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髪についての一考察

人の本質はね、髪を触るとわかるんだ。同じなんだよ。

その人は言い切った。
数多の女性の髪に触れてきたベテランの男性美容師。
彼の話はいつも面白くて、
20代の私はいつも感心して聞き入ったものだった。

なんでも、
どんなに人当りが良くて柔らかな物腰の人でも、
硬くしっかりした髪をしている人は
やはりかたくてしっかりしているのだ、と。
しっかりしていて頑固で、芯の強いイメージ。

また、いくら強面で堅そうに見えたとしても、
柔らかくしなやかな髪の持ち主はやはり本質的に「やわらかい」と。
しなやかで優しく、でもどこか脆いイメージ。。。

なるほど、
この考察は美容師という職業の人にしかできないものだ。
普通の人は、とてもじゃないけど何百人ものサンプルを集められない。
ふむふむ・・・きっとこの考察はあながち間違っていないんだろうな
と思った私は
それ以来人の髪に触れるようになった。
もっと知りたいと思うと、髪を触ってみる。
そっと、だけど意識的に。

結局のところ、人の本質は言葉で定義できるような簡単なものではなく、
髪から手に伝わってくるものを言語化するのは不可能だ。
でも確かにその「感じ」は、
その人そのものとして私の中にインプットされる。
確かなイメージを伴って。

そして、かたくてもやわらかくても
髪がその人の持つ個性そのものだとしたら、
すべての髪は紛れもなく美しいのだ。


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