カボチャの中で見た夢
長男が3~4年生、次男と娘が小学校に上がるかどうか、くらいの頃だったかしら。
子ども達が、少しずつ小さな文字が詰まった文庫本に興味を持ちました。ところが、小学生が自分で読むには、さすがに難しいものが多いです。
そこで読み聞かせてあげたのが星新一のショートショート。
半分くらいは理解してくれたのだけど、オチの意味が難しいと、面白さが伝わりません。それに、大人にとってはショートでも、絵本に比べたらそれなりにボリュームもあり、オチがわかる前に眠くなってしまいます。
また、子どもにとっては難しい漢字も多いので自分で読むのはもう少し先になりそうだと感じました。
そこで、星新一のオマージュで、もっと短く、もっと簡単にして、うちの子でも理解できそうなお話を創作してみようと思ったのです。
ファイル整理をしていたら、懐かしい原稿が出てきましたので、カビが生える前にここに貼り付けて陰干ししたいと思います。
家庭内用の拙文ですが、ご興味があれば、続きをお読みください。
『カボチャの中で見た夢』
Nハカセが長年けんきゅうしてきた、発明品がようやく完成しました。
「とうとうやったぞ!これでワシも大金持ちになること、まちがいなしじゃ!」
このきかいがあると、夜ねるときに、すきな夢を見ることができます。
ぎん色の鉄のようなそざいでできており、形はカボチャによくにていました。
「きかいにも名前があったほうがいいな、そうだ、『夢カボチャ』という名前にしよう。」
使い方はかんたん。一番上のヘタのところをおしながら、今夜見たい夢をカボチャにむかって話すだけで、その日は、話した通りの夢を見ることができるのです。
その日の夜、Nハカセは、さっそく自分で実験してみることにしました。 ヘタをポチっとおして・・・んー、そうだな、てはじめに・・
「ワシの発明品が、たくさん売れて、金持ちになる夢」
ぎん色の『夢カボチャ』は、「ピピッ」とはんのうしました。
「これでよし、あとはねるだけじゃ」
その日の夜の夢が始まりました。
ピンポ~ン。Nハカセのけんきゅうしつにだれかがたずねてきました。
「はーい、どなたですか?」
「わたくしテレビきょくのものです。ハカセが発明した『夢カボチャ』のうわさをきいて、しゅざいにきました。今度、テレビでしょうかいさせてください」
それから二週間すると、『夢カボチャ』がテレビにうつりました。すると、その日は百個も注文がきました。次の日は二百個も売れました。
Nハカセはあっという間に金持ちになりました。毎日のようにごうかな料理を食べました。
「ピピピッ、ピピピッ、ピピピッ」
もうすぐ朝になってしまうという合図です。
「いいところだったのに、もう朝か。」Nハカセは夢の中で「セーブ!」といいました。
こうすると、夢のとちゅうでも、データをほぞんしておき、今度、つづきを見ることができるのです。
Nハカセは夜になるのがとても楽しみでした。その日も夜になると『夢カボチャ』をベッドのよこにおきました。
ヘタをポチっとおして・・・「ロード!」
こういうと、同じせつめいをしなくても、前の夢のつづきを見ることができます。
次の日の夢が始まりました。
ごうかな料理を食べ過ぎて、夢の中のNハカセは少し太っていました。
この日は、ABC出版という会社から電話がきました。
「Nハカセの発明ができるまでのお話しを本にしませんか?」
本ができると、もっと多くの人に『夢カボチャ』のことを知ってもらえるので、それはいい考えだと思いました。
本はたくさん売れました。世界中の人が読みたいというので、『夢カボチャ』の本は、英語、中国語、フランス語、ドイツ語など世界中の言葉でも書きました。
ますます大金持ちになったので、けんきゅうじょも、りっぱなビルにしました。屋根がついていない高級な車も買いました。
「ピピピッ、ピピピッ、ピピピッ」
また朝になる合図です。
「セーブ!」
Nハカセは、また、続きを見ることにしました。
目がさめたNハカセは、前より少しやせていました。最近は、自分で夢を見る実験ばかりして、しっかりとご飯をたべていなかったのです。
それに、『夢カボチャ』はまだひとつも売っていませんでした。
「今夜も楽しみじゃ・・・ロード!」
夢の中では、Nハカセは人気者でした。テレビにもたくさんでました。ノーベル賞という、とてもめいよな賞ももらいました。
さいしょは楽しかったのですが、世界中のほしいものが手に入ると、Nハカセはこの夢にあきてきました。
「明日からは、ちがう夢をみることにしよう。」
「ピピピッ、ピピピッ、ピピピッ」
やせ細って死んでしまったNハカセは、二度と目がさめることはありませんでした。
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