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世間に転がる意味不明:公共交通機関の問題と市場原理(私企業は慈善団体ではない。金剛バス問題を考える)

■地方交通機関の維持の困難性

全線廃止と云うことで大阪の金剛バスが話題になったことは記憶に新しいだろう。
しかし、これは特殊な事例ではないのだと感じる記事を見た。

○路線バス、減便・廃止8割 「運転手不足」で維持困難に―帝国データ
2023年11月22日

帝国データバンクは22日、路線バスを運行する民間事業者127社のうち、8割近くが今年中に路線を縮小・廃止するとの調査結果を公表した。来年4月の残業規制強化で運転手不足が懸念される「2024年問題」への対応のほか、コロナ禍による利用者減少や燃料費高騰が経営を圧迫しているため。公共交通の一翼を担う路線バスの維持が、各地で困難となりつつある現状が改めて鮮明となった。

https://www.jiji.com/jc/article?k=2023112200986&g=eco

これはバスだけの話ではない。赤字路線の廃止と云えばJRなどが直面している事態でもある。
公共交通機関は
・あらかじめがルート決められている
・運行は時刻表に合わせて実施される
と言う特徴があり、公共性の問題から空白地帯の解消が求められているという使命もある。そのため、乗降客数が少ない地域のカバーや、乗車率が少ない時間帯でも(空気を載せて)運行しなくてはならない。

お客様がいるルートにお客様がいる時間に運行すればいわけではなく、経済性を犠牲にせざるを得ない。

■市場原理

問題の本質は、2024年問題でも無く、燃料費高騰・人件費高騰といった経済的な問題でも無い。そもそも「効率性」を無視した公共交通機関が問題なのである。これを解決するキーワードは、市場原理(需要と供給で価格を決定する)に耐えうる運行システムを開発しなくてはならないと云うことである。

このためには、単に補助金を出すというスタイルを変える必要がある。もっとも、最低限の補助金すら出していない自治体は論外である。

それは、おそらくは以下のような形態になるだろう。

①毎日異なるルート・時刻表での運行システム
当然、朝夕のラッシュ時や乗降客数が安定しているルートや時間帯はこのままで良い。
一方、個別の用事をこなす人々のために、完全予約制の運行管理システムを作成する。これに基づいて、翌日の運行計画を前日の夕方までに開示する。

②乗客数に合わせて車両の用意
現在のライドシェアの延長線上で良い。乗用車、小型のバンなど、個人や旅館などの送迎バスなど普段使用していない自動車があればこれを活用する。場合によっては行政やタクシー会社の遊休時間を使っても良い。

当然、法整備なども必要であろうし、保険制度の開発も必要であろう。最適化を図るためのシステム開発も求められる。

しかし不可能ではないだろう。

問題は、市場原理があることを無視して経営し、ダメなら撤退するという姿勢を改めるべきである。

■行政側の甘え

○2023年12月、全路線廃止! 「金剛バス」はなぜ消えゆくのか。大阪近郊、朝晩は満員なのに……
2023年12月12日

 いま、全国のバス路線のうち、約9割が赤字とされている。こういった場合、まず国が一定条件のバス路線の赤字額に対して、最大2分の1の補助を行なう。残り2分の1は、都道府県や地元自治体などが国とともに「協調補助」を行なう場合もあれば、国の補助から外れた路線を県・市町村で全額行なうケースも。この辺りの事情は、地域によってかなり違いが出てくる。

 こういったバス路線の減便・廃止は「クルマがないと通勤・通学できないエリアの誕生」を意味することもあり、バスを必要とする自治体が路線を譲り受け、赤字覚悟で運行することも。しかし金剛バスの場合は補助が行なわれることもなく。バス会社の負担だけが膨らんでいった。

 状態としては「必要なバス路線に、最低限の資金は出すものの、ムリな要求も多い」状態。会社の経営が苦しいままだと運転手への待遇も上がらず。労使対立によって人材が離れる、という悪循環が、すでに生じていたといっていいだろう。

https://travel.watch.impress.co.jp/docs/news/1553735.html

一般的に、企業は赤字を続けていて事業を継続することはできない。また、収益の改善を目指して様々な施策をとる。企業としても、取引先が突然倒産して取り付け騒ぎに巻き込まれないように与信管理を行なう。また、親会社は子会社が窮地に陥らないように一定の配慮をしなければならない。さもなければサプライチェーンが毀損するリスクがある。

行政がこれを怠れば何が起こるのかの事例は「給食業者のホーユー事件」や「北海道医療大学の移転問題」などが挙げられる。

○全国で学校給食停止の「ホーユー」が破産、コロナでの利用者減や物価高騰で経営傾く
2023/09/25
https://www.yomiuri.co.jp/national/20230925-OYT1T50194/

○北海道医療大学が移転 少子化直撃、各地で大学は都市部へ
2023/12/13
https://www.sankei.com/article/20231213-X7TOEZK2SVOD5LKJPGQJ2QISIY/

行政側が予算を立てに相手の収益を無視し、困り事の解決に一緒に向かわない限り、彼らへの影響は一顧だにされない。

自業自得は住民に跳ね返る。

(2023/12/18)

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