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金より心

昔々、あるところにカネとココロがいた。

カネは、たくさんの物に囲まれ、自由に好きなことをして楽しんで暮らしていた。

ココロは、たくさんの人に囲まれ、笑顔と楽しさと感動にあふれた生活をしていた。

カネとココロは、あの世へ旅立った。

カネは、あの世でも幸せになろうと思った。

あの世へ行くとき、この世で身につけたものはすべて捨てなければならなかった。

持っていくものは心だけ。

カネは、すっからかんになった。

もう便利な物は何もなく、自由も何もなかった。

ココロは、心を持っていけた。

この世での暮らしと同じように、いや、それ以上に心の素晴らしさを堪能できた。

カネはココロに言う。

……お前はいいよな。心が豊かで。俺は金があるときは幸せだったが、あの世では金が無いんだ。不自由で仕方ない。

ココロは優しく言った。

……金の楽しみなんてその程度なんだよ。心を楽しめばいい。心は無限だから。

カネは、心を楽しむようにした。

この世にいた頃より、幸せになった。




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