェクトを生み出していきたい。
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オウンドメディアにおける戦略の立案・設計、施策実行まで。私たちにできることや事例は、こちらにまとめています。もしご興味があればぜひご覧ください。
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