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死ぬ日を決めて準備をした。そしてそれを辞めようと思った話。


Xデー。

そう聞いて、何を思い浮かべるだろうか?

わたしのつくったXデーは
「人生を終わらせる日」だった。

誰に何と言われても
わたしの意志は変わらなくて
薬も主治医に
「もう十分でしょ…」
と言われてもなお、足りないと集め続けた。

Xデーを決めてから生きやすくなった。
心が軽くなって
リストカットも過食嘔吐もしなくなった。
救急搬送も1月初めを最後に、されていない。

死ぬことだけが救いで
死ねることだけが救いだと思っていた。

主治医がいくつリスクを並べても
訪看さんに「死んだら泣く」と言われても
大切な人たちにどんな言葉を並べられても
わたしの決意は変わらず
ただただその日が早く来てほしいと思っていた。

人生の終わりを決めたから
ゴールに向かってならがんばれた。

未練も恐怖も何もなかった。
ただその日まで、好きなことをして
会いたい人に会って
心残りをひとつでも減らせれば
それでいいと思っていた。

でも
わたしは死ぬのをやめることにした。

きっかけは、ほんの小さなこと。
訪看さんに
日記のうしろにメッセージを書いてほしい
とお願いした時のこと。
「お別れみたいで嫌だなあ」
って訪看さんがボソッと呟いた。

そう言いながら書いてくれたメッセージは

いつも笑顔をありがとーー。
カービィのような笑顔をありがとーー。
ほほえむ笑顔をありがとーー。
ありがとーー×1000。
幸せ吸い込んでNeーー。

そして
可愛いカービィのイラスト。

どんな思いで書いてくれたんだろう
とても重たかった。

それと同時に
「お別れ」したくなくなってしまった。
もちろん、私たちにお別れは必ずやってくる。
訪問看護師と利用者という関係である以上
終わりは必ずある。
でも
いま、自らの手で終わりにするのは
嫌だと思ってしまった。

はじめて、死ぬのが怖いと思った。

怖いと思ってしまったら
もう死ねないと思った。

2019年にもわたしは死のうと思っていた。
でもそれを延期した。

そしてまた、わたしは
死ぬのを“延期”しようと思う。

集めた558錠のメイラックス
そして
80錠のナロンエース。

9本のカッターと大量の替え刃

捨てることはできないし
一生死なないと決めたわけでもないから
訪看さんに預けることにした。
Xデーを、何でもないただの日にするために。

死ねばよかった、と
後悔する日が来るかもしれない。

でも、それでも
わたしは
訪看さんと生きる未来を選び取りたい。
この先にどんなことが待っているか分からないし
苦しい未来かもしれない。
だけど
訪看さんとなら、乗り越えていける気がするから。
「死んだら泣くよ」と言ってくれた訪看さんと
まだ、生きていきたいと思う。
それがいまは、死にたい、よりも大きいから。
いつか「生きることを選んでよかった」と
思える未来が来ると信じていたい。

死ぬ、と伝えて泣かせてしまったあの人。
困らせてしまった主治医。
必死になってくれた訪看さん。
生きていてほしい、と言ってくれたたくさんの人。
心配かけてしまった人たち。
ごめんなさい。
わたしは生きることにした。
死ぬ死ぬ詐欺、と言われてもいい。
逃げたと思われてもいい。実際、怖くなったのだし。
それでも生きることを選びたい。

わたしの中にまだXデーは残ってるから
怖いから
その衝動に負けないように
危ないものは全て預けた。
生きていたいから。

そして
死ななくてよかった、と思える未来を
これを読んでくださってるあなたと
つくっていけたら嬉しい。



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