温泉の「泉質」を擬人化して解釈してみよう【おんせんし】
こんにちは、永井千晴と申します。
温泉の泉質から生まれたアイドル「おんせんし」のプロデューサーをしています。先日ようやく、10種類の泉質すべてのキャラクターデザインとCVを発表しました。
国内外500湯以上に浸かってきた、温泉好きプロデューサーの経験から生まれたおんせんし。私が所属するCHOCOLATEという会社で企画製作しています。企画・ストーリーは夏生さえりさん、キャラクターデザインはやじまりさんが担当。音楽や宣伝にいたるまで、すべてCHOCOLATEのプロジェクトメンバーとともに作り上げています(BIG LOVE!)
おんせんしはいわゆる「擬人化」と呼ばれるカテゴリのコンテンツになりますが、そもそも温泉の泉質についての情報が少なすぎる、はず。おんせんしを見知って興味を持っていただいた方に、少しでも楽しみ方を伝えられたらと思っています。
本記事では、おんせんしの由来である「泉質」についてご紹介していきます。情報解禁時のエントリと合わせてお読みいただけると、よりご理解いただけるのではないかと思います。
温泉の泉質は全部で10種類ありまして…
泉質は、湯の中にどの成分量がどれだけ入っているかによって定められます。超ざっくり言うと、例えば「塩」が多く含まれていれば「塩化物泉」で、「鉄」が多く含まれていれば「含鉄泉」です。
それぞれの泉質にいわゆる「効能」(温泉の世界では「適応症」と呼びます)があり、
浴用=浸かって得られる効果
飲用=飲んで得られる効果
が決められています。
このあたりの情報は調べて出てくると思うのですが、「高血圧に効く」「高コレステロール血症に効く」…という解釈だけでキャラクターを描くのは、とっても難しいです。😂
おんせんしでは、適応症ももちろん参考にしていますが、
温泉好きプロデューサーである私が、泉質それぞれに浸かったときに感じる「におい」「浴感」「湯ざわり」「湯の色」などの五感を頼りにしたり、どの泉質がどこで出会いやすいか地理の経験則を入れ込んだりしました。
五感と経験則はインターネットで調べても出てきづらい情報ですし、そもそも調べ方もわかりづらいものになってしまっているかと推測します。刀剣には刀剣の、艦隊には艦隊のストーリーがありますが、泉質のストーリーは調べても出てこないと思いますので…。
だから、おんせんしに興味を持ってくださった方には、詳しく泉質についてお伝えできればと思いました。温泉に浸かったときに、「高血圧に効いてる」「高コレステロール血症に効いてる」と実感できることなんてなくて、「この肌触りだからこの解釈」「この湯の色だからこのキャラデザ」と、五感で泉質を楽しんでもらえたら嬉しいです。
ちなみに余談ですが、私は2017年に下記のエントリで「泉質にこだわらない温泉選びをしてもらえたらいいなあ」と書いています。いまも同じ気持ちを持っていて、その温泉がいい温泉かどうかは泉質では決まりません。それでも、泉質は温泉の個性をはかる最初のものさしなので、知ってもらえたら温泉を知る大きなきっかけになると信じています。
(20代前半に書いたエントリなので、拙さや粗さには目をつむっていただけると嬉しいです!)
シオが生まれた由来の泉質「塩化物泉」
塩化物泉は、その名の通り「塩」を含んだ泉質です。海水の影響で海の近くに湧いていることが多く、だいたい海沿いの温泉地の泉質には塩化物泉が含まれています。
山に湧く温泉と比較すると、海の温泉は個性がシンプルです。その分オーシャンビューなどの眺めのいい湯船が多く、ドライブや散歩が気持ちよく、とにかく海鮮が美味しくてうれしい。海の温泉の楽しみ方は、山よりもアクティブだと思います。
さらに、塩化物泉は「保温効果を高める」という圧倒的にわかりやすい特徴を持っています。濃厚な塩化物泉に浸かればもう、ポクポクというか、汗でダラッダラになります。この泉質は、本当に温まるししょっぱい。日本で一番塩分濃度が高いと言われる有馬温泉(兵庫)をぜひ堪能いただきたいです。
そして、単純温泉と同じぐらい出会いやすいのに、塩化物泉はいろんな泉質と超仲良しです。あらゆる泉質と簡単に組み合わさります。
そんな特徴を振り返って、シオが生まれました。ほとんどの温泉地で沸かしてくれているので、おんせんしにとっても中心的な存在です。
リュウが生まれた由来の泉質「硫酸塩泉」
硫酸塩泉は「硫酸イオン」を多く含んだ泉質です。硫酸というと少し危険なのではと感じるかもしれませんが、澄んだ美しい湯で、肌触りも少しキチキチとしていて、出汁のようなにおいがするものもあります。少しわかりづらいですが随所に個性が出ていて、硫酸塩泉を見極められるようになると立派な温泉マニアなのではと思います。
硫酸塩泉は肌の弾力を復活させ、潤いを与える効果が期待できると言われており、「アンチエイジングの湯」と称されることも。湯上がりのしっとり感は思わず笑みがこぼれてしまいます。
海にも山にも街にも湧いている比較的ポピュラーな泉質ですが、山の恵みをうんと含んだ硫酸塩泉ほど、美しいものはありません。山の温泉地に行くと、白濁した硫黄泉や酸性泉も魅力的ですが、やっぱり一番の贅沢は無色透明の新鮮な硫酸塩泉だ…と感じることも。特に四万温泉(群馬)や旭岳温泉(北海道)の湯は忘れられないですね。
そんな素敵な特徴から、リュウは生まれました。おんせんしのデビュー曲「おいで☆ATAMI」では、シオ&リュウのデュエットで登場しています。
ラドンが生まれた由来の泉質「放射能泉」
放射能泉は「ラドン」を多く含んだ泉質です。ラジウム温泉とも呼ばれており、微量の放射能が湯の中に溶け込まれています。
からだに悪影響を及ぼすのでは…と思われがちですが、むしろ逆。放射能泉は免疫効果や自然治癒力を高めると言われており、通風やリウマチにも効くそうです(「ホルミシス効果」と言います)。
多くの放射能泉は無色透明でにおいもなく、見た目や湯ざわりで「あ、放射能泉だ!」とわかることはほぼありません。温泉に浸かり、湯気を吸い込み、飲用し、数日かけてようやく効果効能を実感できる…かも。その信じるか信じないかはあなた次第な特徴が、とっても魅力的です。
そんな魔法のような泉質から、ラドンは生まれました。ちなみに、高濃度のラドンを含む世界屈指の放射能泉は三朝温泉(鳥取)です。公式サイトには「三朝温泉地区の住民のガンによる死亡率は全国平均の約1/2である」…との表記が。すごい、すごすぎるぞ放射能泉。
タンソが生まれた由来の泉質「二酸化炭素泉」
二酸化炭素泉はそのまま、二酸化炭素を多く含んだ泉質です。小学校の理科の授業で、炭酸ジュースの泡は二酸化炭素だと習ったように、温泉の中に炭酸(二酸化炭素)が溶け込んでいます。
スーパー銭湯で「人工炭酸泉」を見かけたことはないでしょうか。ちょっとぬるくて、湯船がコンパクトで、長くゆっくり浸かっていると肌に泡がまとわりつくやつ。あれを天然で浸かれるのが二酸化炭素泉です。
炭酸ジュースと同じように、温度が高いと炭酸が抜けやすくなってしまいます。炭酸泉はぬるいほうが泡をしっかり感じられるので、温度がとっても重要です。
おうちの一番風呂だと肌に泡がつくように、新鮮な温泉は空気をたくさん含んでいるがゆえに泡を感じることも多々あります。二酸化炭素泉という冠まで持てなくても、天然の泡はあちこちで出会えるものです。
二酸化炭素泉から生まれたタンソは、そんな特徴から解釈を得ました。とにかくものすごいレアな泉質でして、「二酸化炭素泉」と冠を持てる温泉は数えるほどしかありません。長湯温泉(大分)がおそらく日本で一番有名な炭酸泉だと思います。あと、個人的にはドイツのバーデンバーデンで出会った炭酸泉もぬるくてアワアワで素晴らしかったです。
テツが生まれた由来の泉質「含鉄泉」
含鉄泉ももうそのまま、鉄を多く含んだ泉質です。見分けがかなり簡単で、まずはにおいがシンプルに鉄くさい。10円玉のような、工場のような、インダストリアルなにおいがします。強烈な鉄臭をもつ温泉もあれば、ほのかに香る程度の温泉もありますが、何はともあれストレートに「鉄」を感じます。我が強いといいますか、浸かったらすぐわかるといいますか。
そして、温泉が空気に触れて酸化すると茶褐色になります。生まれたての含鉄泉には色がついていませんが、世に放たれ、時間が経過することで色がついていくのです。温泉の鮮度を一番気にする温泉好きとしては、色のついていない含鉄泉のほうが嬉しかったりもします。
鉄を含んでいるがゆえに貧血や更年期障害、月経障害に効くと言われ、「婦人の湯」と呼ばれています。血をつくる作用も促されるみたいですね。
そんな含鉄泉から、テツが生まれたのでした。日本で一番鉄イオンが多く含まれている温泉は、私が大好きな塚原温泉(大分)。鉄イオンの量は温泉法基準の40倍とのこと。本当に超強烈なので、ぜひ一度は浸かってみてほしいですね…😂
ジュウソウが生まれた由来の泉質「炭酸水素塩泉」
炭酸水素塩泉は「炭酸水素イオン」を多く含んだもので、前述した塩化物泉・硫酸塩泉と並んで塩類泉と呼ばれるものです。ざっくり、塩分系だと思っていただいて大丈夫です。
なぜ「ジュウソウ」という名前になっているかというと、古い泉質表記だと「重曹泉」と書かれるものだからです。掃除などで使う重曹が含まれているんですね。炭酸水素イオンがなかなかピンときづらいので、重曹の要素を名前に採用にしました。
ちなみに正確には「炭酸水素塩泉の中に重曹泉と呼ばれる種類がある」という理解が正しくて、じつは他にも種類をもっています。ナトリウムと結びついているのが重曹泉で、カルシウムと結びついているのが重炭酸土類泉なのです(むずかしい)。
重曹成分はお肌の古い角質を取り除くと言われていて、炭酸水素塩泉は典型的な「美肌の湯」として知られています。さらに、湯上がりはサッパリ感を得られることから「清涼の湯」とも。さらにさらに、飲むと胃腸に効くことから、飲用できる温泉地では積極的に飲むこともおすすめできます。
ほかの泉質でも見られますが、濃厚な炭酸水素塩泉では、析出物(せきしゅつぶつ)と呼ばれる、変形・変色した鍾乳石のようなものに出会いやすいように思います。見た目ではわかりづらい温泉ですが、思いがけず力強さを感じる泉質でもあります。
ジュウソウは、そんな泉質を由来にして生まれました。山にも海にも街にも湧いている、比較的出会いやすい泉質で、つるとろ湯ざわりなパターンも多くあります。私が大好きなのは妙見温泉(鹿児島)!妙見の薄く緑に濁った色湯は、ジュウソウっぽさも感じますね。
ガンヨウが生まれた由来の泉質「含よう素泉」
含よう素泉はその名の通り、「よう素」を含んだ泉質です。うがい薬によく使われる成分で、殺菌効果が高いと言われています。薬のようなにおいがするだけでなく、うがい薬の色味のごとく茶色いカラーが特徴的なので、泉質の中でも個性がわかりやすいほうだと思います。
含よう素泉の定義は2014年に新しく生まれたため、実は10種類の中では一番歴史の浅い泉質。それまでは塩化物泉と内包されてカウントされていたようで、いまも結びつきが強く、だいたい塩化物泉とセットで観測されています。
そしてめちゃくちゃレア。私も本当に数えるほどしか遭遇できていません。ただ、なぜか東京をはじめとする関東圏で出会える機会が多いのも特徴です。前野原温泉(東京・板橋)や、大手町温泉(東京・大手町)も、含よう素&塩化物泉。さらに、白子温泉(千葉)は温泉地全体でよう素の産出量が高いそうです。
ガンヨウは、そんな泉質から生まれました。私はとにかく豊富温泉(北海道)の含よう素&塩化物泉が大好き。稚内空港から南に1時間ほど車を走らせたところにある小さな温泉地なのですが、本当にすばらしい湯が湧いているので、ぜひぜひ行ってみてほしいです。
サンが生まれた由来の泉質「酸性泉」
温泉を測る一要素として、「アルカリ性」「中性」「酸性」があります。理科の授業で習ったリトマス紙でアルカリ性か酸性かを調べるアレですね。アルカリ性・酸性の濃度を示す「水素イオン」が多く含まれている温泉が、酸性泉と呼ばれています。
pH(ペーハー)が高ければアルカリ性、低ければ酸性で、温泉分析書には必ず数値が記載されています。pHが高いほど角質を溶かす作用が期待できることから、「美肌の湯」と呼ばれ、10-11ぐらいは”強アルカリ泉”と表現することも。
多くの温泉はアルカリ性または中性であるため、酸性というだけで少し特別です。ピリリとした浴感と酸っぱいにおいは、強烈に”酸”を感じます。実際に舐めるとめちゃくちゃ酸っぱいですよ(よいこはまねしないでね)。殺菌効果が高く、皮膚疾患に効くと言われています。アトピーに悩まれている方にもおすすめだそう。
酸性泉のサンは、そんな特徴から生まれました。多くの場合硫黄泉と組み合わさり、白く濁った美しい山の温泉、という印象を私は持っています。純な酸性泉としては、岳温泉(福島)が湯ざわりやわらかで絶品です。
イオウが生まれた由来の泉質「硫黄泉」
硫黄泉は、その名の通り「硫黄」を多く含んだ泉質です。「硫黄型」と「硫化水素型」があり、たまごの腐ったようなにおいは「硫化水素型」に由来するもの。あのにおいが得意な方もいれば苦手な方もいますが、独特なあのたまご臭は多くの観光客を「温泉に来たぞ〜!」と思わせる力を持っているのではないでしょうか。
野沢温泉(長野)や十津川温泉(奈良)のように無色透明な硫黄泉もありますが、山間に湧いている白く濁った硫黄泉はもはや、王の風格を感じます。温泉の王者であり、優勝であり、完璧。スペシャルで感動的です。あの白く濁った湯に浸かったときの、うっとりとした気持ちといったら…。湯口や湯船に薄黄色に固まった析出物や、湯船に舞う湯の花に出会うと、めちゃくちゃハッピーな気持ちになります。
ちなみに、硫黄の濃厚な温泉で換気がされていない場合は中毒を引き起こしてしまう確率が高く、重大な事故に繋がった事例もあります。なんと、濃度が高いとガスマスクの使用が必要な場所も。危険を承知で、硫化水素ガスが立ち込める山奥の野天風呂に、ガスマスクをつけて訪れる温泉ファンもいるほどです(詳しくは漫画「野湯ガール」をチェック)。
そんな泉質から、イオウは生まれました。全国各地、比較的よく出会いやすい泉質だと思います。月岡温泉(新潟)は硫化水素イオン含有量が全国1位なので、硫黄泉の聖地ですね。
ジュンが生まれた由来の泉質「単純温泉」
最後に紹介する単純温泉は、含有成分が一定量に達していない泉質です。超簡単に表現すると、単純温泉に塩が加われば塩化物泉になるし、鉄が加われば含鉄泉になります。つまり、なにかが「足りない」状態だから、単純温泉といえます。
そのうえで、単純温泉はひとつの源泉において他の泉質と組み合わさることはなく、基本ソロです。(源泉がたくさん湧く大きな温泉地では、単純温泉と違う泉質が同じエリアに湧いている場合も多くあります)
単純温泉はやわらかく優しい湯ざわりで、老若男女に愛される刺激の少ない泉質だと思われていますが、さまざまな横顔を持っています。白湯のようなときもあれば、少しずつさまざまな成分を含んで複雑さをもっていることも。無色透明で個性がないと思われているけれど、「まさかこのにおいと肌触りで単純温泉!?」と驚くことも。
そういった単純温泉の特徴から、ジュンが生まれました。名湯と呼ばれる温泉地で古くから愛されているパターンも多く、下呂温泉(岐阜)や道後温泉(愛媛)は単純温泉の独壇場です。いつまでも浸かっていたくなるやわらかさで、私はやっぱり定期的に浸かりに行きたくなってしまいます。
おんせんしが取り扱う泉質について
先述の通り、泉質の定義は決められています。古い泉質名も掘り起こすともっと異なる泉質名がありますが、ひとまずは現状の10種類の泉質の中で「おんせんし」を描いています。
アルカリ性とか、ナトリウム・カルシウム・マグネシウムとか、強とか弱とか、いろいろあるんだけど、ね…!そこはまた追々、と思っています。
ぜひおんせんしというアイドルたちと、泉質の解釈を楽しんでいただければ嬉しいです。この記事が、おんせんしのテーマ曲「沸かせ!For you」を楽しむ助けになりますように。楽曲とMVの配信に向けて、もう少しだけお待ちいただけると嬉しいです。
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