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もうすぐ冬

「おはよう。」
雨の日の朝は部屋が灰色になっている。
パンにチーズをのせて食べた。
電話がかかってきて、アルバイトに採用されたが毎回断ることは決まっている。
僕は自身の矛盾した行動と考えが理解できない。
アカウントを消す。データを消す。言葉を取り消す。友達を消す。
リセットすることで仮想に生きる僕の死体が積み重なっている。
そこから得た自由と虚しさが僕の奥底に溜まって揺れている。
僕はこの世界に期待しているがその事実には目を背けている。

公園に来た。
雨は止み、鏡のような水たまりが残っている。
ここじゃないどこかへ行こう。
そう思って水たまりを踏んだら
反対側の世界にいた。
自分がこっちを見つめていた。
とりあえず歩こう。

埠頭の先端に立つ。
高くて大きな橋の下。
巨大な雲が工場の煙を吸い込んでふくらみ
それに圧倒されるように明日に絶望する。

水に長くいると暖かく感じる。
それは胎児の頃の記憶に思える。
自我をぬけてエスまで沈もうとしていた。
だが苦しくなって浮きあがってしまう。






「おはよう。」

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