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[都議会第3回定例会]総務委員会を傍聴しました①


9月11日、
第2回定例会で計画案が提出され
同時にパブコメも行われていた
東京都再犯防止推進計画」についての、原のり子都議の質問をどうしても聞きたくて
仕事が終わってから急いで傍聴に行きました。


◆検討会について

原さんは、まず
パブコメの内容を踏まえた議論を、検討会では行なったのか質問。

それに対して都は
「昨年7月に検討会を立ち上げ、これまでに4回開催してきた。第2回定例会での質疑やパブリックコメントも反映した。」
と、答弁しました。

しかし、その検討会というのは、計画案を作る段階までのもの。パブコメの結果などは、検討会全体での議論はなく、委員に内容を紹介し、その上で必要な修正をした、とのことです。

パブコメというのは
“とりあえず意見を聞きましたよ”というパフォーマンスのためにやるものではないはずです。
だからこそ、
案をつくって終わりではなく
パブコメの結果もきちんと議論すべきだったのではないでしょうか。

原さんも
「集団的に議論をしていれば、違う取りまとめもあったのではないか」
と指摘していましたが、
わたしも同じように思います。


◆福祉との連携

地域生活定着支援センター」というところがあります。
ここは、“高齢(概ね65歳以上)又は障害のために福祉的な支援を必要とする矯正施設退所予定者及び退所者等に対し、関係機関等と連携・協働しながら、入所中から退所後まで一貫した相談支援を実施することによって、その方の社会復帰及び地域での生活への定着を支援する”ことを目的とした場所で
この再犯防止計画について、福祉との連携を考えたとき、このセンターがカギになるのではないかと、原さんは言います。

しかし、意見は反映させている、とは言うものの
検討会には、センター長などの責任ある立場の人が出席することもなく、
なぜ、きちんとした議論の場に呼ばないのだろうかと、大変疑問です。

犯罪にはさまざまありますが、
福祉とむすびつくことができずにいるために犯罪を繰り返すケースもあると思います。

きちんと、検討・協議の場で意見を聞いてほしいし、
再犯防止には、福祉との連携が欠かせないということを、わたしからも強く言いたいです。


◆被害者の心情・視点を踏まえる

わたしがこの計画に対して
いちばん言いたいことは、この「被害者の心情・視点を踏まえることは欠かせない」ということです。

原さんの指摘に対して都は
「被害者の存在は認識すべき、ということは言うまでもありません」
という答弁だけ。
認識して、どうするのでしょうか?

パブコメでは

加害者の権利を重視した計画になっているため、被害者の存在に配慮した計画とすべきである

という意見に対して

第1・3において、国の再犯防止推進計画で掲げられている5つの基本方針を踏まえることとしており、同方針3において、再犯の防止等に関する施策は、生命を奪われる、身体的・精神的苦痛を負わされる、あるいは財産的被害を負わされるといった被害に加え、それらに劣らぬ事後的な精神的苦痛・不安にさいなまれる犯罪被害者等が存在することを十分に認識して行うこととしています。また、犯罪被害者等支援については、既に策定されている「第3期東京都犯罪 被害者等支援計画」に基づいて実施することとなるため、本計画については、原案のとおりとさせていただきます。

と回答しています。

再犯防止計画に何でも盛り込め、ということではないけれど
これは加害者の再犯防止計画であって、被害者支援は別でやるからいい、というかたちでいいのでしょうか?

原さんは
「被害者が見ても、受け止められる計画であるべきではないか」
と述べていましたが
わたしも、そういう計画であってほしいと思います。

また、
都は「罪名に関わらず、さまざまな犯罪の再犯を防止する目的の計画である」ことを強調していましたが、
性犯罪については、不十分であると言わざるを得ません。

計画の中での、性犯罪に関わる記述は
次の1箇所のみです。

ア 子供を対象とする暴力的性犯罪をした者の再犯防止
法務省の協力を得て、刑事施設出所後の継続的な所在確認を年2回以上実施し、その者の同意を得て面接を実施し、必要に応じて関係機関・団体等による支援等に結びつけます。特に再犯リスクの高い対象者については、その実情に応じ、より頻繁に所在確認を行います。【警視庁】

一方、国が策定した再犯防止推進計画は
次のようになっています。

i 性犯罪者・性非行少年に対する指導等
ア 性犯罪者等に対する専門的処遇
法務省は、厚生労働省の協力を得て、海外における取組などを参考にしつつ、刑事施設における性犯罪再犯防止指導や少年院における性非行防止指導、保護観察所における性犯罪者処遇プログラム等の性犯罪者等に対する指導等について、効果検証の結果を踏まえた指導内容・方法の見直しや指導者育成を進めるなどして、一層の充実を図るとともに、医療・福祉関係機関等との連携を強化し、性犯罪者等に対する矯正施設収容中から出所後まで一貫性のある効果的な指導の実施を図る。【法務省、厚生労働省】

なぜ、都の計画では
「子供を対象とする暴力的性犯罪」と限定しているのでしょうか。
“罪名に関わらず”というのであれば、子どもに限定する必要はないはずです。(さらに言えば、暴力的という言葉が添えられているのも違うのではないかと思います)

そして、国の計画では
「医療・福祉関係機関等との連携を強化し、性犯罪者等に対する矯正施設収容中から出所後まで一貫性のある効果的な指導の実施」となっているのに対して
都の計画は
「刑事施設出所後の継続的な所在確認を年2回以上実施し、その者の同意を得て面接を実施し、必要に応じて関係機関・団体等による支援等に結びつけます」
という、所在確認と面接がメイン。

本当にそれでいいのでしょうか?

「性犯罪をなくすための対話」というシンポジウムについて取り上げた
弁護士ドットコムさんの記事
再犯防止プログラム受けたのに、わいせつ行為がやめられない…ぶつ切りの支援、立ち直りに壁」には
次のように書かれています。

法務省は2006年から受刑者に対し「性犯罪再犯防止指導(R3)」を始めている。性犯罪の再犯リスクの高い受刑者が、刑務所でプログラムを受講するものだが、出所後、継続的にプログラムを受ける体制が整備されておらず、再犯防止支援はぶつ切りになってしまっている。

また、
精神保健福祉士の斉藤章佳氏は
「習慣を変えるプログラムなので、持続性がないと頭から抜けていく。刑務所で受けたR3や保護観察所で受けたプログラムを、どう継続させるかが問題」と指摘しています。

これらを踏まえれば、
都の計画が不十分であることがよく分かるのではないでしょうか。

原さんは、今後開かれる協議会について
神奈川では公募市民も入っていたことを挙げ
幅広い人が入ることでより良い協議会になるように、最後に要望しました。


◆最後に

わたしは改めて、形だけの計画にならないようにしてほしい、と思います。
犯罪はさまざまですが、
社会復帰だけがゴールではないこと、
「再犯防止=社会復帰」ではないこと
認知の歪みの修正や、被害者の痛みを理解することが必要な場合もあること、、、
そういったことを何も考えず
「社会復帰のための支援をしましょう!社会復帰ができれば再犯防止に繋がります」という計画であっては困ります。

そして、加害者臨床と被害者支援は車の両輪である、ということ。
被害者支援の条例がつくられていることは重要ですが、だからといって、この再犯防止推進計画が被害者の心情や視点を踏まえなくていい、ということにはならないはずです。
被害にあって苦しむ当事者が、この計画を読んでさらに傷つくことのないよう、
今後の協議会で検討が重ねられ、良いものに変わっていくよう願っています。


※カバー写真は9月12日の総務委員会




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