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流れのままに

マイルスデイヴィス誕生のちょうど66年後、彼と同じ日に生まれた。

なんの因果か、私が生まれる前の年に、彼はその生涯に幕を下ろした。

生まれて初めて真面目に聞いたジャズの曲が、偶然にもマイルスデイヴィスのカインドオブブルーだったことは、小さな奇跡だと思う。

当時はジャズなんか大人が聴くもんだと思っていたけれど、社会的にはその年齢になった自分と、昔思っていた大人という言葉が指し示すイメージの差は埋まりそうもない。

なぜだろう。

小さいころは大人と子どもには明らかな境界線があって、向こう側には見たことのない世界と、生まれ変わった大人の自分がいることを想像していた。

いつかそんな日が来たとき、わかっているはずだった。世界の不思議も、他人の気持ちも、優しさも、強さも。

そして、それを言葉にして誰かに伝えようとも思っていた。

でも、その日はまだやってこない。

いろいろとやってはみた。

スポーツで日本一を争うところまでいった。世界を30Lのバックパックと共に放浪した。商社で働いた。税金を払った。選挙に行った。借金をした。友の結婚に立ち会った。女性と別れた。フリーランスで稼いだ。海外に住んだ。企業の取締役になった。

どこかで聞いたことがある、大人っぽい経験。やってはみたものの、わからないことはむしろ増えていく。

答えてくれる他人もいない。

自分が理解した世界を書き留める日は、わからないことが増えるたびに延長される。

だから、いつまで経ってもその日がこないなら、言葉にできる範囲で自分が感じていることを、わからないまま伝えようと思う。ありのままに。

冒頭に書いた、小さな奇跡のような巡り合わせが多い人生だ。そんな出会いたちについても書きたいなと思う。

28といえば、マイルスデイヴィスがウォーキンを出した年齢だ。

これからも自分のペースで歩いて行こう。

犀の角のようにただひとり歩め。





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