人事の問題を考える(障害者雇用を同情でしてはならない)
■障害者雇用を美談にする違和感
先日テレビの報道番組で障害者雇用の工夫の話が取り上げられていた。彼にできる仕事とそれに合わせた仕事の仕方を工夫した例になるのだろう。それ自体は悪い話でもなく、他社も倣った方が良いと思っている。
中小企業が障害者を雇用するというのは並大抵では無く工夫をしなければならない。
障害者に支払う賃金を低く抑えられるとは言え、会社自体の清算プロセスに無理がかかる恐れがあるのだから、その雇用に躊躇する理由も分かる。
私自身も起業したことがある。その時に言われたのが、「利益を出して税金を払うこと」「雇用を拡大すること」「反社会的なことをしないこと」だった。社会を健全な姿にするためにしなければならないと言うことだ。
したがって、社会貢献の一環として「障害者雇用」に取り組むことは必要だと思う。しかし、あたかも「施し」のように彼らに職を与えるのは違和感がある。なぜだろう
■法律であることは当然であること
年度替わりは、様々な法律改正に対応した施工が実施される時期でもある。
こうした法改正は当初はニュースで取り上げられるのだが徐々に忘れられてしまうことが心配だ。
障害者雇用法の改正が令和元年に改正された。と言うアナウンスがある。(下記)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000077386_00006.html
障害者雇用は法律で義務づけられていることを忘れてはならない。「親切」ではない「義務」なのだ。ただし、無制限に雇用しろといっているわけではない。
障害者雇用促進法では、事業主に対し、常時雇用する従業員の一定割合(法定雇用率、民間企業の場合は2.3%)以上の障害者を雇うことを義務付けています。
(同サイト資料)
現状はどうなっているのだろう。令和3年 障害者雇用状況の集計結果として下記が記載されている。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_23014.html
およそ2%。100人いれば2人という計算だ。しかし、50人未満であれば0人になってしまう。小数点で表される人はいないのだから。
しかし、こうした人数比率で良いのだろうか?
■障害者はどのぐらいいるのだろう
障害者の範囲(参考資料)
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/10/dl/s1031-10e_0001.pdf
と言う数字が確認できる。700万人近くいるということは、労働力人口が6800万人程度いることを考えると、2%程度というのが少ないことが分かる。
知的障害者や精神障害者の雇用が難しいのは分かるが、せめて5%(20人に一人)ぐらいにしなければ、人数の少ない中小企業の意識も変わらないだろう。
会社経営の中核は、儲けを出して次の投資を行ない成長を続けることだ。そのため、儲けを出すための負のリスクは避けたいというドライブが働く。すなわち、利益を出すバリューチェーンでの不確定要素を減らしたいという気持ちは分かる。
しかし、これは時代遅れとしか思えない。
■企業の対応の実際
少し旧いが、東洋経済から下記の記事が掲載されている。
一定の関心がある証左であろう。
「障害者の雇用」に積極的な企業ランキング100
コロナ禍で障害者雇用が「後戻り」する懸念も
2020/10/13
https://toyokeizai.net/articles/-/381087
企業戦略に「障害者雇用」を組み込んでいる組織での雇用率は高い。逆に、単に社会貢献的な枠組みでは雇用率はありきたりな水準になることが想定される。
■戦略に組み込まれていないことの違和感
法律で定められていると言う理由では、障害者雇用を特別扱いにしているに過ぎない。
企業戦略の中に組み込む必要がある。
○ハンディキャップの解消は生産性向上につながる
しかし、これは「製造現場」の発想にしか過ぎない。ITが高度化し、知的活動が重要になってくれば、身体的ハンディキャップはどうにでもなる。むしろそうしたハンディキャップを解消させる活動環境は全体の生産性向上にもつながる。
考えてもみて欲しい。屈強な男にしかできない仕事を、女性でも、あるいは車椅子からでもできる環境を実現すれば、安全性の確保や人員の流動性にもつながる。特定の要員に依存しない組織の方が、人員にかかるコストも少なくなる。
成功事例をネットで探してみよう。見つかるはずだ。
○仕事ありきから人ありきに代えることの重要性
ジョブ型雇用を考える際にも配慮した方が良い。
「○○の仕事が任せられる限られた人を探す」では無く、「この仕事を担うためにはプロセスをどう改善したら、多くの人にチャンスを提供できるのか」で考えないと、人材の争奪戦になり、採用コストが上がってしまう。
身体的なハンディキャップを持った人に意見を聞くことも重要になるだろう。
「彼にしかできない仕事はなんだろう」と考えることにより、能力発揮の場の創出ができる。上記の反対のアプローチになる。
ハンディキャップを克服することは組織能力の向上につながることは多くの事例があるだろう。仕事があるから人を採用するのでは無く、採用がしやすいジョブのあり方を検討することを勧める。
ジョブ型雇用といって、潜在的な弱者を切り捨てるアプローチはいただけない。
<閑話休題>
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