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ISO9001と経営:QMSの為だけのマネジメントレビューはあり得ない(マネジメントレビューとシステム障害への対応)

ISO9001と経営:QMSの為だけのマネジメントレビューはあり得ない(マネジメントレビューとシステム障害への対応)

■ISOに取り組んでいるのに儲からないのはなぜだ

というのは、昔、お客さんから投げかけられた言葉である。当時は戸惑うばかりであったが、今では、「ISOに取り組んでいる?それ自体が間違っているんだよ」と反論したくなってしまう。マネジメントは会社固有の個性が反映される独自のものである。会社経営が先で、さらに言えば経営で重視すべきは品質だけではないし、それに特化したマネジメントなどもあり得ない。

先に重視すべきは戦略である。ISOの出だしもそう書いてある。

品質マネジメントシステムの採用は,パフォーマンス全体を改善し,持続可能な発展への取組みのための安定した基盤を提供するのに役立ち得る,組織の戦略上の決定である。

■経営は不可分である

経営は戦略とそれを実行するための機能(組織)で組み立てられる。すなわちバリューチェーンを持ち出すまでもなく、会社の活動は様々な機能で構成されており、「戦略は組織に従う」でも「組織は戦略に従う」でも、いずれの視点に立とうが、戦略と組織は不可分である。

そのためQMSだけのための活動はあり得ない。製品・サービスの提供も、いわゆるバリューチェーンの基幹プロセスであり、各部門の連携が求められる生きたシステムである。それぞれが別個に動くわけではなく、相互のフィードバックが発生する。この点をISO9001は表現できておらず不完全である。

■マネジメントレビューの誤解

規格では「マネジメントレビュー」という会議を開けと言っていない。

9.3.1 一般
トップマネジメントは,組織の品質マネジメントシステムが,引き続き,適切,妥当かつ有効で更に組織の戦略的な方向性と一致していることを確実にするために,あらかじめ定めた間隔で,品質マネジメントシステムをレビューしなければならない。

他の活動から独立した「品質マネジメントシステム」などは存在しない。存在するのは唯一「経営マネジメント」のみである。したがって、経営を左右する出来事は日々発生しており対応するためには日々の経営判断を行なって組織に伝達しているだろう。その名称は「経営会議」かもしれない。

悠長に一年に一回なんてことは考えられない。

■経営からの指示

9.3.3 マネジメントレビューからのアウトプット
マネジメントレビューからのアウトプットには,次の事項に関する決定及び処置を含めなければならない。
a) 改善の機会
b) 品質マネジメントシステムのあらゆる変更の必要性
c) 資源の必要性

こうした規格要求事項は視野を限定してしまい、経営活動と乖離してしまう。

今はまだ起きていないが、その影響が甚大になる可能性に対処することは、マネジメントシステム云々とは関係なく必要である。そして目の前で起きている事故なども、それが直接の被害が出ていないとしても、転ばぬ先の杖のように感じられる感性が必要である。

○アマゾンAWS、北米で大規模障害…ルンバやマクドナルドアプリにも影響
2023/06/14

 米メディアによれば、ニューヨーク州の交通当局のほか、AP通信のウェブサイトに影響が出たという。日本でも自宅の照明をスマートフォンから操作するサービスなどで、障害が発生したとみられる。

https://www.yomiuri.co.jp/economy/20230614-OYT1T50056/

通信障害は思った以上に頻発している。マイクロソフトのサービス障害でメールやTeamsなどのコラボレーションインフラがつ変えなくなったり、NTTドコモなどの通信キャリアが大規模障害を起こしたことなどはまだ記憶に新しい。

単に業務プロセスをコントロールするだけでなくリモート会議などのコミュニケーション、ファイル共有などのナレッジ支援などもクラウドに依存している。

これに対し、いわゆるベンダーロックインへの対応が喫緊の課題であることはITに関わる立場の人間であれば当然であろう。

とはいえ皆が正しく認識しているわけではないのは下記の記事でも取り上げている。

○浅過ぎるベンダーロックインへの問題認識、公取委だけじゃなく行政DXでもだ
2022.02.21
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00148/021600213/

■マネジメントレビューへの参加者

さて、もう1度規格要求事項を確認しよう。

9.3 マネジメントレビュー
9.3.1 一般
トップマネジメントは,組織の品質マネジメントシステムが,引き続き,適切,妥当かつ有効で更に組織の戦略的な方向性と一致していることを確実にするために,あらかじめ定めた間隔で,品質マネジメントシステムをレビューしなければならない。

すべての責をトップマネジメントが負うことはできない。スーパーマンではない。すべてを解決できるヒーローではない。実体として、「問題解決会議」にならない会議をいくら展開しようが「業績」は上がらない。

もう少し頭を使って欲しい。さもないと「ISOに取り組んでいるのに儲からない」ことが続く。

<閑話休題>

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