【上田】滞在の記録 by 西村歩 _ 生きることとアートの呼吸〜Breathe New Life

NAGANO ORGANIC AIR上田では、「生きることとアートの呼吸~Breathe New life~」として、滞在型研修プログラムが行われています。当初は県内外から10人の参加者が集まる予定でしたが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い参加者全員が一度に滞在するのではなく、数人ずつが分散して滞在する形となりました。私は10/11~14まで事業団職員の取材部員として参加させていただきました。

4日間の中で、北アルプス国際芸術祭や安曇野ちひろ美術館、豊科近代美術館、長野県立美術館、無言館、上田映劇、犀の角、NOA小諸の受け入れ先であるブルーベリーガーデン黒岩、NOA軽井沢の受け入れ先である信濃追分文化磁場油やを視察しました。

ここでは、県内各地を巡る中でも滞在時間が長く印象的だった大町市と上田市についてまとめたいと思います。

大町市では北アルプス国際芸術祭を巡り、北アルプス国際芸術祭事務局の牛越さんと遠藤さんからお話を伺いました。
大町市では、北アルプス国際芸術祭と信濃大町あさひAIRというアーティスト・イン・レジデンス事業に取り組まれています。遠藤さんや牛越さんは、前回と今回の芸術祭を比較して、来場者数や経済効果などの目に見える変化は少しずつ起きているが、「自分の町に芸術祭がある」という誇りを市民の方が持つにはもう少し時間がかかると話してくださいました。芸術祭が市民の誇りになるくらい受け入れられるには、その土台としての信濃大町あさひAIRの取り組みが欠かせないものだとのお話しもありました。美術館などのなかった大町市の中に、アートという新しい価値観が入っていくことは簡単な事ではないのだと感じると同時に、大町市とそこで暮らす人々がどう変化していくのかこれからがとても楽しみになりました。また、目に見える数字だけではない、市民にとっての良いアーティスト・イン・レジデンスとは何なのかを考えるきっかけになりました。

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上田市では、主に犀の角と上田映劇、トラゥムライゼでお話を伺いました。
犀の角では、「うえだイロイロ倶楽部」を見学させていただきました。「うえだイロイロ倶楽部」は、子どもや若者を対象とした地域における民間のクラブ活動です。イロイロ倶楽部には先生と呼ばれる人はいません。決まったカリキュラムや到達点もなく、参加している子どもたちが自分でやりたいことを見つけて実践できる場になっています。学校以外で年代や障害の有無などに関わらず同じ地域に暮らす人々が集まり、自分の意思で活動できる場所はとても貴重で大切なものだと感じました。また、犀の角ではコロナ禍で「のきした」という取り組みも行っています。「のきした」とは、「雨風しのげる場(のき)」を街中に作ったり、再発見したりして、暮らしの中に「のき」を広げていこうという取り組みです。
また、上田映劇で、直井恵さんから「うえだこどもシネマクラブ」という取り組みについて教えていただきました。この取り組みは、学校に行きづらい、行くのをやめてしまった子どもたちが、学校の代わりに映画館に通って、映画をみたりお手伝いをしたりするというものです。上田映劇に行けば学校に行った事になる学校もあると伺いました。映画館が子どもの教育や治療の場になるというお話しがとても印象的で、映画館など、文化施設の場の可能性を感じました。
上田市は、「うえだイロイロ俱楽部」や「のきした」、「うえだこどもシネマクラブ」を通して、様々な人の「居場所づくり」に取り組んでいる印象を受けています。犀の角の荒井洋文さんが「変な人でも住みやすい街に」というお話しをしてくださいましたが、年齢や職業、障害の有無に関わらず、誰もが自分らしく暮らすための活動が多いように感じました。

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今回は大町市と上田市での滞在を通して感じたことをまとめましたが、今回視察させていただいたほかの地域の取り組みはどれも魅力的でした。安曇野市の美術館や博物館が協力して行っているスクールプログラムのお話しや、ブルーベリーガーデン黒岩が行くたびに変化しているというお話しも印象に残っています。中でも信濃追分文化磁場油やの、アーティスト・イン・レジデンスを始めたきっかけが一つの版画プレス機だったというお話しは衝撃的でした。

今回の滞在を通して長野県各地でアートも用いてまちづくりや居場所づくりに取り組んでいる方々に出会い、なぜそこでアートが用いられるのか、「アートの持つ力」とはどのようなものなのかが気になっています。また、今、長野県の各地がアートで動き出している様子を肌で感じ、各地の取り組みが繋がっていったその先には一体どんな暮らしがあるのか、とても興味が湧きました。そして、その流れに置いて行かれないよう私も頑張ろうと刺激をたくさんいただいた4日間でした。
(文・「信州art_walk_repo」取材部 西村歩)

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