「忙中閑」の記事:維持伝建(いじでけん)

維持伝建(いじでけん)
長崎市には南山手・東山手の二つの重要伝統的建造物群保存地区がある。私の住いは、南山手のすぐ背後斜面地(風致地区)にある。近年、伝建地区と風致地区に空地・空家が増え、指定建造物だけがポツンと点在する風景に変わってきた。先日も、指定建造物の洋風木造病院建築が市に買収された。私の来崎以来36年で、市が買収した指定建造物は、東山手と併せ6カ所12棟ある。地区の景観を保ってきた指定建造物以外の邸宅も、持主の死去や長期入院等で、市へ寄贈したり取り壊わされたりしている。伝統的建造物群保存地区の制定(1975文化財保護法改正)は、1970年代開発の嵐から貴重な街並と建物を保全活用しようとの運動の成果であった。指定建造物には保全改修補助や固定資産税等の減免措置がなされた。一方で、指定建造物は厳格な保全、指定地区での建築には建ぺい率・容積率・高さ・用途・外観様式・植栽や外構の変更などが厳しく規制された。そのため、新規の建築が著しく減少、地区の人口減少と少子高齢化を促進した感がある。当初は、持主や地区住民の意気も高く、伝建地区まちづくり協議会の活動も活発だった。40年の時間経過で、当初関係者は現役を引退し、相続などを迎えている。伝建地区に人々が居住し続け、地区に相応しい土地と建物利用が促進されるように見直す時期がきた。

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