イエローの冒険『リリィと闇の魔法使い』(1)
*
この世界には三つの魔法がある。
火に干渉する赤魔法、水に干渉する青魔法、植物に干渉する緑魔法となっている。赤が緑に強く、緑が青に強く、青は赤に強い。それが基本的な原則なんだ。
でも、僕は黄色の魔法使いだ。
少しだけ、僕の冒険にお付き合いくださいな。
1
夕方の公園。子どもたちが無邪気に遊んでいる。これだけ多くの人の目があると、誘拐なんて起きないという認識は文民の発想だ。
ジャングルジムの頂点に男の子が上がった。
――狙われている。
母親の魔法使いたちはテンポが遅い。魔法を使うスピードも、筋力に少しだけ依存してしまうのが現実だ。
南西の方向から稲妻が落ちる。これは自然発生したものじゃない。殺傷能力は低いけれど、光の速さに干渉できる魔法は青魔法、そして同じ赤魔法、最後に僕の黄色魔法だ。
人差し指を向けてレーザーを放つ。それは稲妻と相殺し、稲妻がどうやら本体だ、ということがわかった僕は第二波を止める為に光と同化する。
向こうはご丁寧に短剣でこちらに斬りかかってきたので、光と同化したまま右腕を刃物のような硬度に変化させ、それを受け止めると、そのまま粘着する性質に変化させてくっついてとっ捕まえる。
指名手配犯、稲妻のブライ。
「なっ、なんだこの魔法!こんなやつ、この世に一人しかいねぇ!」
母親の一人が呟いた。
「流石ね、これが賞金稼ぎのルーキー、黄色の魔法使いイエロー」
2
無事に警察署へ連れて行き逮捕してもらって報酬をいただいた。
警察署を出ると、一人の少女が寄って来た。
「君がイエローなんだ、へー」
綺麗に巻いた髪に、派手な化粧とドレス。
「僕は草食系だから色仕掛けは通じないよ」
「なになに、それは私がセクシーってこと!?」
「そうだね」
「なっ」
あ、赤面した。
「くっそー、ムカつくくらいタイプ!もう!」
無視して通り過ぎると、追ってきた。
「軽く告白してるんだから返事しなさいよ!」
「ごめんね、独り言だと思ったんだ」
「はうー、癒される!ムカつく!じゃあ仕事を依頼するから!請け負ってよ!」
足を止める。
「君は二十歳を超えている?僕は二十一歳だけれど」
「まだ十八です」
「いいよ」
「えっ、でも内容なんて何も……」
「子どもからの仕事は、断らない主義なんだ」
3
母親が借金をして、命を狙われている。
要約するとそういうことだ。確かに僕なら一度だけ借金取りを追い払うことができるだろう。でも、それだと根本的な解決にならない、そして、君がそんな恰好をして働かないといけないのもそれが原因なのか、と聞くと、頷いた。
それだけじゃないんだろう。でも、僕は気づかないフリをした。
ここは赤魔術師の犯罪者が多い地区になる。
普通の人間は、まあ、文民からすると魔法使いは全て普通じゃないんだけれど、赤、青、緑のどれかの属性であり、他の魔法は使えない。本当に少しだけ例外がいるけれど、そういう人たちは珍し過ぎて、そして脅威となるので、子どものうちに身元がバレる。
僕は例外中の例外だ。黄色魔法、と呼んでいるし呼ばれているけれど、要するに光に干渉する魔法を使用できる。
彼女の自宅を訪問し、母親と会うことができた。
「リリィ、この人ってイエローさんじゃないの!?」
「そうよ、母上を守ってくれるって」
「そんな、でも、私たちは貴方様のような方に払うほどの報酬はありませんので……」
僕は心の底から笑ってしまった。
「無償で請け負います」
「「え?」」
「ひとまず、ですね。後で、何でもいいので与えられるものを、僕に与えてください」
やったー!とリリィは喜ぶが、母親は困った顔をした後に言う。
「承知しました」
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