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日テレ新ドラマ「ウチの娘は、彼氏が出来ない!!」に対する批判について

このドラマの批判として多いのは「なぜ"恋愛"しないといけない前提なのか」「オタク像が古い」など。特にオタク像が古いについては、「オタクでも普通に恋愛している」というもの。もちろんその指摘も重要だ。

僕自身もこのドラマの脚本/演出は"オタク"を舐めていると感じる。最も批判されるべきポイントは、このドラマの"オタク"の生活が全く楽しそうじゃないことにある。つまり、"オタク"というレッテルを貼ってるが、その本質が描かれていない。オタクというのは「自分が心の底から楽しめるものを見つけて、(恋愛せずとも)すでに人生が豊かな人たち」だと思う。結婚しているが「趣味は?」と聞かれて困る自分からすると、"オタク"になれただけでその人は十分人生が豊かだと感じる。

ちなみに、結末を安易に予想すると、①恋愛は人生を豊かにする、もしくは②恋愛がなくても人生は豊かだ、のどちらかか(北川悦吏子脚本なので①が濃厚)。
そして、結末が①になるのは最悪だが、それが②でもそれ以外でも、上記みたいな"オタク"の描き方(というか認識)しかできないなら、"オタク"をテーマにする資格はない。「タイトル/あらすじ/予告だけで判断してはいけない」「今後のストーリー展開や結末を待たないとこのドラマの評価できない」と思っていたが、その必要はなさそう。このドラマについては「タイトル/あらすじ/予告」に全てが詰まっていた。

と、批評するだけでなく、以下では「物語の筋(おそらく、母親・娘それぞれが恋愛し、人生において大事なことに気づいていく)を残した上で、もう少しまともにするには何ができたのか」を考える。

1. オタクがすでに十分豊かな幸せを感じているシーンを描く
上でも記載しているが、多くの批判の根っこは「オタクがつまらなそう」な描き方にあると思う。なので、その人にとって生きづらいシーンはあるがそれを救ってくれるもののシーンを十分に入れる。それにより「恋愛が必須」ではなくあくまで「人生を豊かにしうる追加要素」といった見え方にする。

2.タイトルを変える
「彼氏ができない」はあまりにも娘世代を不快にさせるワードだ(とはいえこの時間帯なので主婦がターゲットだと思うが)。そして「できない」は「つくろうとしている」前提がないと成立しない。ただ、1話からはその要素がないので、ストーリー的にも相応しくない。
このドラマ自体が作家や映像作品をメタ的に描写している(主役の菅野美穂は明らかに脚本担当の北川悦吏子自身で、"自虐的に"結局ラブストーリーを求められ嫌気をさしている、Huluをいじるなど)。そのような自身のメディア環境をパロディにしているのであれば、テレビの外に脱出を図るという意味で「ウチの娘が、彼氏をつくってみた」が候補の1つ(この「〇〇してみた」をこのタイミングで使用するのは内心クソダサいと思ってます)。
もう1つはタイトルの視点を娘目線にする。「ウチの母が彼氏をつくれと、うっせえわ」(OP曲はAdo「うっせえわ」)。個人的にはこのタイトル名が好きです。ただ、主婦は嫌がりそう。

https://www.youtube.com/watch?v=Qp3b-RXtz4w

ここまで考えると、このドラマを好きになれないのは「現在の強者の価値観に乗っかってる」からだと改めて感じさせられる。単純に弱者(実は弱者ではないけど、制作陣が弱者だと思い込んでる)への目の向け方を変えるのではなく、大衆に迎合するドラマでしかない、っていう意識でのものづくり。もし、この制作陣の態度に乗っかって、大衆に迎合し(オタク=恋愛しないという潜入観で生きているような)オールドタイプをターゲットにあわせるなら「ウチの娘が、彼氏をつくってみた」がわかりやすくてちょうど笑える、といった感じになりそうですね。

結論から言うと、北川悦吏子脚本はそろそろ本気できつく、新しい価値観で生きていく必要があるこのタイミングで害悪でしかない、ってことです。


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