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池澤夏樹×黒川創「世界を描く、ということ」の構成を担当しました。(『すばる』2023年7月号)

小説家にとって世界とは何か。そんな本質的な問題に迫った対談でした。

『世界文学全集』を編纂し、近作では自伝的な物語の枠組みを使い、歴史の動態のなかから自分のいる世界を把握し続けている池澤夏樹。デビューから一貫して国家が作り出した世界の輪郭を疑い、変容させることを小説を通じて試みている黒川創。

お二人の新刊(池澤夏樹『また会う日まで』と黒川創『世界を文学でどう描けるか』)を巡って交わされる、世界と自分の関係性をその根底から捉え直す議論は、近代的な誤魔化しから目を覚ますような刺激を与える内容になっています。

お二人のサハリン体験から始まり、日本/ロシアの国境の最果てにある世界を近代的なイデオロギーとは別の眼差しでなぞり直す。あるいは、そうした場所で暮らす自分とは異なる人間を小説は描けるのか、そこで塗り残されたモノを僕たちはどう捉えられるのか。そうした問題に迫るお二人が、互いの作品を今回の新作だけでなく、過去のいくつもの作品まで遡って読み直すところに、感動さえ覚えるほどの誠実さを僕は感じました。

黒川創は世界の輪郭を問い直し続けた小説家です。彼はコミュニケーションの側から世界を見続けた近代的な文学観をカッコに入れ、ディスコミュニケーションの方に人間の創造性を見ようとしています。新作の『世界を文学でどう描けるか』(図書出版みぎわ)がゲーテの世界文学論に対する批判を中心に置いているのはそのためなのです。

ぜひ、対談も、お二人の新作もお読みください。

なお、この対談は図書出版みぎわの代表、堀さんが企画した同名の公開イベントを文章化したものです。堀さん、素敵な企画をありがとうございました。

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