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陽気山脈リプレイ⑧~9,000M編

前回のお話はこちら。

【ここまでのあらすじ】
ゼッテェ・ツレ・テクッテバヨ(そして連れて行かれたコージー)。

狂気山脈が深まってきました!
※以下、シナリオ『狂気の峰へ』のネタバレが含まれます! 未踏破の方はご注意ください!
※なお、本キーパリングに関する文章は、KPのまくらさんが通ってきたRPを参考にさせていただいております。








○9日目(食料22/30)

ゼッテェ「おはよう!!!! いい朝だな!!!!!」
エーイチ「ゼッテェさん、いい夢見た?」
ゼッテェ「みんなで山登りをしてお弁当を食べたぞ!!!」
エーイチ「すんげぇいい夢見ちゃってるよ……」
コージー「のんきなやつだな……」

 異様な夢を見た登山者達だったが、歩みは止まらない。高度は8000m。ここから先は人類の生存限界領域【デスゾーン】。
 しかし、ここまで来たのだ。目指す10363mはあと少し……。

KP「ではこの先、「デスゾーン」突入にあたって2点ルールが追加されます」

【デスゾーンルール】
1:今までキャンプで発生していた1d3回復がこの先は無くなり、逆に1日ごとに耐久力が 1d3 ずつ減少する。(8,000 m地点でキャンプした場合は、辛うじて1だけ回復)
2:極高所では天候が不安定なため、天候決定ロールが -30%の修正を受ける。

 幸いにも、外は雪がちらつく程度の天候である。ケヴィンはホッと息をついて言った。

K2「これくらいなら進んでもいいだろう」
ゼッテェ「そうだな! リーダー!!!!」

 テントを片付け、登山家達はいよいよ生存限界領域へと挑む。薄い酸素は着実に体を蝕み、足も今までとは違って重たい。それでも彼らは、ひたすらに上を目指した。
 だがその時、ゼッテェの右足が凍った地面の上を滑った( 【ナビゲート】 (1D100<=75) > 87 > 失敗)。

ゼッテェ「おっとっと!!!!!!」
エーイチ「ゼッテェさん!!!???」
テッペン「!!?」

 ゼッテェは咄嗟に腹ばいになり、かろうじてその場に留まることができた( 【STR 筋力× 5】 (1D100<=85) > 19 > 成功)。右足は、ほぼ垂直の崖の上で揺れている。もしこのまま滑落していれば、大怪我は免れなかっただろう。

エーイチ「今大胸筋で止めてませんでした!!???」
コージー「おい大丈夫かよ?」
ゼッテェ「鍛えておいてよかったと心から思っている!!! コージーも心配ありがとう!!!」

 面と向かってお礼を言われて軽く悪態をつきながらも、コージーは先頭に立ってナビゲーションの準備を始める。そんな彼の肩を叩いたのは、エーイチだった。

エーイチ「コージー君、ちょっとナビゲート僕に代わってもらっていい?」
コージー「は? なんで?」
エーイチ「あそこ、いい感じの岩あるじゃん。そこから登山隊の写真を撮りたいと思って。もしよかったらだけど」
コージー「ふーん、大丈夫なのか? お前さっきやってたけど」
エーイチ「心配してくれるの? 優しい……」
コージー「うるせぇ」
ゼッテェ「心優しいな!!!! 素敵だぞ!!!」
エーイチ「ほら、ゼッテェさんもああ言ってる」
コージー「聞こえん」
エーイチ「聞こえなくなっちゃったかー。お願いできる?」
コージー「まー好きにすれば?」
エーイチ「ありがとう!」

 コージーに代わって立ち、エーイチは降雪の白銀に目を凝らす。全くの晴天ではないため、正確なナビゲーションとなると高度な技術が要求される。ここまでは運良くこなしてきたが、エーイチはコージーのルート設定に若干の不安定さがあるのに気づいていた(コージーのナビゲート技能値は45)(更に天候によるマイナス補正がかかるため、ここでコージーは35以下を出さねば成功できない)。
 といっても、エーイチ自身自分の番のナビゲーションを終わらせた疲労は残っているのだが。それでもどうにかごまかしつつ、安全なルートを導き出すことができた(CCB<=85-10-20 【ナビゲート】 (1D100<=55) > 13 > 成功)。

エーイチ「ありがとう、コージー君!!!! すごく!!!! いいよ!!!! ここからの写真( 【写真術】 (1D100<=70) > 16 > 成功)はどこに出しても一等賞間違いなしの傑作だ!!!!」
ゼッテェ「素晴らしい!!!!!! 君は最高だ!!!」
エーイチ「半分はコージー君のお陰だね!」
コージー「そりゃよかったな」
エーイチ「傑作だ……。まあテッペン君が映ってる時点で駄作になりようもないけど……」
ゼッテェ「データを楽しみにしている!!!!」
エーイチ(もらう気だ……。多分タダで……)
ゼッテェ「今回の旅のアルバムを作ろう!!!」
エーイチ「それはいいですね」

 しかし、次にケヴィンがナビゲーションを行おうとした時である。突然彼は激しく咳き込み、その場にしゃがみ込んだ。

K2「………ッ、ゴホッ、ゴホゴホッ、ゴボッ」
エーイチ「!!!!」

 雪と黒い岩肌の上に、ぱたぱたと赤色が散る。その赤は、彼の口元にも伝っていた。

テッペン「あ……」
ゼッテェ「どうした! リーダー!!!!」

 仲間が呼びかけるも、ケヴィンは答えない。答えられないのだ。止まぬ咳の間にする息はヒューヒューとか細く、意識すら朦朧としているようだ。医師である穂高が慌てて駆け寄り、彼を診る。

穂高「まずいわ……重度の高山病を発症している。呼吸もおかしい。肺気腫か、肺水腫か合併してるのかも。どうして、あなたがこんな……!」
ゼッテェ「なんてことだ!! どうしたらいい!?」

 ケヴィンの目は熱に浮かされているようだった。殆ど唸るように、彼は虚空に向かって呟く。

K2「……ああ……ダメ、か……。天罰、か、なぁ」
エーイチ「天罰?」
K2「ごほ……、コージー君……きみの言うとおりだ……。私は、第一次隊が失敗したと聞いたとき、”しめた”と思ってしまった……」
ゼッテェ「リーダー……」
K2「……バチが当たったんだ……許してくれ」
エーイチ「それで天罰だと思う神経してるなら、コージー君よりよっぽど真っ当ですよ!!!!」
コージー「おい」

 エーイチの言葉をケヴィンが聞いたかはわからない。ついに意識が途切れたケヴィンを支え、穂高は一同を見上げた。

穂高「……これ以上は命に係わるわ。私は撤退を提案します」

 彼女の決意は固かった。穂高はケヴィンを連れて、7,000m の地点に残しているキャンプ地まで引き返すという。命に代えられるものはない。当然賛同した残る登山家達だったが、エーイチは逆に提案し返した。

エーイチ「ただし、我々だけは別行動を取れませんか?」
穂高「別行動?」
エーイチ「はい。多分リーダー、少し回復したらまた山を登るとか言い出すでしょ」
ゼッテェ「そうだな! リーダーが回復したとしても、再度これ以上の高さまで登らせるのは危険だと判断する!!」
穂高「この症状は山から降ろさないと完全な治癒は無理。どのみち彼はもう動けないわよ」
エーイチ「だけど、僕らは動ける」
テッペン「はい。まだ山頂ではありません」
ゼッテェ「私はもちろん、親友と一緒にでないと山からは下りない!!!」
エーイチ「このとおりです。K2さんは適切な治療を受けるべきだと思うけど、僕らはそうできない。登らなければならないんです、穂高さん」
穂高「……そう」

 穂高は、諦めたようにため息をついた。

穂高「……無茶をすることは推奨なんてできない。けど、どうせ止めても止まらないんでしょ」
エーイチ「無茶とかじゃないですからね」
穂高「ゼッテェさん、一つ言うわよ。貴方の親友が生きてる保証は、限りなくゼロよ。……でも、貴方は生きてる。ちゃんと、降りてきなさい」
ゼッテェ「限りなくゼロでも、ゼロ確定ではない!!!! 忠告ありがとう!!!! 必ずみんな生きて山を下りると誓おう!!!!!!」
穂高「……わかった。こっちは、K2の応急手当をする。待ってられる時間の猶予はあまりない。天候が落ち着いて、K2の体調が小康状態になり次第、私は彼を担ぎ下ろすわ」
エーイチ「わかった。お願いします。……コージー君」
コージー「あー?」

 エーイチの視線がコージーに向けられる。かと思うと、彼はパンと両手を合わせて頭を下げた。

エーイチ「お願い! 本当に申し訳ないんだけど、君もK2さんについていてもらえない!?」
コージー「え、なんでだよ」
エーイチ「(これ以上はコージー君のナビゲーション力では危険だから、とは言えないな……)いや、やっぱ穂高さんだけじゃ危険だから……(でもなぁ、コージー君を引き止めたゼッテェさんも黙ってないだろうし……)」

 しかし、エーイチがゼッテェからの反対を覚悟した時である。

ゼッテェ「エーイチくんの言う通りだ!! リーダーの為にはコージーくんの力が必要だ!!!」
エーイチ「はぁ!!!???????」


描いた人・てらさん

 ゼッテェの大声が飛んできた。彼は、コージーの下山にノリノリ大賛成だった。

エーイチ「そこまで手のひら返せる!!??? つか今どうやってゼッテェさん説得しようかって考えてたのに!!!!」
コージー「全員で登るとか言ってなかったか? お前」
ゼッテェ「緊急事態だ!!!!!!!!」
コージー「都合のいいことばっかり言ってるな」
エーイチ「ほんとだよ!」

 本当である。

コージー「じゃあお前が降りればいいじゃん? なんなの?」
ゼッテェ「私は行かなければならないので!!! すまない!!!!!!」
エーイチ「……見た? この清々しさ。太陽に照らされると人には何ができる? そう、影ができるね。そういうことだよ」
コージー「俺にはわからん」
エーイチ「でもねぇ、マジな話、僕もコージー君にはここで下りてもらいたいと思ってるよ」

 やべぇ太陽はさておき、エーイチはコージーに向き直った。

エーイチ「本当はあの時も、そう言おうと思ったんだ。下りて、みんなに言ってほしいって。こんな得体のしれない場所に登るんじゃない。調べようとも思うなって。全員は止まらないかもしれない。でも、何人かは君の言うことを聞いて思いとどまってくれるかもしれない。登頂よりも命を優先できることをちゃんと恥と思わない君だからこそ、それをお願いしたいと思ってた」
コージー「……」
エーイチ「それに、もし僕たちは帰ってこられなくても、ここまできてくれた君ならしっかり帰れるだろうしね」
コージー「随分と弱気なこと言ってんだな」

 コージーは、苦々しい顔でそっぽを向く。けれど、片手を振って吐き捨てた。

コージー「まーいいさ、7000で待っててやるよ」
エーイチ「!!!!!!!!!」
コージー「せいぜいちゃんと降りて来いよ」
エーイチ「!!!!!!!!!!!!!!!! わしゃわしゃわしゃわしゃ」
コージー「それはやめろ!!!」
ゼッテェ「あとで絶対に会おうな!!!!!!」わしゃわしゃ
コージー「お前は本当にやめろ!」
エーイチ「太陽にとって空気は読むものじゃないから。燃やすものだから」
ゼッテェ「無事に降りたらコージーくんと飲みに行くんだ!!!!」
コージー「こわ……」

 太陽に常人の理屈が通用すると思ってはいけない。話がまとまったところで、穂高が三人に切り出した。

穂高「じゃあ、ここから先は無線で状況報告を取りあいましょう。いい? これ以上登れないと思ったらちゃんと降りてくるのよ。すでにデスゾーン、いつ死んでもおかしくない場所なんだから。」
テッペン「はい」
ゼッテェ「頑張ってくるよ!!!!」
エーイチ「テッペン君がいる限り、僕は死なないんで」

 こうしてテッペン、エーイチ、ゼッテェは再び登頂を目指すことになった。

KP「しかし、まだ終わりではありません。K2の分のナビゲートロールが必要です」

ゼッテェ「私がいこう!!!!!」
エーイチ「頼みます」
テッペン(ぺこっと頭を下げる)

 最後のナビゲーションもゼッテェが危なげなくこなし(CCB<=85-30 【ナビゲート】 (1D100<=55) > 5 > 決定的成功/スペシャル)、彼らは9,000 m地点に到達した。しかし、デスゾーンにおいて安全地帯など無きに等しい。疲れ切った彼らの心身は、薄い酸素と極寒に侵食されていた。

【デスゾーンペナルティ:耐久力-1D3】
テッペン1d3 (1D3) > 1(HP : 25 → 24)
エーイチ1d3 (1D3) > 1(HP : 22 → 21)
ゼッテェ1D3 (1D3) > 2( HP : 15 → 13)

エーイチ「なかなか休んだ気にならないなぁ」
ゼッテェ「なかなか厳しい感じになってきたな!」

KP「君達は、9000mへ到達する。エヴェレストを越えた。君達は今間違いなく、人類最高到達点を越えた先へ、自らの脚で至っている」
KP「高度計は9000mを差している。キャンプ地へ到達した」
KP「覚えているだろうか、狂気山脈へ挑むものを最後に待ち受ける難関を」 
KP「“9,000 m地点に、高い登攀技術を要求される岩壁「大黒壁」(グレートブラックウォール)が存在する。”という言葉を」

畏れるがいい、人間よ。
挑むがいい、旅人よ。
KP薄暗闇に包まれながら、すでに視界の端を圧迫する
天をつんざく黒い垂直の壁は、悠々と皆さんを見下ろしている。

 しかし、三人の登山家に撤退という選択肢は最早ないのだ。テントを立てる途中、ふとエーイチとゼッテェはあるものを発見した(【目星】成功)(テッペンは山見てニコニコしていた)。

 それは、刃がボロボロになったアイスアックスだった。

ゼッテェ「これは……!!!!」
エーイチ「……人の痕跡ですね。ここまで来た人がいたんだ」

 ゼッテェは、いてもたってもいられず立ち上がった。

ゼッテェ「もしかすると、第一次登山隊がここまできているのかもしれない!!! 探索しよう!!」
エーイチ「はい」
ゼッテェ「ありがとう!!!」
ゼッテェ「テッペンくんも一緒にいかないか!?」
テッペン「えっ。はい」
エーイチ「やったぁ」
ゼッテェ「ありがとう!!! みんなで一緒にいこう!」

 三人で周辺を調べる。さほど時間もかからず、事態は進展した。
 ゼッテェは、風よけができそうな岩の陰に、一人の死体が転がっているのを発見した。言うまでもなく、その死体は登山家の服装をしていた。だが凍った衣服の間から覗く皮膚や肉は半ば溶けかけており、一部分の骨が露出している。
 凍死ではない。洞窟ほどの死体ほどではないが、それに似ている。三人は直感的に理解した。
 死体は、足を負傷していた。けれどこの程度なら、適切な処置さえ行えば歩いて下りることができただろう。なぜ、この死体はそうしなかったのか。それはまだわからない。
 ゼッテェは、黙って目を見開いていた。まばたきも忘れた目で、死体を見つめていた。

ゼッテェ「……」
エーイチ「ゼッテェさん……この方は」
ゼッテェ「私の親友だ……」

 横にはザックが落ちていた。エーイチがその中を漁ってみると、残っていた燃料や食糧のほかに、手記があるのがわかった。

ゼッテェ「……」
エーイチ「……ゼッテェさん、手記を見つけました。読んでみませんか?」
ゼッテェ「……読もう」

【手記の内容】
第一次登山隊は、山頂を踏むことなく壊滅した。
道中、未知の生物と遭遇し、襲われ、皆狂気に侵されて死んだ。
最後に残った俺とパートナーの2人でなんとか登頂を目指すも、大黒壁を登りきることができず、落下。
俺は足を負傷し、パートナーは背骨を強く打ち付け行動不能となった。
後に続く者のために記す。
この先、頂上直下に、“大黒壁”の垂直登攀が待ち構えている。
“大黒壁”は黒い岩肌と氷壁が、途切れ途切れに表れるミックス帯だ。
ここからが要点だ。
“大黒壁”の登攀の際に、岩肌を傷つけてはならない。
岩肌を傷つけると、粘性の高い石油のような液体が染み出してくる。
この粘液は金属を腐食し、肌を溶かすため、登攀が極めて困難となる。
当然、ハーケン(杭)は打込めないし、アイゼンを履いて岩を踏むこともできない。
俺はこれに気づかず、アイゼンとピッケル、そして指のことごとくをダメにした。
この壁を登るには、氷がへばりついている場所を慎重に選びながら進むか、ピッケルとアイゼンを捨て、フリークライミングで進むしかないだろう。
 
俺は足を引きずって降りることもできたはずだ。
なのに、何故かこの場所から動くことが出来ない。
山頂から目が離せないのだ。
このままでは俺も仲間も、ここで朽ち果ててしまう。
今の満身創痍の状態で、登頂は無理だ。
ならば、せめて動ける俺だけでも降りなければ。
しかし、なぜだ。俺はどうしても、ここから降りることができない。
 
ゼッテェよ。きっと俺を見つけ、あの山の頂を目指す友よ。
ああ、君が今すぐにあの山を諦めて引き返してくれればどれだけよいことか。
だが友よ、俺は知っている。
最高の登山家である君がそんな選択をとりようがないことを。
だから、覚悟して向かってくれ。そして願わくば、君がこの山を制覇してくれんことを。

 手記はここで終わっていた。エーイチが固唾を呑んで見守るなか、ゼッテェは大きく深呼吸をした。
 顔を上げる。その目には、光が戻っていた。

ゼッテェ「これより私の目的は変わった。親友の意志を継ぎ、必ずこの山を踏破する」
エーイチ「ゼッテェさん……!」
ゼッテェ「私自身も、君たちも絶対に死なない。絶対に生きて踏破するんだ」
エーイチ「……わかりました。僕も微力ながら全力を尽くさせていただきます」
ゼッテェ「ありがとう」
テッペン「山頂は近いです 行きましょう」
ゼッテェ「絶対にだ!!!!!!!!!(超大声)」
エーイチ「ええ、全員で登頂しましょう!!!!!」

 一同は決意を新たにした。テッペンは一人服の上から犬笛を撫でたが、それに気づいた者は誰もいなかった。

エーイチ「では、ここまでの情報を無線で穂高さんに伝えときますね」
ゼッテェ「頼む!!!」
テッペン「お願いします」

 そしてその晩は、皆早く眠りについた。口数が少なかったのは、決して薄い酸素のせいだけではなかっただろう。


次回に続く。

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