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今流行りの中国製トイガンの同等の技術は日本で完成していたという話


中国式トイガンの技術の源流はマツシロ製のワルサーP5

ここ数年、トイガンファンダムで話題の中華式スライドアクション排莢式トイガン。「トリガーブローバック」「フィンガーアクション」「中華排莢式」などなどファンによって呼び名が違う。

レーザー光線発射機能、スポンジ弾の発射機能とかよりも、注目はトリガーを引くだけでスライドが後退してカートリッジを装填排莢されるというギミック。
こうした中国製の遊戯銃(トイガン)がAmazonを中心に販売されていて、トイガンファンの間で人気なのだ。

多くは自動拳銃のモデルなんだけど、引き金を引くだけでスライドが後退したり、薬莢を排出して飛ばしたりできる。
ガスとか火薬の力を必要としない手の指の力だけが動力源になるというもの。

これは別にモデルガンの古参ファンなら珍しいことではない。元々アメリカのおもちゃの銃では普通にあったアクションで、MGCのモデルガン設計者、小林太三氏がこれを発展させて「タニオアクション」を作った。
金属製モデルガン時代ではよくあったオートマチックピストルの一つのスタイルだった。

でも……
中式スライドアクションが注目されるのはハンマーがコックされることだ。
タニオアクションやスライドアクションではハンマーが固定されていなくてプラプラの状態だった。つまりハンマーはコックできない。

ここで中式スライドアクションの特徴を挙げてみよう。

1、スライドの後退ストロークが短く、トリガーがトリガー軸から外れない。
つまりトリガーが後退してスライドを押し下げる仕組みではない。

2、チャンバーがなく、カートリッジはマガジンの上部に押し上げられるだけで、その位置から弾かれて排出される。つまりカートはチャンバーに送り込まれない。

3、ハンマーがコックできて、トリガーと連動しているが、スライドの後退機能や排莢機能と関連していない(つまり撃発装置ではない)

この三つがかなり独自のシステムとして、注目されて魅力を倍増させているわけだ。

ところが、このメカニズムはすでに日本のトイガン史上見られた。

1はMGCのワルサーP38やモーゼルHscで実現されている。

2と3は、1980年代に登場して話題にならずに消えた、マツシロのワルサーP5に採用されていたメカニズムで「ダブルアクション・ブローバックシステム」と呼ばれていたもの。
いろいろ見ていると、中式スライドアクションはマツシロのP5のダブルアクション・ブローバックと酷似しているのがわかる。

スライド後退前進の機構だけが中式のオリジナルで、あとはマツシロ方式だと思う。

ブラックモデル(ABS樹脂製)
シルバーカスタム(ABS樹脂製)


このようにハンマーをコックできるのは中華式も同じ

全くの想像だけれども、中式トイガンの開発にはマツシロのP5がなんらか研究参考になったのではないか?

マツシロのP5にはチャンバーがない。
チャンバーの入り口に当たる場所にキャップ火薬を撃発する前撃針がついている。
マガジンから上へ押し出されたカートリッジがスライドの中で保持されていて、スライドが開放された瞬間にエキストラクターにあたる排莢パーツによって排莢口から押し出される。
チャンバーに入らない分、排莢アクションとスライドのストロークが素早く短く感じる。
この一連の動作は中式スライドアクションと全く同じだ。

ハンマーコック→①トリガーが引きはじめてすぐにハンマーダウン→②そのままトリガーを引くとスライド後退排莢、そして前進装填、火薬撃発

マツシロのダブルアクション・ブローバックのメカは①と②がトリガーを引くことで同時にできるということで、ダブルアクションなわけだ。
中式スライドアクションは全くこのメカニズムに依っている。特にモーゼルミリタリーやM9A1などの龑虎の製品はほぼ間違いなく、マツシロのダブルアクション・ブローバックと同じメカだ。

つまりは中式スライドアクションはマツシロのP5の再来であることは間違いがない。

ともかく、新世代のトイガンファンにとって、ブローバックはガスかキャップ火薬しか思い当たらないから、「タニオアクション」や「スライドアクション」は目新しいのだと思う。

マツシロのダブルアクション。ブローバックは1980年代初頭ではスライドアクションのモデルガンとしては革命的なメカニズムで最後の発展系だったと思う。
しかし樹脂製モデルガン時代、手軽に火薬でブローバックさせられるモデルが続々と出ていた時代にスライドアクションにもうだれも興味はもたなくなっていた。

その証しにマツシロのP5がスライドアクションのモデルガンとしては最後のモデルであり、ダブルアクション・ブローバックもこのモデルだけで終わり、タカトクのトイガン部門を支えたマツシロの最初で最後のモデルガンとなった。

マスダヤのトイガン部門を支えた日新産業(後のファルコントーイ)もスライドアクションのおもちゃ銃にこだわったメーカーだが、モデルガン進出に失敗している。玩具メーカーのモデルガン進出はこの二社の失敗で、その後は続いてはいない。

ところが中式トイガン(特に龑虎ブランド)は少なからずもマツシロと日新産業の技術を導入しているのは間違いがないと思う。

注目されなかった日本の玩具メーカーのモデルガン技術が中式トイガンのなかにそっと息づいている。

ちょっと面白い話ではないかと思う。

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