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【コラム】パンサラッサ〜メイダンの逃亡劇から見える芦毛の快速娘の面影〜


はじめに

上半期を締め括るグランプリ宝塚記念。今年は香港が海外馬の入国を制限をした影響もあり、近年でも最高レベルのメンバーが揃った。
各路線から多彩なメンバーが集まった同レースだが、その中でも一際注目を浴びそうなのがパンサラッサだ。昨年のオクトーバーS以降5戦4勝、うち重賞3勝で先日ドバイの地で念願のGI初制覇も飾った。
ただ同馬は戦績もさることながら、それ以上に注目されているのはその脚質だろう。上記のオクトーバーS以降は大逃げの形を確立し多くのファンを魅了している。
そのレース振りからツインターボやサイレンススズカに重ねられるパンサラッサ。しかし真に重ねるべきはもっと最近に活躍したとある芦毛の快速牝馬なのではないか?
今回はドバイターフのラップに焦点を当ててこの馬の適性について考察を行いたいと思う。



圧巻のパフォーマンス/重なる名牝の影


早速ドバイターフのラップを見ていく。ここではドバイレーシングクラブが公式に出しているトラックデータを引用する。

http://tnetwork.trakus.com/tnet/t_MeydanA.aspx?EventID=201581&Date=3/26/2022&Type=TBRED&Venue=14&DisplayType=1

【出展】DUBAI RACING CLUB

ちなみにドバイと日本では時計の計測方法が異なる。今回は日本式のタイムに合わせる為、上記のトラックデータから一律で1.3秒差し引いたラップを示す。

ドバイターフラップ推移(日本式に修正)

レース当時は後続が追いかけてきたことから溜め逃げをしたと思われていたが、数値で見ると日本でのパンサラッサのイメージ通りかなりのハイペースで飛ばしていることが分かる。
ドバイのトラックデータは表示が2F毎の為1000m通過タイムは記録されていないが、上記のデータから概算で57秒前後の通過である事が読み取れる。
これは高速決着となった18年,19年の安田記念に匹敵するペースであり、この流れで1800mを逃げ切ったのだから極めて優秀なパフォーマンスだったと考えて問題ないだろう。


ここで18年,19年安田記念というワードが登場した。ということで次にこの2レースと今年のドバイターフのラップを比較して行く。以下の表をご覧頂きたい。

ドバイターフ(日本式修正)と18,19年安田記念ラップ推移

これを見ると多少の差異はあれど、本質的なラップの質は非常に似通っていることが分かる。
メイダン1800mはワンターンで最初のコーナーまで及び最後の直線の距離が長いコース。さらに当時はレコードが記録される高速馬場ということで、上記3レースは近しい条件で施行されていた。
この点から2頭は性質の近いサラブレッドであるという仮説が立てられる。

余談だが、アエロリットは過去2度毎日王冠に出走しており、それぞれの走破タイムが1:44.5/1:44.6となっている。ドバイでのパンサラッサの走破タイムが日本式で大体1:44.47ということで時計的にはほぼ同水準。
これに関してはラップの中身が異なるので単なる偶然かもしれないが、上記の比較を行った後だと奇妙な一致に感じる。



宝塚記念における取捨


ここまででドバイターフの優秀さ及びアエロリットのパフォーマンスとの親和性について話してきた。
牡馬一線級とも互角以上に渡り合った名牝と同等レベルの内容を見せている点はファンにとっても陣営にとっても喜ばしいことだろうが、その特徴は今回のレースに限ればマイナスなのは明白だろう。
言うまでもなくアエロリットの適性距離は1800m以下。マイラーが走りやすい高速決着の秋天では3着に好走しているが、基本的に2000mを超えると一気にパフォーマンスを落とす。

このようなことを言うと「パンサラッサは内回りの2000mでも勝利しているからアエロリットより融通効くだろ」と反論されそうだが、果たして福島記念の内容で今回のメンバーに通用するだろうか?
確かに1000m57.3の超ハイペースを刻んで逃げ切ったのはお見事だが、裏を返せば後続が弱かった為にセーフティリードを生かして逃げ切れたという考え方も出来る。実際1:59.2という勝ち時計は取り立てて評価するほどのものでもないし、ラスト1Fが13.1まで減速している点も気掛かりだ。そしてこの減速幅を見る限り2200mへの延長にも当然不安は残る。

それを示すように暮れの有馬記念では果敢に逃げるも2.4秒差の13着大敗。この時のラップや負け方は奇しくもアエロリットのそれに酷似している。
もちろんタフ馬場+2500mの有馬記念と比較すれば高速馬場(想定)+2200mの今回の方が走りやすいのは間違いないが。
圧巻のパフォーマンスを見せたここ2戦についてもラスト1Fは中山記念が13.5、ドバイターフが13.09と大きく減速しているだけに延長して良いことは1つもないと考えるのが自然だろう。
それだけにこの厳しい条件を乗り越えたならば、その時は真の名馬の仲間入りを果たしたと言えるのではないか。この馬の今後を占う意味でも興味深い一戦となりそうだ。



まとめ


今回はパンサラッサの取捨についてドバイの内容を中心に話を進めてきた。
前章でも述べた通り今回の舞台で好走するには現状からもう一段上のパフォーマンスが求められる。それを期待するに見合うオッズなのか。当日までよく見極めたいところだ。

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