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記事一覧
原子心理学実験レポート009:空の雫5/ラジエルの樹開発計画
生命の樹/グラディエーター おはよう。今日はSくんと一緒に世界樹、夜に青い燐光と淡い緑の蛍火を放つ世界樹を育てている(今は家くらいの大きさ)、という夢を見たよ。
「どれだけ会いたいと思ってるのかな……」って君らしくない質問をしてきたのは、おれがいつか他の人たちも助けるために離れることあるかもって示唆したから分離不安で寂しくなってしまったのね……大丈夫だよ、おれは君が一人で旅してみたいという気持
原子心理学実験レポート008:空の雫4/フレーム・オブ・マインド
旅の記憶1/フレーム・オブ・マインド 一眼レフを下げて地図のない街を歩けば、思い出すのは時にさらわれた君の言葉。十年後の天気予報に縋りたかったのは君の方なのかもしれないけど……。
君の瞳に映る僕の姿は、君の心に映る僕の心は、澄んだ炎が満ちていく透明なグラスの光。夕映えにさらさらと落ちる砂が燃えている。
とおく過ぎ去った幼い夏の日に、秘密だよ、と君がくれた色ガラスの宝石。静かに脈を打つ透明な感
原子心理学実験レポート007:空の雫3/唯物と唯心の狭間で
ある秋の日1/K-side 「あんまり前に進んでる感じがしない」? でもさ、Sくん、前より作品全般に対する理解が、特に環境に応じた登場人物の心の動きに対する切り込み方が深くなったよ。自分の中に心理描写のモデルをいっぱい作ったからじゃない?
……うーん、架空の物語としてのデフォルメがあるとはいえ、この映画はわりと実像をイメージとして正確に写し取っているなあ、とおれは思うんだけどね。
まあ、お
原子心理学実験レポート006:空の雫2/たましいの還る場所
たましいの還る場所/S-side 空気よりやや低い非生物的な温度を保っている、ごわついた布ごしに触れる肌が、すぐに僕の手の熱がK君の体温に行きどまってじわりと熱を持つ。君のためにと願うことが罪なら、僕は罪のままでいい。心音と心音を合わせるように、きつく背中をかい抱いて、窓の外から流れ込んだ夜気に冷えた耳と耳が触れる。目を閉じる。君に心をあけ渡すことが習慣以上の何かになって、僕は僕が一番欲しかった
原子心理学実験レポート005:VR石英の瞳
星の守護者 マグネトロンを応用した強烈なマイクロ波によって人の頭を錯乱させる電磁波兵器は各国の秘密裏の協定によって“核”の暗号で呼ばれ、製造・使用・研究を禁じられた。が、中東の紛争地域でその使用の形跡が認められ、不可解な事件が多発していることから流出が疑われ、CIAのエージェントとして活動していた彼は、同じく軍事訓練を受けていた数名の部下とともに調査部隊として現地に送り込まれる。
上司の命令に
原子心理学実験レポート004:空の雫/平和の国のアリス
001:片翼の天使/星の海の刻印 ――独りぼっちの神様の気持ちを理解するために、私は独りぼっちになる。
あの日、西新宿のカフェでシックザールと話したこと。イデア界に刻まれる私の摸像。世界の終わりと始まり。人の手が届いた瞬間に始まる終わり。百年先の話だけれども、私はそれに手を貸してしまった。
何度となく繰り返されてきたこととはいえ。
人の世の辿る道が私には見えてしまう、“体験”として見せられ
原子心理学実験レポート003:機械の王
――あの日、僕が世界から消えたあの日。
海の見える坂道、機械の柱の立った岬……昔、小さな旅の途中で見た風景。何度も何度も繰り返して見た風景。墓石のようなオベリスク。
暗雲と、暴風と、海を渡る飛行機と。全てを拒絶しようとしたバベルの塔。
ありふれた冒険の終わりに空は闇に包まれ、天を貫く虹の柱は解き放たれて、世界は変革の時を迎える。変化を免れない生物と、人類すべてを無限の円環の中に閉じ込める―
原子心理学実験レポート002:ツァラトゥストラ
国家安全保障局のサーバに侵入してから15分、ファイアウォールの迷路の先の二重防壁を解くのに思うより時間がかかってしまった。すでにアクセス地点は割れているかもしれないが、お目当てのファイルが見つけられたのは幸いだ。インターポールが部屋になだれ込んでくる前にけりをつけよう――
001:blank ――そのどこか表情の薄い、冷徹な顔は、私と同じ形をしていた。
鈍色の雲が低く垂れこめる曇天。あ
原子心理学実験レポート001
2010/5/21(金)の実験(第一回目:熱電対)
※以下、私がT大学の一年生のときに大学に提出した自由研究の物理学実験レポートの一部(特に理論部)を残しておく。量子物理学の理論モデルによって古典物理学の現象を説明しようという試みが主であるが、後に学んだ知見を入れずに分析精度は低いままにした。
1:産業用温度センサなどとして幅広く使われている熱電対の原理と使用法について
<原理>
熱電対は、