ART TRACE PRESS編集協力の終了と個展開催について

すでにTwitterなどでも告知済みですが、来る6月28日に、美術批評誌ART TRACE PRESS05が発刊となります。

ART TRACE PRESS 05

内容ならびに僕の寄稿したテキストについては、自分のサイトのNewsに書きました。

News:ART TRACE PRESS05に寄稿

私事ですが、同誌について、今回の号をもって創刊時から携わってきた編集協力という立場を終えることにしました。松浦寿夫・林道郎両責任編集のお許しはいただいております。

2018年5月にこのブログ「一人組立」では、美術手帖のアーティスト・コレクティブ特集の見取り図に自分の組織した「組立」が掲載されていたことへの自問自答から「一人で美術を組み立てるということ」という文章を書きました。このとき当然ART TRACE PRESSについても考えが固まっていたのですが刊行がずれ込み、おおやけに出来ずにいました。

「一人で美術を組み立てるということ」にも書いたとおり、「一人組立」は作家個人がその個の核を常に再確認しつつ、様々な人々と協働する契機としてあるものです。僕は今までもART TRACE PRESSには外部からそのような気持ちで参加していたのですが、現実にはほとんどART TRACEのメンバーの一員のように見られてもいました。これは整理する必要がありましょう。

現在、美術を理論的にも実践的にも再組織するというとき、作家が共同性(美術大学、ギャラリー、アーティスト・コレクティブ、公募団体、更には家族や国家など)に対しどのような距離を示すかは、批評的な意味を持っていると僕は考えます。人間が社会的な存在である以上、だれしもなんらかの共同体には属さざるをえません。同時に、かつて柄谷行人が語った、複数の共同体「間」、あらゆる共同体からはみ出す「隙間」を今、僕は想起しています。そのような共同体「間」において、単独性=「一人」であることの不可能性と不可避性が露出する。美術家にとって「一人」性こそが、原理的に重要であることは、昨今のアーティスト・コレクティブの隆盛の中で、改めて強調されていいでしょう。

この前提の上に、これからもART TRACE PRESSと可能なる協働を図る──例えば一読者として──ことができればと思います。雑誌の「読者」であることもまた、協働の一環のはずです。

ART TRACEは、美大の油絵科を出た、地道な画家達のNPOです。彼らの活動は、彼ら自身の内発性から行われていますが、『絵画は二度死ぬ、あるいは死なない』シリーズを見れば明らかなように、日本の現代美術の重要なインフラを形成している。そんな彼らへの社会的な評価は明らかに遅れています。多少なりともART TRACEの活動を知っている方は、是非応援してあげてください。直近にART TRACE PRESS05発刊イベントがあります。

「89年について」

なお、新たに編集の協力者の方が参画されますので、ART TRACE PRESSの編集作業自体については心配しておりません(新しい協力者の方の参加は永瀬のこととは無関係に決まっていますので誤解なきよう)。早期の06号発刊を期待しています。

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そして、個展の告知。僕にとっては「一人組立」も、文章の執筆や雑誌への参加も、制作活動の一環としてあるものです。遠方の方もいらっしゃるかと思いますが、是非ご高覧いただければ幸いです。この個展もまた、複数の共同体「間」の協働としてあることを、ささやかではあっても示していければ、と思っています。

永瀬恭一 個展「少し暗い 木々の下」
場所:Bar+Gallery 殻々工房
交通:http://karakara.pepper.jp/access.html
会期:2019年8月3日~9月28日
時間:Sunday Bar Gallery 日曜15:00~0:00
平日(bar time):18:00~0:00
定休日:木曜日
※BARのため未成年者の同伴はお断りしています。
※日曜日のみ18:00まで未成年の方もご利用いただけます。
※平日は店内が暗くなります。作品に関心ある方はSunday Bar Galleryをご覧ください。

この下にDM画像を置いておきます。関心ある方は御連絡ください。


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