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魚が美味しくなれば世の中が良くなる理由

美味しい魚を食べるための究極の方法

 美味しい魚を食べるための様々なポイントやテクニックはいろいろとあります。しかし、そのようなことを気にしなくても、美味しい魚が食べられる世の中になれば、それで事は足りるのです。つまり、

 「どこで食べても魚が美味しい世の中を創る」

 これが、美味しい魚を食べるための究極の方法ではないでしょうか。では、そのためにはどうすれば良いのでしょうか。今回は、その方法について考えてみたいと思います。

現代社会で進む流通の「システム化」と魚との相性

 さて、様々な所でビジネスの拡大や効率化などのために「システム化」がされているのが現代の社会です。ここでいう「システム化」とは、IT(情報技術)に限らない広義の意味であり、「仕組みをつくる事」を指しています。
 ここで言う「システム化」の逆は、「属人化」です。「属人化」とは、「何をするにも人に依る」という事です。「あの人でないと出来ない」「あの人の技術次第」という状況は属人化の結果です。属人化してしまうと、ビジネスを拡大する事が難しくなります。「あの人」は、1人しかおらず、分身の術は使えないのです。
 この状況を脱するため、人に依らない仕組み作りである「システム化」が進みます。具体的にいうと、業務を行う人を組織化して、状況をパターン化して、それに対する手順やマニュアルを作成して、といった事を行います。このようにする事で、役割を絞り、スキルが無くてもできる作業を増やし、さらには機械でも出来る作業に落とし込み、ビジネスを拡大して、効率も上げていくのです。
 この「システム化」が流通において進んだ場合、なるべく定品質な品物が求められます。いつもと違うパターンの品物が来てしまっては、マニュアルや機械で対応できないためです。そして、「システム化」は、それらの定品質な品物を大量に処理する事が得意です。
 しかし、日本での魚は日々状況が変化します。アジが大量に獲れる日もあれば、イワシが大量に獲れる日もあります。そして、同じアジと言っても品質が変わります。そもそも、毎日大量に処理する程に獲っていない魚は沢山あります。

 このように、「システム化」と魚との相性は、非常に悪いのです。

なぜ冷凍と養殖か

 この相性の悪さを解消するためには、①「システム化」した流通に魚が歩み寄る、②魚に「システム化」した流通が歩み寄る、この2つしかありません。
 そして、現在の魚の流通では、主に①の手段が取られているという状況です。つまり、魚をなるべく定品質にして流通させるという事に力を注いできたのです。

 定品質な魚とは、具体的に言うと、冷凍魚や養殖魚です。

 「システム化」した流通に魚が歩み寄るようになって、随分な年月が経ちました。その歴史の中で冷凍や養殖の技術が進み、私たちは、より安全で美味しい冷凍魚や養殖魚を食べられるようになりました。そして、この流れはこれからも続き、冷凍や養殖の技術はこれからも進歩するでしょう。

もう1つの手段

 さて、相性が悪い「システム化」と魚の溝を埋めるためにはもう1つの手段があります。それは、②魚に「システム化」した流通が歩み寄るという事です。
 ①の「システム化」した流通に魚が歩み寄るという事は、魚本来の良さを殺す面もあります。だから、世の中の魚は、なかなか美味しくならないのです。

 私は、真に美味しい魚を世の中に行き渡らせるためには、魚本来の特徴に流通の仕組みを合わせる、②の手段が取られるべきだと思います。

 これは、時代と逆行する話でもあります。日々の魚の変化に臨機応変に対応するには、「システム化」よりも「属人化」の方が向いているからです。
 しかし、近い将来、様々な工夫と技術の進歩が流通を進化させ、魚本来の特徴に合った新しい流通の形を作り上げるでしょう。

 例えば、ICTといえば、今までは「システム化」と隣り合わせで、決められた事を早く正確に大量にこなす事が専らでした。これらは、日々変化する魚への対応とは、真逆と言えます。
 しかし、最近のICTは、単なる「システム化」だけではありません。様々な分析を行い、人の判断の手助けする技術や、AIなども発展が目覚ましいです。それらは、日々の魚の変化に臨機応変に対応する手助けになる可能性があります。
 そして、「システム化」の進み過ぎに対して、それを見直す動きも見られます。魚の流通は、もっと最適な流通の形を模索しているのです。

魚が美味しい世の中を創るのは「人」

 以上のように、魚が美味しい世の中を創るためには、日本の魚に合った新しい流通の形を作り上げていくことが不可欠です。そして、それを作り上げるのは、魚でもなく、機械でもなく、「人」です。

 魚が美味しい世の中を創るための最重要事項は「人」の部分です。

 日本の魚に合った新しい流通の形を作り上げる事は、並大抵な課題ではありません。だからこそ、魚のスペシャリストだけでなく、様々な方の知見や力が不可欠です。
 魚を扱う漁業・水産業には、国内消費の低迷、後継者不足など暗い話題もあります。しかし、世界的には魚の消費は伸びており、将来性があり、夢があります。元々日本は、四方を海に囲まれ、世界有数の漁場も有しており、魚食文化の歴史も長く、かつては世界唯一ともいえる水産大国でした。今現在、漁業・水産業はかつて程の元気があるとは言えませんが、それだけのポテンシャルがある中、まだ手を付けられていない事が多く、ビジネスチャンスだらけなのです。
 様々な分野の方へ協力を呼びかける事は、私の使命の1つと思っています。より多くの方に、「魚が美味しい世の中を創る事」に知恵を貸していただき、協力いただけたら幸いです。

魚が美味しくなれば世の中が良くなる

 私は、「魚が美味しくなれば世の中が良くなる」と信じています。
 魚は、人の身体の成り立ちと健康に不可欠である良質なタンパク質や脂質、ビタミン類を豊富に有しています。そして、頭の回転を早める効果に加え、うつ病を防止する効果も報告されています。それに加え、他の食材以上にバラエティ豊かな魚は、私たちの日々の食生活にうるおいを与えてくれます。

 魚は、人々の心と身体を元気にするのです。

 「魚が美味しくなれば、人々はもっと魚を食べる。人々がもっと魚を食べれば、心と身体が元気になる。心と身体が元気になれば、良い事をする人が増える。良い事をする人が増えれば、世の中が良くなる。」
 これを一言で言うと「魚が美味しくなれば、世の中が良くなる」です。

 美味しい魚を食べて、魚が美味しい世の中を創り、ともに世の中を良くしましょう。

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