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私の担当薬剤師さん。


わたしはいま、病院から1時間半ほどかかる
家からも遠く離れた薬局で
お薬をもらっている。

場所を言うとみんなに驚かれるのだけど
わたしにはどうしてもこの薬局じゃなきゃダメな理由があって
この薬局にしたことで何度も救われ、支えてもらってきた。わたしにとってとても大切な場所。

かかりつけ薬剤師指導料を払っていないので
“かかりつけ薬剤師さん”と呼ぶのに少し抵抗があって
わたしはよく“担当薬剤師さん”と呼んでいる
そんな薬剤師さんが居る。(以下、Aさんと呼ぶ)
今ではもう必ず私のお薬を投薬してくれる
わたしの、専属の薬剤師さん。

いまでは、とてもとても大切な存在だけど
最初からそうだったわけでもない。

はじめてお会いしたのは
お薬手帳の記録によると2020年1月10日。
その時の記憶は一切なくて
でも
いつからかわたしは
その薬局に行くと必ずAさんにお願いするようになっていて
他の薬剤師さんには話せなかった
形成外科に通ってる理由を
抗生剤をもらいに行った時に言えたのも
Aさんだった。

だけど
精神科の処方箋を持っていくようになっても
わたしは最初から自分から詳しい病状を話せたわけでも
心の内を明かせたわけでもなく
ずっとAさんには
「なんでわたしなんだろう?」
と思われていたらしい。

そして
主治医とも大喧嘩をするくらい心が不安定だった昨年夏。
Aさんとも些細なことやいろんなことで何度も揉めて
「薬局変えようか?」と悩んだくらい
うまくいかない時期があった。
たぶん、お互いがお互いの言葉に傷つき
お互いの心を深読みし、すれ違っていたのだと思う。
いま振り返っても
あの時期はとても苦しかった。
でもそのしんどい時期をなんとか乗り越えて
Aさんにも、変わったねって言われるくらい心が柔らかくなれて、揉めることもなくなった。
そして、秋頃からようやく
心の奥底にあるものを、Aさんに見せられるようになった。

いつもAさんは
ひと通りお薬の確認と会計をすると
「調子はどう?」と聞いてくれる。
それでいつもわたしはその数日の間にあったことや、抱えている気持ちを話す。
死にたいも、苦しいも、不安も、全部Aさんの前でなら言葉にできる。
一緒に過ごしてきた時間が長いから、わたしの性格も、苦しんできたことも、がんばってきたことも、もしかしたら家族以上に知ってくれているかもしれなくて
だからそんなAさんの前では、ありのまま、隠し事はなく在りたいと思っている。
だから、元気なフリはしないし
不安も苦しさもしんどさも、全部伝える。
受け止めてもらえる、という安心があるから。

頑なに変えなかったXデーをやめようかなと迷っている、とはじめて言葉にして伝えられたのもAさんだった。
人生最大にやらかして、営業時間過ぎて電話した時も、動揺を表に出さずに冷静に対応してくれて
1時間半近く話を聞いてくれた。
どんな時もわたしの味方で居てくれる、支えてくれる、失いたくない大切な存在。

気づいたらとても大切になっていて
気づいたら助けてほしい時まず顔が浮かぶ存在になっていて
顔を見るだけで泣きそうなくらい安心するし
背中や頭を撫でてくれるその手は張り詰めてた心をほぐしてくれるくらいあったかくて優しいし
遠慮がちにしてくれたハグもおっきなパワーをもらえたし
はじめて呼んでくれた“かずみちゃん”は、にやけてしまうくらい嬉しかった。

たくさんたくさん支えてもらってて
その上さらに
休みの日にも思い出してくれていて「祈ってるよ」といつも言ってくれる。
これ以上ないほど幸せで
わたしは恵まれた存在だなあ、と思っていた。

GW直前の、1日に行った時には
「明日までは居るから、何かあったら電話して」
って心配して言ってくれて
翌日、営業終了10分前くらいにかけたら
「かかってこなかったら、こっちからかけようと思ってた」とまで言ってくれた。
朝から何度か、かけようかと思ってくれていたと聞いて、何度も思い出してくれていたことが本当に嬉しくてありがたくて、泣きそうになった。

そしてGW明けの8日。
しんどい土日を何とか生き延びて
Aさんに会えるのを支えにがんばったから
薬局着いてAさんの顔を見た瞬間
ほっとして涙が出そうになった。
そのくらい安心した。
もう大丈夫って、なぜか思った。

「死ぬことを手放すって言ったのに
生きてちゃいけない人間
死ななければならない
って思ってしまうのが苦しい。
嘘をついたみたいでしんどい。」

「エンシュア処方されてから
体重はかったら、増えてた時減らしたくなるの分かってて
それじゃ飲む意味なくなるから
はかるのやめてるんだけど、不安。怖い。」

「死ぬ日を決めてた時は
失いたくないものがなかったから
苦しくなかったけど
大切なものの存在に気づいてしまって
失いたくない、別れたくないと思うから
死ななければならない
って感情がわいてくるのは苦しい」

たくさんたくさん話した。
とりとめもなく
Aさんが、ただ頷いて聞いていてくれるそのリズムが心地よくて
溢れてくる感情のままに話した。
全部吐き出して、ちょっと余裕のできた心の中、
Aさんが
優しさで埋めてくれる。
そうだよね、苦しいよね、という共感。
エンシュア一本くらいで急に増えたりしないから大丈夫。今だって十分細すぎるくらいだよ。という優しさ。
Aさんの言葉ひとつひとつがじんわりと心に沁みていく。
だから帰る時は
いつだってわたしは「大丈夫」って思える。
たくさん背中を撫でてもらって、頭を撫でてもらって
優しさいっぱいもらって
心が元気になる。

そして、もう十分すぎるほどいろんなものをもらっているのに
さらにふたつのものをもらってしまった。

ひとつは、ラベンダーなどが入ったアロマ。

リラックスできますように、というAさんチョイス。
小瓶も可愛らしくて
そして大好きなラベンダーの香り。
全てがわたし好みで
完璧すぎて、わたしのことをわたし以上に分かってるのでは?!と思ってしまった笑

実はもともとは
GW前に、「お守りね、月曜日まで貸し出すね」
と言って別の香りを貸してくださっていて

それがわたしの1週間を支えてくれていたわけなんだけど、
今度はプレゼントだ、と言ってくださって
これ以上頂いてしまっていいのか、と
わたしはそんなにしてもらっていい人間なのか、と
一瞬躊躇ってしまった。

そして、
「無期限で貸し出すね」
と言って渡してくれたのが
この、小さな観音さま。

どうしてAさんがこれを持っているのか
という話から書くと長くなってしまうので割愛するけれど、
話を聞いて
それがAさんにとってどれだけ大切なもので
これまでAさんのことを助けて、支えてきてくれたものかということが分かったから
わたしが借りてしまっていいのか、分からなかったし
いまも、持っていていいのか迷っている。
でも
そばに居なくても支えたい、と思ってくれていること
本当にいつも祈ってくれていることが
この観音さまを通して伝わってきて
本当に泣いてしまいそうになるくらい
感動した。

もうこれは、薬剤師という業務からは完全に外れていて
Aさんの優しさでしかなくて
薬剤師でここまでしてくれる人は
全国探しても他にいないかもしれなくて
そのくらいのことをしてもらってるんだなあと思う。
感謝してもしきれないし
いったいわたしは何で返していけばいいんだろう?
と思う。
元気になったら、ちゃんと返していきたい。

「わたしの望みは、月木、月木、月木って来てくれることだけなんだよ」
ってあるとき言われた。
それ以上のことは何も望んでないよ、って。

わたしにとっては
Aさんと会える月木が
とても大切で楽しみで、心の支えだ。
だから
この先もずっと、月木、月木、月木って会えたらいいなあと思う。だから、生きていたい。
そして
月木に来て顔見せてくれたらそれでいい
って、それしか求めないAさんだからこそ
わたしは、どんな自分も安心して見せられるんだなあ
と改めておもった。

大切な人との出会いって
どこであるか分からないものだな
と思っている。
ちょっと信頼できそうな薬剤師さん、だったAさんが
気づけばかけがえのない存在になっていた。
だから
この出会いと繋がりを大切にしたいし
自分からこの繋がりを断つようなこと(=死ぬこと)はしたくないなあと、強く思う。

次は、木曜日。
「こんにちは。調子はどう?」
って笑顔で聞いてくれるAさんに会いに行く。





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