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【MLB】Too Strongという落とし穴

今季のMLBのポストシーズンは、現地10/22時点で両リーグともにリーグチャンピオンシップシリーズの第6戦に突入。それぞれのカードがほぼ一方的だったワイルドカード、地区シリーズとは異なり、両チームともに勝ち進むチャンスがあるようです。


さて、今季のポストシーズンでは地区シリーズにおいて、レギュラーシーズンで100勝を達成しているチームが早々に敗れたのが印象的でした。

両リーグ最多の104勝を挙げたブレーブスは、同ナ・リーグ東地区2位のフィリーズに1勝3敗で敗北。

また、100勝を挙げたドジャースは同ナ・リーグ西地区のダイヤモンドバックスに、101勝を挙げたオリオールズはレンジャーズにそれぞれスイープされています。

ちなみに、レンジャーズはワイルドカードシリーズで、100勝には達していませんが99勝を挙げたレイズもスイープしています。


レギュラーシーズンで独走状態だったチームがポストシーズンで早々に負けることは決して珍しくはなく、昨シーズンも同様に100勝以上を挙げたドジャース(111勝!)、ブレーブスは、それぞれ地区シリーズで敗れています。


ポストシーズンで下位シードのチームが上位シードのチームを破る、いわゆる”ジャイアントキリング”が発生すると、日米ともに議論になるのは上位シードチームの試合間隔についてです。


今季のMLBのポストシーズンでも、地区シリーズからポストシーズンが始まる上位シードのチーム(オリオールズ、アストロズ、ブレーブス、ドジャース)はレギュラーシーズン最終戦から中5日の間隔がありました。
一方で、その期間中に下位シードのチームはワイルドカードシリーズを行っており、勝ち進んだ勢いをつけた状態で、地区シリーズで"試合間隔が空いて試合勘が鈍っている"上位シードのチームとの対戦に臨むことになります。


そんな中、こんな記事がありました。

今回のポストシーズンではレギュラーシーズンを制圧していたチームが早々に敗れたこともあり印象が強かったのですが、過去の統計では試合間隔が空くことがカードの勝敗に影響はしないのでは、と述べています。



この議論をする際に、個人的にはレギュラーシーズン最終戦からの試合間隔の長さよりも、上位シードのチームにはもっと深刻な試合勘の鈍りの原因があるのではと考えています。

それは、負けが許されないゲームでの経験値です。


今季、ブレーブスは開幕当初からバッティングが好調で、特に6月は月間61HR、チームOPSは.940を記録し21勝4敗と一気にチャージ。8月も同様に月間21勝を挙げるなど、早々に独走状態でシーズンを終えました。

また、ドジャースは投手陣の不調からシーズン序盤はもたつくも、こちらは8月に24勝5敗を記録し、一気に同ナ・リーグ西地区の2位チーム以下に差を付けました。

オリオールズは昨季にキャッチャーのラッチマンを昇格させて以降、同一カードのスイープがないという、シーズン通して安定した成績を残していました。


このようなチームはレギュラーシーズンを独走していた状態(オリオールズは同ア・リーグ東地区で2位レイズと地区優勝を争っていましたが、リーグ一番乗りでポストシーズン進出を決めています)であり、シーズンを通して”絶対に負けてはいけない”試合の経験が少ない、むしろ、なかったのではないかと考えています。
もちろん、レギュラーシーズンではどんな状況でも目の前の試合は全力で貪欲に勝ちにいったでしょう。ただ、仮に負けたとしても、ポストシーズン進出に赤信号、黄信号が灯り、チームの立場が危うくなるような負けられない試合はなかったと思います。


絶対に落とせない状況でのプレーは、通常とは恐怖・緊張感が異なり、気持ちの切り替えが非常に難しく、プレーが固くなり消極的になる可能性があります。

現に、地区シリーズでは"負けてはいけない"プレッシャーからか、らしくないプレーも見られました。

例えばブレーブスは、地区シリーズ第4戦の7回に2点ビハインドの状況で、明らかにワイドピッチで1点が入るというプレーでサードランナーが躊躇し、生還できず。結局2点差のままで試合は負けてしまったものの、ここで1点が入れば試合終盤で相手へのプレッシャーも異なり、試合展開は変わっていたかもしれません。

他にも、第2戦の9回に大飛球にファーストランナーとして飛び出してしまったフィリーズのハーパーに対してアリシアによる挑発的な発言もあり、結局これが翌日以降の試合で相手に火をつけてしまいました。

その後の試合でもアリシアとフィリーズファンがダッグアウトで口論する一面もあり、地区王者としての余裕がありすぎた、そしていざ追いつめられるとレギュラーシーズンと異なる状況で余裕がなくなってしまったかのように思いました。


また、ドジャースはダイヤモンドバックスとの各試合で序盤に大量点を奪われて苦しい展開に。
ただ、今シーズンのドジャースにおいて先発が試合を作れずに劣勢から試合を進めることは決して珍しくなかったシチュエーション。ドジャースには落ち着いてコツコツと点差を縮め、最終的にはひっくり返す力は十分にあるものの、地区シリーズでは頼みのベッツ、フリーマンが合わせて21打数1安打と不発。それ以上に下位打線が塁に出ることができず、相手にプレッシャーのかかる場面で上位のベッツ、フリーマンを迎えるという状況を作ることが全くできていませんでした。


オリオールズは、相手レンジャーズのバッターにことごとくゾーンに来たボールは強振され、バッテリーは自信を失っていたようにも思います。結局、ポストシーズンの舞台で初めてラッチマンを擁するオリオールズは初めてスイープされました。


一方で、これらの上位シードのチームを破ったフィリーズ、ダイヤモンドバックス、レンジャースはシーズン最終盤までワイルドカードの3枠を争い、ポストシーズン前の8月、9月と常に絶対に負けられない試合に臨み続けていたチームです。

特にレンジャーズ、ダイヤモンドバックスはレギュラーシーズンの161試合目でポストシーズン進出を決めました。シーズン中、あと1敗していたらポストシーズン進出はなかったかもしれないのです。

リーグチャンピオンシップシリーズに進出しているアストロズは地区優勝こそしたもののの、レンジャーズ、マリナーズと最後の最後まで地区優勝のみならず、ワイルドカード進出も争ったあとでポストシーズンに臨んだチームでした。

過去を振り返ると、例えば2021年にワールドチャンピオンに輝いたブレーブスも、同年は地区優勝はしたものの9/25時点で2位フィリーズに1.5ゲーム差まで迫られており、結局地区優勝をし、ポストシーズン進出を決めたのはシーズン終了間近の9/30。ワイルドカードはドジャース、カージナルスが上位にいたため、ポストシーズン進出のために最後まで地区優勝を争う、”負けてはいけない試合”に臨み続けていました。


このようなチームにとってポストシーズンはレギュラーシーズンの延長戦。

特別な気持ちの切り替えの必要はなく、負けたらシーズン終了というプレッシャーの中でいつもと同じメンタルで試合に臨むことができたのかもしれません。



チームが強すぎるゆえにレギュラーシーズンに最適化され、ポストシーズンではスイッチ、メンタルの切り替えができずに普段の王者としての戦いがしにくい、というジレンマ。


はたして、レギュラーシーズンで独走しながらもポストシーズンで勝ち進めなかったドジャースに必要なのは、より盤石なチームを作るために”大谷翔平”を獲得することなのでしょうか。




出典、画像引用元
https://apnews.com/article/clayton-kershaw-dodgers-nlds-5e7c5f461a4eab40eb007f2b9425188a
https://www.mlb.com/
https://www.baseball-reference.com/

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