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安全な人間

 ビートルジュースは1988年に日本で公開された映画、監督はティム・バートン。
 この映画をわたしは観たことがないのに覚えているのは、幼少期にテレビでやっていたCMが印象的だったからだ。
 幼稚園の鉄棒のところで、わたしはビートルジュースのCMに出ていた、おばけみたいなメイクをした男の人の真似をしている。
 手を広げ、顔はちょっと笑っている。誰かに見せるとかでなく、男の人の真似をひとりで黙々とやっている。
 視線に気づく。ひとりの保育士さんがこちらを見ている。保育士さんは、真似をしているわたしの真似をして、ははっ、と笑った。
 小さい子どもの頃、大人はなぜわたしを見て笑うのだろう、と疑問だった。ばかにされているような気もしていた。
 大人になった今ならわかるんだけど、大人は子どもを見ると、自然と笑ってしまうことが多い。
 可愛いから、というのもあるし、自分が警戒されないため、安全な人間であると知らせるためでもある。
 近所の子どもに警戒されないように無理やり笑う。無理やりな笑顔だから逆に警戒されているかも。
 子どもがいても子どもと接するのが得意になるわけではない。


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