【物語】お金を知らない星 ☆01
英語版はこちらhttps://note.com/nagareboshi3/n/na83e4b91ff85?magazine_key=me00fbd0d02d2
私は日本のTVプロデューサー、暖かい午後に公園のベンチでうたた寝をしてしまった。
そして起きたらビックリ、あの公園の景色ではない。記憶喪失?徘徊?いや違う、意識は正常だ。ここも公園のようだが、まるで大自然の気持ちよさを感じる。
とにかく道行く人に「ここは何処か?」聞いてみようと思い話しかけても、みんな何を言っているか全く分からない。日本語でも英語でもない、全く聞きなれない言葉で話してくる。
一人のご老人が見かねて私を交番の様なところへ連れて行ってくれた。そして警官が私にスカウターみたいなモノをくれ、装着しろと言っているようだ。
スカウターをつけると警官とご老人の会話が理解できるし、私の言葉も即時に翻訳してくれる様だ、まるでポケトーク。訳の分からん文字もスカウターが日本語で表示してくれる。
どうやら、このご老人が私の身元保証人として世話をしてくれるらしい。そんなこと簡単に決めちゃっていいの?
最初に、ご老人はファミレスに私を連れて来てくれた。”私、お金ないけど大丈夫?”と心配したが、ご老人は「なんでも好きなものを注文してくれ」とのこと。
だが、このファミレスのメニューには料金の表示がない!何故だ!まさか時価?
恐る恐る注文しピザとコーヒーを美味しく頂きました。ご老人もコーヒーを楽しみとても満足です。
そしてファミレスを出る時、ご老人は店員さんに「ご馳走様、ありがとうございます。」と言って、会計もせずにトコトコ外へ出ていった。
残された私はとても焦った。なにせこの星のお金をもっていない。もう逃げるようにお店から出てきました。そして、店内にいる店員さんを見たところ、嬉しそうに後片付けをしている、大丈夫なのかな?と心配した。
まさかのツケ払い?、後日一括精算すると解釈してご老人に付いていきました。
ピザとコーヒーを頂いたあと、今後私が滞在する家へご老人が案内してくれました。イタリアの街並みのように美しく自然とも調和している素晴らしい景色です。
家の中は特段広くはないが、1人で住むのには必要十分だ。照明装置やテレビ、ベットなど優しく教えてくれ、「これからこの家で暮らしてくれ」と、謎の優しさ。
「はい? この星では、お金を全く持っていないヒッピーみないな私に、なぜそんなに優しくしてくれるの?」 ”タダより高いものはない” 何か裏があるに違いない、と思いながら、その夜、ふかふかのベットで眠り落ちてしまいました。
翌朝9時頃にご老人からスカウターに電話がかかってきた。「これから自動車でスーパーに行って、必需品や食料を揃えるから、お家で待っててね」とのこと。
ご老人とスーパーマーケットに行きました。日本の様にみんな欲しいものをカートに詰め込み、出口近くで会計・・・していない。
皆さん、マイバックに商品を直接IN。集団万引きか!!!
そんな事はない、皆さん非常に有難い気持ちで ”感謝”しているようだ。
よく見ると商品に金額表示や、そもそも会計するレジがない、どういう仕組みになっているんだ?!
スーパーのイートインコーナーで、ご老人に色々と質問してみた。
私:ここでは、”お金”を支払う事はないんですか?
ご老人:”お金”ってなんですか?
私:私達がモノやサービスを購入する時に使う、非常に便利なものです。例えば、私の財布にある千円札とか100円玉です。
ご老人:ただの紙切れと金属玉のようですが、数字が書いてありますね。これに価値があるのですか?
私:私が元々いた地球では、お金がないと生きていけません。だけどお金があれば色々なモノが買え、とても安心できます。
ご老人:では、その”お金”がなければ、人々は不安で悩み苦しむという事ですか?
私:そうです。”お金”とはそれだけ大切なモノです。なのに何であなたの星では”お金”がないんですか?
ご老人:私の星では、そんな”お金”というものが無くても、みんな幸せに生きていますよ。
ご老人:あなたの世界では、モノを貰う時に、この”お金”とやらと交換するのですか?
私:そうです。ギブ&テイクです。一生懸命働いて稼いだ”お金”ですから、お金を払うお客さんが神様です。
ご老人:本来は商品を真心こめて作ってくれた生産者さんに感謝して、貰う側は使わせて頂く立場なのに、あなたの星ではモノを貰う方が偉いんですね。
私:だから”お金”を払っているからです。逆に私が労働するときは、お金を貰う側のため立場が弱いです。
ご老人:ちょっと思ったんですが、その”お金”を計算するのって非常に手間が掛かりませんか?ずいぶん余計な仕事のように感じます。
私:でも、”お金”がなかったら資本主義の世の中は成り立ちませんし、誰も働かなくなります。お金をたくさん持っていたら、贅沢な暮らしが出来るので、みんな沢山のお金を欲しいと思っています。
ご老人:こんな紙切れと金属玉がなければ、仕事をしない?面白いですね。あと教えて下さい、贅沢とは何ですか?
私:超高級車とかブランドの服を沢山買って、子供にも小学校の内から塾通いさせて将来の備えができます。美味しい食品やお酒も毎日お腹一杯になるまで楽しめます。
ご老人:超高級車とかブランドの服で、あなたは幸せになれるのですね。塾通いは子供の為と言いつつ、実は親の見栄の様に感じます。そんな美味しいモノを毎日お腹一杯たべて成人病にならないのですか?
私:それにお金持ちは、広い大豪邸に住むことが出来ます。一方でお金のない人はホームレスになってしまいます。
ご老人:お金持ちの方は自分だけ広い家に住めれば、他人はどうでもいいのですか?ビックリするなぁ。
私:このご老人に”お金”の事を話しても、全く話が嚙み合わない。疲れた。
そして、
ここのスーパーでも私達は”お金”を払うことなく商品を頂き、帰途につきました。どうやってスーパーの経営が成り立つのだろう?
わからない事だらけだ。。
翌日、ご老人が「お仕事に行くから見学しないか」とお誘いを受けた。付いていくと立派なビルに入って行き、そこのビジネスマン達は、ご老人に丁寧にお辞儀をしていく。
ひょっとして、このご老人は社長さんか相談役か? 小説のような展開だ。
ご老人が「着替えるので、少し待っててください」と言われたので、座っていると、ご老人はトイレ掃除の作業員の格好をして、トイレ掃除を始めた。
そこでもビジネスマン達は、「ありがとうございます」と言って、ご老人へ丁寧に挨拶をしている。意味が分からない。
そのあと、私はこの星のオフィス街を散歩した。道行く誰もが「今日の仕事も楽しみです!」みたいな顔でイキイキとしていた。
それから3時間後、ビルの入り口でご老人と待ち合わせた。この星について今日は沢山質問しようと思う。
私:ご老人のお仕事は何ですか?
ご老人:ちょっとした有名な画家じゃよ。週に数回トイレ掃除や山道の補修をしています。
私:やっぱり絵画だけだと食べていけないから、トイレ掃除のバイトをしているのですか?
ご老人:ん? スーパーマーケットに行けば食料品など無料で手に入るから、働かなくたって生きていけるよ。
だけど、みんなが働かなければこの社会は維持できない。だから誰もが、社会に必要とされる仕事を、自らの意思で働いています。
私:でも、トイレ掃除とかゴミ収集とかは、社会的には汚らしい仕事ですよね?
ご老人:確かにキレイではないけど、その仕事を誰かがしないと、この社会は成り立たない、人々が余りやりたがらない仕事ほど尊いものじゃよ。
私:そういえばスーパーマーケットでは、一人で沢山商品を持っていく人はいないんですか?
ご老人:商品は何時でもスーパーマーケットにあるのに、なんで1人で沢山持っていく必要があるの?そんな事をしたら欲しい人に行きわたらないよ。欲しい時に必要なだけ持っていけばよい。
私:”お金”がないのに、なぜ経営が成り立つの?
ご老人:スーパーマーケットで働く人、物流トラックの運転手さん、商品の生産者さん、みんな”自分でない誰かのために”一生懸命働いています。そこに”お金”はなくても、社会に役立ちたいと思う気持ちがあれば、この星の様に何も問題はないと思います。
その後お家に帰って、ご老人がテレビの使い方を教えてくれるとのこと。
テレビをONするとVRみたいな超立体映像があらわれる、映像も本物以上に繊細だ。だけどこのテレビいつまで経ってもCMがない、番宣すらもない。
ご老人:大切なテレビを見ている時に、CMで遮られたら大変不快ですよね。だからCMなんか無いですよ。
もし必要な商品があれば、コマーシャルCHがあるから、そこで選べばいいだけの話ですね。
私:だんだん分かってきた。みんな”お金”の為に働いていないから、素晴らしいTV番組を作ることだけに熱心で、モノを売り込もうとするCMの事なんか考えていないんだな。
私:テレビとか I-PHONEとか新商品が出たら、みんな一挙にそれを取り寄せませんか?
ご老人:そんな事はないですよ。だってそんなに急激な進化はないですし、ちょっとくらい古くても、使えるうちは皆つかいます。環境のことも考えて、自分一人で欲張っては、この社会は成り立たない事をみんな良く分かっていますので、
**************
そう、例えば現在、地球の銀行や証券会社では ”お金”の計算ばかりしているが、本当に必要なものなのかな? ”お金”に関する仕事が、今の地球では余りにも多すぎて、とても無駄な作業をしている様に感じた。
今の地球でも、ある日突然ぱったり ”お金”が無くなっても、この星の人達のようなマインドで働いたら、何も問題なく”お金のいらない世界”に移行できるのでは?と思い始めました。
私も、もうそろそろ、この星の人達の為に働きたくなってきた。地球ではTVプロデューサーをしていたので、TV関連の仕事がしたい。
TV制作会社の面接では色々と聞かれ、自分の出来る範囲で頑張ってくれれば良いとのこと。
やはり給与の話は出ない。ある意味タダ働きのブラック企業だが、この星では嫌なら辞めて自宅でニートしていても良い。
ご老人の言葉では、「人間誰もが”人のために尽くして働き、感謝し合いたい”存在であり、みんなの頑張りで、この社会を廻している自負を持っている」とのこと。
銀行とか証券会社のような余計な”お金”の仕事は無いし、無駄なモノを売る為だけの営業マン達も不要なので、社会全体の仕事量は断然少なくなる。
公務員という概念もないようだ、一人ひとりが社会の為に必要な仕事をしているので、市役所とか消防署で働く人達は公務員ではない。
社会で必要とされる仕事量全体をみんなでシェアしあい、過度な贅沢はしないので、一人ひとりに住居が無償提供され、食料品もスーパーで必要な分だけ無料で揃えられる社会が可能となります。
この星では、高級ベンツの様なバカデカい自動車にのる人は少ないです。見栄もないし、実用性を皆さん考えるようです。でもデザインはもの凄く美しい。トキめくモノを長く使うマインドなのだろう。
話が逸れた、、、仕事の話。
私は地球でTVプロデューサーをやっていたので、広告CM制作に携わる事になった。そして2週間後に競合B社とコンペティションが行なわれる。
商品は新型クッキングマシーンとのこと。コンペまで毎日一生懸命に調査し企画を練って、良いCM案が提示できるよう頑張った。
そしてコンペの日、我がA社のコンペを私が行ない、ライバルB社のコンペも終了した。その後CM発注元C社が、どちらの案を採用するか発表する! と思ったら、
発注元C社の担当者:では、これから議論して、どちらの案にするか練ってください、とのこと。
私:普通はコンペを見たうえで、発注した会社がどちらの案にするか決めるんですよ。
発注元C社の担当者:いえ、私はCMに関しては素人ですから、プロであるあなた方に決めて頂きたい。
もう良く分からないが、ライバルB社の担当者とお互いの案の改善点を議論し合い、その結果、我がA社のプランが採用されることになった。
ライバルB社の担当者はガッカリすると思ったが、スッキリした顔をしている。ただ自分の案で無かっただけで、より良いCMを作りだせ満足しているようだ。
”お金”の為に働いていないから、いかにより良いモノを作りだせるかが大事で、その充実感は計り知れない。この仕事をすることが出来て本当に感謝の気持ちになりました。
今日はご老人と再会し、また質問をさせて頂いた。
私:この星でも働かない人はいますか?
ご老人:寂しいですが一定数はいます。私達はそんな彼らが社会に貢献できる日を暖かく見守っています。
私:この星では犯罪を犯した場合はどうなるのですか?
ご老人:ご存じの通り、全ての商品は無料だから窃盗とか強盗は起こりようがない。だけど事故や傷害事件はごく稀に起こります。
私:傷害事件を起こした場合は、やはり刑務所に行くんですか?
ご老人:なぜ刑務所?独房にいれたり懲罰することでは、その容疑者が更生しないでしょ。だから病院に行かせます。そして社会復帰できるまで、ずっと頭と心のリハビリをしていきます。
私:そうなんだ!どんな悪人でもほとんどの場合は自己正当化してしまうから、悪いメンタルを改善していく方が大切なんですね、だから病院か。
私:あと、この星のテレビで見たんですけど、この星にも軍隊がありますね。何でですか? 国どうしで戦争をしているからですか?
ご老人:はっはっは(草)、「戦争?」そんなのは小学校レベルの星のすることじゃよ。
私:じゃあナゼ軍隊があるんですか(怒)? 銃だってもっていますよね?
ご老人:それは”救世軍”じゃよ。地震や噴火、大雨などの災害時に彼らは大活躍するし、危険な動物が町に紛れ込んでしまうこともある。そういった時の為の銃じゃ、決して人を撃つためのモノじゃない。
”銃を持つこと” と ”銃を使うこと”とは、別じゃろ。「備えあれば患いなし」という諺は地球でもあるよね。
************
ご老人:ああ、そうそう、言い忘れていた。
ご老人:君、地球に帰れるよ。あした宇宙連合の艦長クラスの方がこの星に立ち寄って、君をピックアップしてくれるとの連絡が入った。良かったね。
私:私にとって1番大切な事を忘れないでくれ!出来れば最初に言って欲しかった。でも何だ?宇宙連合の艦長クラスって?SFか?宇宙戦艦ヤマトか?
うたた寝してたら、突然この星に来たのに、帰る時は大変な思いをしないといけないのか?なんでやねん!
まあ、この”お金を知らない星”で、様々なことが学べたから感謝です、ありがとうございました。
”お金を知らない星” 編( おわり)
次回から、 ”はるかなる地球への帰還” 編・・・これが本当の宇宙旅行
https://note.com/nagareboshi3/n/n35859aa5f066
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?