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2019年 私の観た映画

邦画

①カツベン!
②チワワちゃん
③天気の子
④愛がなんだ
⑤新聞記者

 ①はエンタメとしてここ数年でいちばん面白い映画だった。成田凌、高良健吾らが見せる「活動弁士」(今で言えば映画のナレーションに近い)の面白さ、生きることの楽しさ。主人公が最初何も出来ない所から始めるのではなく、訳あって転がって来た主人公にたまたまやらせたら上手い弁士だった、という展開が良い。程良いドタバタのギャグが滑稽で痛快で、けれども何処かしんみりする。
 ②は、1990年代生まれの監督による2010年代の若者文化の総括と言っても良いほどの、深く考えさせる映画。パリピやInstagramが登場しながらも、何処かさみしさのつきまとう感覚にヒリヒリとする。原作が1990年代の発表であるにもかかわらず、平成の終わりにうまい切り口で蘇らせたと思う。
 この映画と④にも成田凌が出ているが、いずれの作品でも存在感を強く発揮していた。カッコよさだけでなくだらしなささえも力強い。今後に期待したい俳優だ。2作ともに若手陣の演技が秀逸で、世界観も色合いも全く異なるが、2019年を象徴する映画だった。
 ①・②は必ずしもヒットしたわけではなかった。けれども、後々再評価されてもおかしくない傑作であるというのが、私の感想である。
 ③は私が今年見た邦画では唯一の「大ヒット作」。「君の名は。」が東京ポジティブであったならば、こちらは東京ネガティヴと言ってもいい。意図したわけではないとは思うが、この二つの作品は白と黒、光と陰ほどに違う。私はその陰の方を愛する。
 ⑤は、複雑だった。テーマ性や役者の演技には感心できても、ありきたりとも言える描写や構成が散見される。それを凌駕する何かがあれば良かったと思う。高く評価した人もいた一方で、ありきたりな描写などを指摘した声、或いは、この映画に描かれたジャーナリスト像を批判する人もいた(石戸諭さんによるリンク先記事はそうした批判的意見の中でも優れた物だと感じたので、機会があれば読んで欲しい)。この作品も2019年を代表する作品として一定の評価は受けた。小規模の作品としてはヒットした。けれども、果たして後世に残るまでのものかというと分からない所がある。

洋画

①ROMA/ローマ
②ジョーカー
③真実
④バーニング 劇場版
⑤ゴジラ キングオブモンスターズ
⑥アベンジャーズ エンドゲーム
⑦グリーンブック

 ①と②、それぞれ昨年と今年のヴェネツィア国際映画祭金獅子賞受賞作。①は何と言っても、モノクロ+シネマスコープサイズの映像の美しさ、そして音響の心地よさに惹かれる。映画館で映画を見ることの醍醐味を思い出させてくれるような傑作でもあり、1970年代のメキシコで生きる人々のたくましさを描いたストーリーもまた見事。
 ②は、こちらは舞台設定は①と同じ1970年代でもアメリカで、しかも、①と決定的に違うのは全く救いがない所。救いのなさがどこへ向かうかと言えば暴力に至る。R-15指定なだけあって、目を背けたくなるほどの凄惨さ。見方によってはあまりにも最悪な展開と言えるラストは、涙が出そうになる程恐ろしい。最悪の展開に描かれる狂気は、現代の世界にも通じる。日本も例外ではない。
 ③は、是枝裕和監督がフランスで製作した映画。傲慢に見えるけれども憎めない大女優を演じたカトリーヌ・ドヌーヴや、その娘を演じたジュリエット・ビノシュなどの演技が生き生きとしていて楽しい。万引き家族とは打って変わって、徹底的にアットホームな映画。本当はこれと「ジョーカー」をセットでみようと思っていたのだが、あまりの清々しさに、「今日はジョーカーやめとくか……」と諦めさせた(その判断は正解だった)。是枝監督の凄さを改めて感じることになった一作。
 ④は昨年のカンヌ映画祭で「万引き家族」と最高賞を競った映画。この映画にも格差社会は陰を落としているが、しかしそもそも村上春樹原作というのもあってか、若干マイルドではある。とはいえ、待ち受けていたラストがあまりにも意外すぎて「えぇ!?」となった。クレイジーにして骨太。韓国映画といえば、来年は今年の最高賞「パラサイト」が日本で公開される。とても楽しみである。
 ⑤は大怪獣てんこ盛りで地球滅亡寸前!という規模の凄さ。オメーらいい加減にせーよと言いたいくらいの破壊っぷりと役者達のハイテンションな演技に唖然茫然。更にやって来たのは、物議を醸した「まさかの」復活手段。やりたい放題が良くも悪くも詰め込まれて、これぞハリウッドだ……と衝撃を受けたものだった。
 ⑥は人気シリーズの大トリを飾るおおよそ3時間の大作。とは言っても、アベンジャーズシリーズを観たのはこれが初めてだった。それでも充分に、あれよあれよと楽しませてくれる。
 ⑦を私はあまり高く評価はしなかった。うーん、これでアカデミー賞……?とも思った。良くも悪くも無難な映画。でもそれで良いのかと言えば……、しかし、一度見ただけの感想に過ぎない。何度か見れば評価は変わるのかもしれないが……。

番外編(企画上映「午前10時の映画祭」で鑑賞した旧作)

・ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ ディレクターズカット(1984年)
・八甲田山(1977年)
・日本のいちばん長い日(1967年)

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