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私の考えるNDAのポイント

現在開発型のスタートアップであるmicro-AMSでCFOをやっています。
そこでNDAを結ぶことが増えているので、一度NDAに関して整理をしたいです。

NDA(Non Disclosure Agreement)とは

日本語で言うと「秘密保持契約」、つまりお互いの秘密な情報を守りましょうという契約で、会社の内部情報を出して深い話をしたい時に使います。
弊社は開発型のスタートアップなので、その内容を中心に考えていきたいと思います。
ちなみに、NDAやPoCや共同開発のひな形は経産省と特許庁が有識者の皆様と共にまとめてくれています。すごく勉強になります。
公表資料も是非一読を!大企業とスタートアップ間の本当にあった怖い事例例みたいなのも書いてます。

NDAの内容の前に重要なこと

私は以下の3つを重要なこととして心に刻みNDAを考えています。

1. 最終的には弁護士に確認をすること(特に重要な契約は)
2. NDAを結んだとしても、必要な情報以外は出さないこと
3. 研究開発スタートアップで一番大事なのは知的財産(特許)であること

1. 最終的には弁護士に確認をすること(特に重要な契約は)
言わずもがな、素人が判断するには限界があります。信頼できる弁護士、特に技術に理解がある弁護士に顧問についてもらうことが大事です。

2 はNDAを結んだとしても、必要な情報以外は出さないこと
NDAを結んだとしても、相手が情報をどう使ったかまでは検証できません。仮にNDAを結んだことで、不必要に会社の全データを見せた場合、それをもとにパクられる可能性は否定できません。
「NDA締結したので全部のデータを見せてほしい」と相手に言われたらまず警戒しましょう。

3. 研究開発スタートアップで一番大事なのは知的財産(特許)であること
NDAというか他の契約でもそうなのですが、研究開発スタートアップでは、「特許=命」くらいに考えた方がいいです。相手に全部特許を持っていかれると終わりです。
ほとんどいないと思いますが、NDAから特許を全部もらう契約を入れてくる会社もいるかもしれません。そんな会社とは付き合わない方がよいです。別の取引先を探した方がいいくらいです。絶対あとあと大変なことになります。

NDAのポイント

上記の重要なことを心に留め、NDAの契約内容でおさえておくポイントをまとめます。

1.「本目的」の設定は重要

冒頭のリンク先にある資料を読んでもらえばと思います。何度も言いますがすごく勉強になります。
スタートアップの資本政策でいう磯崎さんの起業のファイナンスくらい勉強になります。
これ以下の内容読まなくてもいいくらいです。

なので、重要なポイントだけ以下に記載します。
スタートアップにおいて、自分たちが出す情報が何のために使用されるかを明確にするのはとても大事です。
この目的を、「甲の新素材αを使った乙の開発」とか広くとると乙(相手)が単独で行うプロジェクトにも合法的にこの情報が使われてしまいます。それは嫌なので、目的はちゃんと絞りましょう。
そして、目的外の使用を禁止する条項もちゃんと入っていることを確認しましょう。

重要な契約に関して、目的部分は弁護士レビューをお願いすべきと思います。

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2. 秘密情報とは何?を明確にする

契約の目的を定めたら、次は秘密情報が何かを明確にする必要があります。
Confidentialがついた資料が秘密情報なのか、サンプル品が秘密情報なのか、はたまた顧客情報やソースコードが秘密情報なのか。
例えばConfidentialがついていない資料に重要情報を載せた場合に、それは秘密情報として扱われるかはこの契約の秘密情報の定義によって異なるため、ちゃんと整理することが大事です。
とはいえ、秘密情報と定義しても、漏れたら会社がアウトになるような大事な情報は絶対に渡さないことを肝に銘じてください。チームにも徹底させることが大事です。

補足ですが、秘密情報の中に、「NDAを締結していること」自体が含まれる場合もあります。
その場合には、xxx企業とNDA結んで一緒にやっています、というのも秘密情報になるので、取り扱い注意です。そもそもNDA段階でPRするのはなしだと思いますけどね。
ただ、共同開発などでは、スタートアップ側がPRに使いたい場合も出てくると思います。その際は、契約自体を秘匿する条項はなくすよう交渉しましょう。

3. NDA時点で知的財産条項は必要か?を考える

ここは判断が分かれる部分ですので、ケースバイケースですが、私は不要だと考えます。

スタートアップは案件ごとの情報の壁を作れないため
スタートアップは少ない人数で様々なテーマの開発を進めることが大体だと思います。
そうすると、同じ人がA企業・B企業・C企業と同時に違うテーマを扱いながら、自社で独自のテーマを進めるケースもよくあると思います。
その場合、スタートアップが独自のテーマで取った特許だとしても、NDA締結したA企業からA社との契約をもとに取った特許ではないか?と言われてしまうと証明が非常に困難になります
NDAはとりあえず状況をもっと知るためにお試しで結ぶ意味合いもあります。そのお試しの契約であるNDAにおいてスタートアップの命である知的財産の取り扱いを約束してしまうことはリスクがとても高いなと個人的には思います。

4. NDA違反をした場合:損害賠償は?

NDAにある損害賠償条項、この扱いを明確にします。

損害賠償条項がない場合は、損害賠償されないの?
「社内の稟議に通す際に、損害賠償の内容を説明できないから、損害賠償条項を外すか具体的な損害賠償の内容を教えてくれないか?」
私も以前聞かれたことがある内容で、返答に困る内容です。
結論から言うと、損害賠償条項がなくても、契約違反があった場合は民法416条の契約の債務不履行に該当し、損害賠償を請求できます。

損害賠償金額の求め方
で、この損害賠償金額というのが、難しくて、売買契約だと納品されなかった場合に、「支払ったお金と納品されなかったことによる社内外で調整を行った費用」で求められるけど、情報を漏らしたことによる損害額の算定は難しい
別の会社と同じ情報をもとに共同開発契約の締結直前まで来ていて、この情報漏洩により契約がパーになったと証明できれば、その金額がベースになるかもしれないが、まれなケースですね。

損害賠償条項の取り扱い
NDAでは、損害賠償条項を以下の2つのどちらかで取り扱うのがいいです。でも2は交渉が難航すると思います。

1. 確認条項として、損害賠償条項を載せる
2. 事前に具体的な金額(1,000万円)といった確定額を載せる

さいごに

契約はとっても重要です。やらかしたら後戻りはできませんので、慎重にやりましょう。
やはり、信頼できる弁護士にレビューをしてもらうことが大事です。

あと、何度も何度も言いますが、冒頭リンク先の資料は必ず読んでください。すごくタメになります。

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