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第3の選択肢:「両利きの経営」の実践(発電事業という選択肢)

■サスティナビリティ

「両利きの経営」という本は誤解されやすい本ではあるが、「イノベーション」の起こし方の本ではない。持続的な経営に必要な二つのメンタリティを取り上げている。

一つは「知の深化」であり、「自身・自社の持つ一定分野の知を継続して深掘りし、巻き込んでいく行為」。もう一つは「知の探索」で「自身・自社の既存の認知範囲を超えて、遠くに認知を広げていこうとする行為」だ。

企業活動が「経営資源の再生産と極大化」である以上、すべての経営者は事業の拡大を夢見ており、社員にもそれを求めるだろう。

しかし、ことはそう簡単ではない。特に今の事業がうまくいっているときには挑戦的なことはできない。

■世界の課題に向き合う

こうした「両利きの経営」を実践するときに、多くの「起業」と同じように、「起業理念」すなわち「自分たちは何のために存在するのか」に目を向けると良い。

現在、世界で話題になるのは「エネルギー」と「食料」の問題であろう。
そうした意味で、そうした話題に目を向けることは有益である。

○ユーグレナ培養時のエタノール添加 細胞の回収効率向上も明らかに 明治大学
2023年4月18日

ユーグレナは、淡水中に広く分布する真核微細藻類。医薬品、化粧品、化成品、健康食品、養殖など様々な分野での利用が見込まれる独自の貯蔵多糖であるパラミロンやバイオ燃料の原料に使える貯蔵脂質であるワックスエステルをはじめとした、様々な有用物質を合成、蓄積する。

一方で、細胞の生産コストの高さが課題として残っており、ユーグレナを工業的に利用するためには、培養液からの細胞回収が必要だが、微細藻類の培養液は希薄であるため、細胞回収にはコストや手間がかかる。

https://www.jacom.or.jp/saibai/news/2023/04/230418-66129.php

○大成建設や埼玉大など、燃料物質である油を細胞外につくる微細藻類を開発
2023/04/18

新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は4月12日、2020年度から始めた「カーボンリサイクル実現を加速するバイオ由来製品技術の開発」プロジェクトの中で、大成建設、埼玉大学などの4機関が研究開発を進めてきた「微細藻類を用いたバイオ燃料生産」プロジェクトの研究開発成果として、燃料物質となる“油”を微細藻類細胞の外に生産する微細藻類の開発に成功し、実用化への道を切り開いたと発表した。

https://news.mynavi.jp/techplus/article/20230418-2656098/?lead&utm_source=smartnews&utm_medium=ios&utm_campaign=sp_app

そうした技術の活用分野も考えられる。

○大和ハウスは「響灘火力発電所」の経営権を取得しバイオマス専焼発電所へ転換
2023/4/17

 大和ハウス工業<1925>(東証プライム)は4月17日、北九州市にある「響灘火力発電所」の経営権を取得し、バイオマス専焼発電所への転換を発表した。これは、カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みの一環として、再生可能エネルギーの供給量を拡大することを目的としている。

 響灘火力発電所は、石炭と木質ペレットを混焼することで、環境負荷の低い発電を行っている発電所。しかし、脱炭素化の流れが加速する中、大和ハウス工業は、石炭を使用しないバイオマス専焼発電所に改造することで、CO2排出量を大幅に削減するとともに、安定的なベース電源としての役割を果たすことを計画している。

http://media-ir.com/news/?p=102393

エネルギー問題では別のアプローチもある。

○小水力発電所の建設始まる 一般家庭で年間300世帯分の電力 山梨・高川南沢川
2023年4月18日

全国で発電施設の管理運営を行っている韮崎市の青木水力発電が手がけ、18日は関係およそ30人が参加して工事の安全を祈願しました。

計画では川の流れにくわえ、およそ1.5kmの水路を設置して200mの高低差を利用して発電します。

出力は最大200kWで、一般家庭で年間300世帯分の電力をまかなえるということです。

https://newsdig.tbs.co.jp/articles/uty/440312?display=1

■一歩踏み出せる企業とそうでない企業の差

・電力事業に進出する
・藻のプラントを構築する、あるいは提供する

などは単純に出てくる発想であろう。
しかし、こうしたアイデアが出ても実践できる企業とできない企業がある。
直接的ではないが、経営層やそれに近いメンバーのインタビューを行なうと、「(すぐには)事業規模が確保できない」「失敗するリスクに責任が持てない」「品質が担保できない」などの「できない理由」を先に述べることが多い。すなわち、「現状を変えない」ことを選択してしまう。

「両利きの経営」で「知の探索」が実践に結びつかないと言うことである。
人間は成功体験が邪魔をして新たなことができないと言う傾向がある。
これを克服しなければ先には進めない。

とはいえ、これは言い古された言葉であろう。
分かっていても行なわない根は深い。

<閑話休題>

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