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5 フロントを無くす!?


d hotel (d news) ができるまで 5

ほぼ、図面が描き上がり、解体工事も完了し、図面通りに施工が始まる・・・・そんな中、ギリギリの検証。その一つがホテルなのに「フロント」を無くす!?

これは2020年に開業する予定のD&DEPARTMENTの初のhotel project「d news」の記録です。


dの建築を担当してくださる長坂常さんと、彼が率いるスキーマの宮下さんとは、よくこんなやり取りをしています。

「それって、デザインホテルじゃないの??」「それって、スキーマ過ぎるじゃん」そして、最近は「これじゃ、ホテルになってしまいますよね」です。

極論、ホテルを作っているわけですが、そもそも、僕らdは「の、ようなもの」というのが原点。これまで様々な「の、ようなもの」を作ってきました。そして、ホテルについても、まずは「d&motels」という発想から始まり、現在は「d news」というプロジェクト名で、それを表現。

僕のやり方がわかりづらいのはよくわかります。ホテルならば「ホテル」という名前をつけ「ホテル」を目指せばいいわけです。しかし、そんなことには興味はない。いわゆるホテルを作りたかったら、最初からホテルの実績のあるパートナーを選ぶわけです。長坂さんには「ホテルのようなものを作りたい」とお願いし、そこへの共感によって、ニコニコしながら、進められている。しかし、実務を担当する多くのスタッフにとっては、「は?」な、わけです。

そんな感じで進めていく中、今回、レセプションについて意見が出ました。スキーマの宮下さんから、「ナガオカさんが言っているフロントを作ると、ホテルになっちゃいますが、これ、違いますよね」と。

いやー、面白い。この土壇場にきて、図面の修正なんて絶対にやりたくないくらいの状況の中で、そんなことを言ってくれるなんて・・・・。面白いものを作ることに真正面からぶつかってくる長坂さんたちに、本当に感謝なのです。

僕は新宿のパークハイアット東京のフロントが好きで、今回のd newsのフロントも、それからインスピレーションを受けています。彼らの考えは、おそらくですが「一人一人が対応するので、役割分担など、ない」ということ。

なので、フロント業務というよりも、ホテルに来た(フロントフロアに来た)人をみんなで応対する、ということ。通常は、カウンターでチェックイン業務をした人本人が、お客様を部屋まで案内するなんてことはないのですが、パークハイアットはそれをしています。

つまり「気づいた(お客さんに)人が、受け持つ」という旅館に似たオペレーションで、一人一人のスキルが高くないと、当然そんなこと、できっこないのです。

これまで、当然のようにフロントというものをわかりやすくデザインしてもらって進めてきました。言い方を変えれば(前向きに)、一度、ホテルとして完成したものを見ながら、いわゆる「ホテルっぽい」ところを片っ端から変えていくようなことを、こんな土壇場にやり始めたわけです。

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