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断鏡亭日乗 (1)

十数年前に 必要に駆られてRICOHのGX100を
ヤフオクの中古で格安入手してから最後
「金輪際カメラとレンズは買わんぞ」と決意した。
GX100は誠に必要十分且つ「exclusive or」な
ユニークなカメラで今でも愛用している。

フィルムカメラ・レンズの断捨離文化大革命を自分で起こした。
レンズは「ミリ1本」「28から135」までブローニーは1台、
35mmも1台という革命原則を掲げた。
もちろんズームは極刑。ノータイム。

一番悩んだのは沈胴ズミクロン50/2 99万番台と
エルマー50/3.5 97万番台どっちにするかだった。
一番裁判が長引いた。
文革なので値段の高い方が走資派ということでズミクロンを
フードごと追放した。
マクロはプロレタリアートということで
シグマの50/2.8OMとZUIKOの50/3.5は特赦で生き延びた。
(手放せなかった)

RICOHのGXRが出た時もひたすら耐えて我慢していた。
マウント部分が土台ごと変えられるっていう仕掛けには
そそられた。妄想の波紋は拡がる。

そうこうしているうちに SIGMAから「fp」なるカメラが発売になった。
唸った。「うううう」ついに来た。これだ。でも高い。
その時は両親の介護で時間も経済も逼迫していたのである。

ズマロンが35mmそのままで写るんだそうだ。「うううう」。
こういう時代が来るとは思わなかった。
文革をこれほど後悔したことはない。
今の近国の方々もそうであろう。

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今年の4月につい フラフラとSIGMA fpを中古で落札してしまった。
心の旅の疲れが出たのであろうか?
「FP」と書くとファイナンシャルプランナーみたいになる。
レンズ以外の装備品はほぼ付属していて電池も2個ついていた。
年金があと2か月で満額になると思っていた油断からである。
レンズは5-6本あるし何とかなるだろう。

ただ「税金の嵐」の到来を忘れていた。

思ったとおりの素晴らしいカメラであった。
出品者はどんな気持ちで手放したのだろうか?
ほんの少し放熱板の角にうち傷があるだけの極美品だった。
ネットなどでは「あれがない これがない」というコメントも
多く見られたが、このカメラには「引き算の思想」があり
「欲しいものは自分で工夫してね」というスタンスなのだ。
「3D-CADのデータ上げとくから 自分で作りなよ」最高だ。
その通りである。

「ラーメン」も、なんでもありのコテコテドロドロのよりも
「引き算」のシンプルな「シナソバ」風のそれの方が体に染み渡る。
「最近ネギが高いから玉ネギでごめんよ」
そんなおばあさんが作るラーメンがうまいのだ。
「ほうれん草とノリをちょいと余計に入れといたからね」

面白い、よく映る、フィルムいらない、ということで
仕事もそっちのけで楽しんでいた。
そうなってくると「文革」で追放したレンズの行く末が気になって
しょうがない。
その時すでに神経節に潜んでいたウイルスが密かに蠢き始めていた。

お客さんからもらった 「ニコンF+ニコンズミルックス 50/1.4」が
ふと目に留まった。「俺もう使わないから 飾りなよ」とかいって
カメラを持ってくる人がいる。「OHはしてあるよ」
状態はMINT-~EX++ だいぶ使いこんだ形跡はあるけど極美品だった。
「もう使わないから 飾りなよ」=「あげるよ」でいいと判断。

「HASSEL500??+プラナー」を持ってくる人もいた。
さすがにこれは「もう使わないから 飾りなよ」=「あげるよ」では
なかった。5-6年したら「返してくれ」と言ってきた。
おとなしく返却した。

ただFマウントのauf-zuの回転方向が逆なのには閉口した。
ドライヤーで温めたり、木槌で軽くたたいたりしたけど
レンズが外れない。なんじゃいこりゃ。

手のひらは汗ばんでいた。
どこか見えないところにロックボタンがあるのではないかとか
脳のCPUは120%超えてたと思う。
日本古来の諺、侏儒の言葉を思い出し
「押してもだめなら引いてみな」逆に廻したら
あっさり外れてレンズを落としそうになった。
各種BLOGもユーツベも誰もそんなことには言及してない。
全世界で知らなかったのは俺だけか?

早速アダプターを取寄せつけてみた。
ヒャー 流石に戦艦大和の測距儀、伊号潜水艦の潜望鏡を
作ったとこだけのことはあるなー と感心した。
「上善如水」のようなオリンパスの50/1.4、1.8とは
一味違ってた。どっちがいいかはわからない。が、
その時すでに急速に感染ドミノが始まっていたと思う。

そういえば陸軍は東京光学だったな。
TOPCONの技術セールスさんから
ヘリコイドグリスをもらったことがあったのを
思い出し一寸家中(冷蔵庫)を探すとコダクロームの
黒いフィルムケースが2つ出てきた。
「中軽」「中重」両方ともたっぷり入っていた。
「失敗した栗キントン」のような昔ながらのグリスだった。
ズマロンの復活にすごく役に立った。

NIKONがあるならTOPCONも必要な感じがしてきた。
「KON」と「CON」両方必要だ。KとCの違いは何か?
ケンタッキーとキャディーズくらい違うはずだ。

ウィルスの類は宿主の脳もコントロールするものもあるそうだ。
要するに熱が出始めた状態。

セールスさんはとっくに退職して施設に入っているかもしれん。
ガンか交通事故で亡くなっているかもしれん。
供養のために1本持っていたほうがいいだろう。
「アズキザワ」でなく「アズサワ」と読むのだったよな。
妄想の波紋は重合して波高はかなり高くなっている。

気が付けばebay病院に居た。
「ミリ1本」の原則は簡単に「ハズレ」てしまった。

合掌

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