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力強く生きるということを感じさせてくれる本

「メコンデルタの旅芸人」

自分探しなんかしていない・・・。
・・・・・根を広げて、そこに立っているのである。

文中のこの言葉に、今の世間にはない、
人の力強さを、思い描かせてくれる。

舞台は、ベトナムの南部。
メコン川のデルタ地帯で繰り広げられる。
そこで、おんぼろな船を使って、
ドサ周りをする旅芸人集団。
その一座と、行動を共にし、
何年にも亘っての人間関係を作ることで、
得られた事実を伝えるノンフィクション。

繁栄という名のもとに失われていく、国の、有形・無形の財産。
衰退の中でも、漂流しながら、生々しく活動する旅芸人。

どっちが正しいという軸ではない。
生き長らえている、しかし、それは束縛を嫌い、
自分らしい好きな輝きを、当たり前に求める。
現実に存在する、そんな人達に焦点を当てられると、
その人達の力強さに、わくわくしながら読んでしまう。

著者は、
理由はわからないけど、
この人たちが好きになったから、
その人たちに着いていった。
という。

読んでいるものにとっても、
そこに出てくる人たちを好きになる理由はわからない。
(わかる必要もない。)
けど、好きになってしまう。しかも、すごく。
そういう本だった。

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