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全ての校歌がじっとしている

 風呂上がりに、娘が歌い出す。
 メロディーと歌詞の感じから、校歌かな、と思って訊いたら、やっぱりそうだった。
 それで、わたしは、自分の校歌ってどんなんだっけ、と思い出そうとしたところに、娘が、お母さんの校歌は? と訊かれると同時ぐらいに、歌い出していた。
 小学校の校歌だ。ゆったりと流れる川みたいなメロディー、歌詞もいい。小学校、中学校、高校、1番だけなら、全部歌えた。
 小学校の校歌は、桃色の川、中学校の校歌は、画用紙の緑色、高校の校歌は、白い山、という感じ。小学校の校歌が1番好き。
 校歌を覚えていた、その記憶は、どこにあったのだろう。娘に訊かれて、校歌校歌、と探しているとき、わたしは、どこをどう探していたのだろう。娘に訊かれなければ、校歌のことは考えていなかった。考えていなかったときの校歌は、どこにいたのか。
 校歌はだいたい、体育館のステージの左横に貼り出されていた。今も、そこで、全ての校歌がじっとしているのだろうか。

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