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[都議会第1回定例会]厚生委員会を傍聴しました。


書くのが遅くなってしまったのですが
3月18日の
厚生委員会を傍聴しました。

「東京都子供への虐待の防止等に関する条例」について、
都民ファースト、自民党、公明党、共産党の質疑を聞いたのですが
その中で
共産党の藤田りょうこ都議の質疑について
ここでは書きたいと思います。

*・*・*

①子どもが権利の主体

藤田都議は、
前文に、子どもが権利の主体であることが明記されたことは非常に重要である、とした上で
そのことは
本則にも規定があるとさらに明確になるのではないか?と質問。

それに対する答弁は
本条例案は子どもが権利の主体であることが前提になっている
というものでした。

そうであるならば、なおさら
本則にもそれを規定しても良いのではないでしょうか?

藤田都議も、
本則にも規定することで、読んだ側にも明確にその位置づけが伝わり、
また、条例を議論した児童福祉審議会の専門部会でも重視する意見が出されていて、強調してもしすぎることはない
とおっしゃっていました。


②子どもの意見表明権

次に、藤田都議は
子どもへの虐待を防止する上で、
子どもの意見表明権についてどのように考えているのか、質問。

答弁は、
虐待の防止にあたっては、子どもの年齢及び発達の程度に応じた意見を尊重することや、子どもの最善の利益を最優先することを基本理念としていて、
「児童の権利に関する条例」を踏まえたものである
というものでした。

昨年の、骨子案についての質疑で
藤田都議は
骨子案では「子どもの成長、年齢に応じた意見を尊重」となっているが、
それでは“年齢に応じて割り引いても良い”となる可能性もあると指摘し、
子どもの「意見表明権」を明記することが重要ではないかと述べました。

改めて、
“年齢に応じて割り引いても良い”
と、ならないように求めたいです。


③社会的背景

虐待予防に取り組むには、
貧困や社会的孤立などの社会的背景を考えることがとても重要です。

前文では、
虐待の背景として、核家族化と地域社会での人間関係の希薄化を例示し、
家族や地域社会における養育力の低下に触れています。
藤田都議は、その理由を聞きました。

虐待が生じる背景のひとつとして
核家族の割合が高いことや
人間関係の希薄化等により
家族や地域から、子育てに十分な支援が得がたい状況があること
そのため、保護者が子育てにあたり孤立しないよう、子どもと家庭への支援が求められていること
が理由として、答弁されました。

東京の18歳未満の親族のいる普通世帯のうち
核家族は1970年時点ですでに約8割。
2015年調査の一般世帯で計算すると9割強になるそうです。
藤田都議は、
分類の変化があったとしても、増えているとした上で
それでも、このくらいの増加が、虐待の背景の筆頭にあげられるべきか疑問に思うと発言されました。
また、子育て家族が孤立しないように支援することは大切ですが、そのためには、貧困などの社会的背景の方に着目してこそ、有効な手立てが取れるとして、そうした観点での対応を求めました。


④「子供」の表記について

骨子案の質疑でも指摘していましたが、
藤田都議は改めて
「子供」の表記について質問。
昨年12月に行われたパブリックコメントでも
「子供」の「供」を漢字ではなくひらがなにしたほうが良いのではないかという意見が寄せられていることを指摘し、どう受け止めているか問いました。

それに対しては
様々な考えがあることは承知している
平成21年度に常用漢字表で定められた漢字を徹底することとし、現在の表記となった
という答弁でした。

この条例がどういうものであるのかを考えれば、ひらがな表記が妥当です。
子どもは大人の付属物ではなく、権利の主体であること。この考えに立てば、供え物のような印象を与える「供」ではなく、ひらがな表記がふさわしいはずです。


⑤教育の位置付けについて

条例第8条3項には
「都は、若年者に対し、予期しない妊娠に至らないための啓発活動及び妊娠、出産等に関する相談先等の情報提供を行うものとする。」
と書かれています。
もちろん、啓発や相談支援も大切ですが
藤田都議は、
教育の役割は非常に重要であると述べ
第8条3項には、教育も位置付けるべきではないかと質問。

都は、様々な啓発活動を行なっていて
「妊娠相談ほっとライン」で看護師等が助言等を行なっている
という、全然前向きではない答弁でした。

藤田都議はそれに対して
性教育は妊娠や出産についての科学的な知識を得ることができ、とても重要であると同時に、
自分たちの体について知り、命について知り、自己肯定感を持って自分を大切にしようと思えることが、予期せぬ妊娠の予防にもつながると述べ
そのことからも、若年者に限らない教育を位置付けることは重要であると述べました。


⑥修正案について

日本共産党都議団は20日、厚生委員会に
修正案を提出しました。

その内容と理由は、以下の通りです。

【修正案の内容と理由】
①子どもが権利の主体であることが原案の前文に明記されたことは重要ですが、子どもの権利をより明確にするため、本則にも子どもが権利の主体であることを明記します。
②前文で、虐待の背景として、核家族化や地域社会の人間関係の希薄化が例示され、家庭や地域社会における養育力が低下することが虐待につながると書かれています。しかし、昔から核家族が子育て家族の主流であり、核家族化が虐待の代表的な要因であるとは考えにくいこと、家族の形ではなく社会的背景に着目してこそ有効な施策を行うことができることから、経済的困窮と社会的な孤立を例示する文章に改めます。
③禁止される「子供の品位を傷つける罰」ひついて、原案では「保護者が、しつけに際し、子供に対して行う、肉体的苦痛又は精神的苦痛(当該子供が苦痛を感じていない場合も含む。)であって、子供の利益に反するもの」と定義されていますが、この定義だと、前段部分に当てはまる行為で、子どもの利益に反しないものがあるという誤解を生む可能性があると考えます。そのため、「であって、子供の利益に反するもの」という部分を削除します。
④原案では、虐待の防止に当たり、子どもの意見を尊重することが定められていますが、子どもの意見表明権が書かれていないため、明記した条文に改めます。
⑤原案は体罰等によらない子育ての推進のための施策を行うとしていますが、「体罰等」が指すものをより明確化するため、「体罰その他の子どもの品位を傷つける罰」とします。
⑥原案では、保護者が子どもの教育に係る第一義的な責任を負っていると書かれています。保護者の責任を強調することは、行政の責任の位置づけを弱めることや、子育てに悩む保護者が孤立することにつながるおそれがあることから、保護者の第一義的責任についての記述を削除します。
⑦原案では、子どもに対し、自身が守られるべき存在であることを認識するための啓発活動等を行うことが定められていますが、子どもは守られるだけの受け身の存在ではなく、権利の主体であることを明確化することが重要であるため、「守られるべき存在である」を「守られる権利を有する」と改めます。
⑧原案では、若年者に対し、予期しない妊娠に至らないための啓発活動を行うものとするとしていますが、より早い年齢からの性教育が重要であることなどから、対象を「若年者等」とするとともに、啓発活動だけでなく教育も位置付けます。
⑨条例の実効性を高めるため、財政上の措置についての規定を加えます。
⑩原案では全体を通じて「子供」という表記が使われていますが、この書き方だと子どもが大人のお供であるような印象を与えるため、「子ども」という表記に改めます。

新旧対照表はこちら


⑦採決の結果について

3月28日に都議会第1回定例会の最終本会議が開かれ、討論と採決が行われました。

「東京都子供への虐待の防止等に関する条例」は、原案の通り可決されました。


⑧最後に

委員会での質疑
藤田都議は最後に、
いかなるときでも、子どもを真ん中に、子どもの最善の利益を尊重した対策を進めなければならない」と述べました。
この条例がかたちだけにならないよう、
「子供」の表記は本当にこれで良いのか
意見表明権や権利の主体であることが明記されていなくて良いのか
教育の位置づけ
などを、この条例に関わる全ての人に、
改めて考えてほしいと思います。
条例は原案の通り可決されましたが
引き続き、どういうふうに運用されていくのか、見ていきたいと思います。

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#都議会 #厚生委員会 #藤田りょうこ #共産党 #児童虐待防止条例



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