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私が伝えているのは答えではなく、答えの見つけ方。

私はメディア運用のコンサルタントとして戦略設計に重きを置いてきたが、何よりも実行することが大切だと思っている。なぜかというと、戦略は実行されてはじめて意味をなすからだ。

一般的にコンサルタントというと「戦略を考える人」というイメージを持つ人も多いだろう。そのせいもあってか、周囲を見渡すとその実行をクライアントに委ねてしまっているケースが少なくない。

ただ、プロジェクトに加わる以上はクライアントと同じゴールを背負った仲間であり、一緒にゴールを背負うことこそが本当の意味で“対等である”ことだと思う。

だからこそ、戦略を考えることに加えて、それを実行できるように支援するのが本当のコンサルタントだと思う。

そこで今日は、私が普段どのようにコンサルティングをしているか紹介してみたい。

今回取り上げる例として、私が最近相談を受けることが多い、B to Bのリード獲得を目的にしたオウンドメディアの運用にスポットを当てていく。このノウハウは、B to B企業でなくても応用できることは多いはずだ。

外部に運用を頼ったことがない企業や、これまで運用を依頼していた企業の手法と比較するなど、それぞれの状況に役立つ内容になっていたらうれしい。

絶対の法則ではないし、即効性のある必殺技じゃない。あくまでそうした前提がある上で、私がクライアントを支援する時に意識しているのが3つの段階だ。

第一段階:最初はとにかく手を動かす

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ゴール:行動量を徹底する
KPI:コンテンツ制作本数等
期間(目安):プロジェクト開始から1〜3か月程度

企業がオウンドメディアを始める場合、その担当になるのは編集者やライターといった、メディアに関わる仕事をしたことない人がほとんどだ。多くの場合はマーケティング担当者が広告やソーシャルメディアの仕事と兼務しながらなど、100%の時間をかけられない。ちなみに、私も記事は書くけど編集者やライターじゃない。

そういったチームが、どうしたらオウンドメディアで成功できるのか。

そのために私はいつも最初の段階で、運用者の基礎固めをゴールにしている。

一般的に、リード獲得といったコンバージョンから逆算して、追うべき指標の設計やSEOのためのキーワード設計などから始めるだろう。でも私の場合、最初は戦略に関する話をしないことが多い

その代わり、初期フェーズではあえて、コンテンツ数といった行動の量を重要指標に設定している。

なぜかというと、オウンドメディア運営の成功は「行動量」と「継続性」にかかっていると言っても過言ではないからだ。だから最初はあえて記事の公開数など、行動量を意識して、まずは数をこなすことの大切さを感じてもらうようにしている。最初にこれができないと、そもそも運用は難しい。

よく例えとして「メディアは筋トレと同じ」という話を出すが、いきなりベンチプレス100キロを上げられるわけではない。まずは戦略よりもコンテンツをコツコツとつくり続けることがメディアの基盤をつくることにつながなる。

余談だが、立ち上げて間もないメディアで一生懸命データ分析をしている企業を見かけるが、今すぐやめた方がいい。

実際に、Google Analyticsでアクセス解析をするにも、計測するページが2、3記事じゃ意味がないので、ある程度成果が出てからじゃないと分析するメリットがない。

何より、そんな暇があるならコンテンツ作りに時間を費やした方がよっぽど成果につながる確率が高い。
スピードとクオリティのバランスをどう取るか

行動量の話でいうと、クライアントからこんなことをよく言われる。

「記事を書いているうちに頭が混乱してきたので、次の定例ミーティングで相談しようと思ってました」
「別の案件で忙しくてできませんでした」

どうしたら良いか悩むことで手を止めてしまうのは、非常にもったいない。

悩んでいるならその瞬間にメッセージや電話をして聞いてほしいし、できないなら捕まえて聞けばいい。この段階で考えすぎて手が止まるのは時間の無駄だ。

あるいは、部署をまたいだチェック作業が繰り返し行われるなど、ディティールにこだわりすぎてスピードが遅くなるのも本当は良くない。

会社として出すものなので、内容にこだわることは大事なのだが、マーケティング施策としてはそれが逆効果になることもある。成果を出すためにクオリティを高めているはずが、クオリティを意識しすぎるせいで成果が出るまでに時間がかかってしまうのは本末転倒だ。

クオリティはたしかに大切だ。ただ、記事を書いたことがない状態で最初から完璧なものをつくりあげるのも難しい。webのメリットである「いつでも更新できる」ことを理解していれば、自分がレベルアップしてから書き直す方法のほうが良い場合もあるだろう。

第二段階:仮説立て → 検証を繰り返して、行動のクオリティを高める

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目的:小さな成功体験を積む、自前でPDCAができるようになる
KPI:コンバージョン、コンバージョンに紐づく各指標
期間(目安):プロジェクト開始から4〜12か月

第一段階で定着した行動量というベースがあれば、フレームワークなどを使った仮説立て→検証のフローを繰り返すことでクオリティが上がっていく。場合によっては、この時点ですでに何件かリード獲得ができているかもしれない。

ただここから先、目標により近づいていくためには、成果を出せる確率が高い方法を取り入れていかなければならない。そこで、いよいよ戦略や戦術を考える必要が出てくるのが第二段階だ。

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少し話はそれるが、ご存知の通りマーケティングの中には、いろいろなフレームワークや手法などがある。

ただし、それらを知っているのと使えるのとでは大きな差がある。
活用方法や場面による向き不向きを理解していないと、役に立たない知識になってしまう。戦略と同じく、フレームワークも状況に応じた活用ができてこそ本来の役割を果たす。

そのとき重要になるのが「体験」だ。

マーケティングのノウハウはコンサルタントがつくった資料を見て覚えられるものではなく、自ら体験して初めて血肉にできる。

その前提に立つと、最初から多くのことを伝えるよりも、体験しながら徐々にマーケティングやオウンドメディアの戦略についての理解を深めていくのも一つの方法だと気づいてもらえるだろう。

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例えばメディアの戦略で必ず出てくる「カスタマージャーニーマップ」も、私はこの段階で改めて話をする。

具体的には、「なぜコンバージョンが発生したのか」をチームで分析し、それをもとに「どうすればもっとコンバージョンが増えるか」を考える。ここで、第一段階でやってきたコンテンツ制作の経験が役に立つ。

コンテンツとカスタマージャーニーは一見別物だ。しかし、「ユーザーは最初にどのような疑問を持っているのか」「最初の疑問を解決したら次に気になることは何か」など、1つのコンテンツの中の構成や、複数のコンテンツ群(=メディア)を通してユーザーに届けようとしている情報は、カスタマージャーニーに応用できるのだ。

クライアントを見ていると、このプロセスを通してカスタマージャーニーやキーワード設計がなぜ必要か腑に落ちるケースが多い。

オウンドメディアの指標は事業成長と一貫性があるか

次に指標設計の話をする。

よくあるケースとして「月間リード獲得数100件」というようなことを掲げるケースは非常に多い。しかし、なぜ100件なのだろうか?

この疑問を持つことが戦略を考える上で非常に大切なのだが、そうした視点を持つ人は少ない。

「事業としていくらの商品をいくつ売るのが目標なのか」
「受注率や、そこから逆算した商談数はどのくらい必要か」
「そのうち、オウンドメディアからの問い合わせはどのくらい必要か」

「リード獲得月100件」といっても、こうしたことを理解した上で目標を立てているかいないかでは雲泥の差がある。

何度も書いているが、オウンドメディアは想像以上に地道だ。だから「なんで1人だけこんなに記事ばかり書いているんだろう…」という心理におちいることも少なくない。だが、上のように事業とオウンドメディアの成長が結びていることを理解していれば、つらい局面でもやる意味を考え出したりはしなくなるはずだ。

目標のコンバージョン数を上のように分解できたら、「コンバージョンに至るまでのユーザーの道筋」についても同じように分解できる。

コンバージョンを最終指標として考えると、たとえば以下のような考え方ができる。

コンバージョンを分解して考える

①CV(資料請求/メールマガジン登録の完了)
*総数ではなく率(CVR)を見ることもある

②CTA*(Call To Action、行動喚起する導線)のクリック率
*資料請求ページ/メールマガジン登録へのボタンなど

③サイトへの流入数(検索流入数など)


このようにすると、オウンドメディアで指標にしがちなPVがどれだけコンバージョンから離れているか分かる。もちろんPVは分かりやすい数字なので運用者のモチベーションとしては大事かもしれないが、ビジネスという意味ではPVの重要度が意外に低いことはあまり認識されていない。

この段階にきたら、問い合わせを獲得するために「絶対に抑えないといけない検索キーワード」などが出てくる。だからこそ、章の冒頭で書いたように行動量を維持しながらクオリティを高める(=結果にこだわること)が必要になってくる。

このときの施策は、基本的にはクライアントが案を出し、私がフィードバックする形で進める。そのやり取りで仮説立ての習慣を少しずつ身に着けてもらうのが狙いだ。

このプロセスを繰り返して何ヶ月か経つと、ある程度自前での運用ができるようになってくる。

第三段階:勝ちパターンの拡張

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ゴール:オウンドメディアが事業に貢献する
KPI:コンバージョン、コンバージョンに紐づく各指標
期間(目安):プロジェクト開始から4〜12か月

第二段階で施策とその検証を繰り返すことによって、どの施策がコンバージョン率が高いか分かってくる。第三段階では、この“勝ちパターン”を拡張させる。

ここでよくあるのが、運用がうまくいき始めた途端、いきなり色々なことに手を付けるパターンだ。

本来は一点突破で行くべきところを、手を広げすぎることで方向性を見失い、失速することが本当によくある。勝ち筋が見えたなら、まずはそこを妥協せずに徹底して攻めることが大事だ。

ただ正直に言うと、第三段階ではクライアントによって戦い方がかなりばらつくので、ここからはその前提で読み進めてほしい。

まず、勝ちパターンの見つけ方の例としては、すでにコンバージョンが発生しているページをGoogle Analyticsのコンバージョンやイベントの発生数などを見ながら特定する方法がある。

こうした分析をもとにして決めた検索キーワードで、1位をとるまで徹底してコンテンツをブラッシュアップする。2、3位でもコンバージョンがある程度発生するのだが、そこで手を止めるのは非常にもったいない。

繰り返しになるがケースバイケースではあるものの、たとえば並行して、コンバージョンが取れているページと類似したキーワードでも上位を狙うのが「勝ちパターンの拡張」だ。

・商材名を言い換えてみる
・商材のニーズを深堀りする(例:商材の機能を分解したキーワード)
・商材が複数ある場合であれば、同じ掛け合わせの言葉を使う

コンバージョンを増やすためにまったく新しいことをするのではなく、データを元に成功する確率が高いことをやるのがポイントになる。もし新しいことを試すのなら、ここまでをやり切ってからの方が良い。

また実際の現場では、次に何をしたらいいかお手上げ状態になることもあると思う。

そういう時、私もアイデアをもちろん出すのだが、第二段階と同じく、クライアントに考えてもらうことを大切にしている。なぜなら、絶対にうまくいく正解は存在しないし、正解は自分たちで模索していくものだからだ。

自分たちで試行錯誤するプロセス自体も、第二段階で書いた体験の話とつながる。

ここでも難しく考えすぎず、アイデアでもいいので「戦略を自分で考えて行動してみる」ことが重要だ。それが自分たちなりの勝ちパターンを見つけるカギになる。

また、そのアイデアは、必ずしもオンライン施策でなくてもいい。たとえばペルソナに合致している人が多い場所や紙媒体に広告を出すなども一つだ。ここまでくるとオウンドメディアの施策ではなく、広くマーケティング施策を考えることとイコールかもしれない。

最後に:いきなり難しく考えないこと。地道な一歩がビジネスの成長につながる

オウンドメディア運用には地道な努力も必要だし、業界によっては競合も多い。だからこそ戦略が重要なのだが、最初からいろいろなことを考えすぎるのが実は落とし穴だったりもする。

ここで紹介した手法は、冒頭に書いたとおり絶対の法則ではない。けれど、紹介した3つの段階に応じて行動ができるようになれば、オウンドメディアでも成功する可能性が高まるだけでなく、実はそれ以外の手段を使うでも応用がきくようになる。

もし紹介したプロセスを実践する中で、行き詰まることがあれば、ぜひ今一緒にやっているコンサルタント、あるいは私など、外部のプロの知恵を借りてほしい。

現場でオウンドメディアを運用するあなたの最大の資源は、時間だ。それを有効活用して、少しでも早く成果につながることを願ってやまない。

また、この記事では全体の流れを紹介してきたが、より戦略の考え方について詳しく知りたい人は「b to bのオウンドメディア|最速で最高の結果を出すために知っておきたい4つのこと」の記事も読んでみてほしい。

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オウンドメディアにおける戦略の立案・設計、施策実行まで。事例や実績をこちらにまとめています。もしご興味があればぜひご覧ください。

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