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【MVP】元MVPsの帰還

オールスターブレイクも終わり、2023年シーズンも後半戦がスタート。
この時期になると、ポストシーズンを目指せるチーム、そうでないチームが区別されるようになり、後者のチームからトレードのターゲットになりそうな選手の名前が色々なメディアであがってきます。

野手の中で、今季のトレード市場で人気を集めそうなのが、カブスのコディ・ベリンジャー。

ベリンジャーは2019年に、ドジャースの一員として47HRを放ちMVPを獲得。
しかし、その後は怪我の影響もあり不調のシーズンが続きドジャースから放出され、今季はカブスと1年契約。
ただし、今季はかつてのような長打力はまだ戻っていないものの、7/16現在で.301/.358/.882の数字を残し復活。所属チームが低迷していることから、バッターとしてトレード市場のトップダーゲットとなっています。

さて、そんなベリンジャーとかつてライバルとして2019年はMVPを争っていた元MVP選手が、ブリュワーズのクリスチャン・イエリッチ。

もともとイエリッチはブリュワーズ移籍後の2018年にMVPを獲得し、翌年はさらに成績を伸ばした選手。
近年は深刻な打撃不振だったものの、ベリンジャーと同じく今季は復活し好調なチームを率いています。


今回は2人の元MVP選手の復活について紹介します。


【コディ・ベリンジャー】

随所に勝負強さを見せたものの、守備職人と化したドジャース時代

ベリンジャーはドジャースの期待の星でした。
デビューした2017年にはナ・リーグの新人記録となる39HRを放ち、新人王を獲得。

2018年に若干成績を落とすものの、2019年には開幕から爆発。
前半戦に30HRを放つなど、一時は60HRを狙えるペースでホームランを量産。イエリッチとの熾烈なMVPレースを制しました。

地元での人気は絶大で、試合中に女性ファンに近寄られる場面も。

しかし、翌2020年から打撃が低迷。
ポストシーズンでは時おり流石の勝負強さを見せるも、外野、ファーストでの守備力を活かし、半ば守備職人と化していました。

2020年のポストシーズンでは、タティスJr.の逆転ツーランを阻止。

なお、同年のポストシーズンではメジャーリーグ級の肘タッチで左肩を脱臼するなんていうブーマーのハイタッチで怪我をした門田博光的な不運も。


カブスでの復活

そんなベリンジャーですが、今季は打席でバットをより寝かせながらタイミングを取るようにしました。
好調だった2019年の時のようによりリラックスしてボールを待てており、自然体なアプローチができているのではないでしょうか。

その結果、元々得意だった速球系の対応力が改善(2022年打率.250, 2023年打率.299)し、苦手だったオフスピード系はむしろ得意にしています(2022年打率 .160, 2023年打率 .412。空振り率も30%強から15%まで低下)。

ひっぱり傾向の左打者に特有の対左投手の苦手も以下の対左打率の通り改善しました。

2020年 .216
2021年 .116
2022年 .213
2023年 .342

冒頭のグランドスラムも、左投手・パクストンからの一発でした。


ヤンキースの長年の補強ポイントにジャストフィット

さて、そんなベリンジャーがパズルのピースのようにジャストフィットするチームがあるのです。

ヤンキースです。

ヤンキースのここ数年の課題はレフト。
ブレット・ガードナーとの契約を見送ってからというもの、ギャロやベニンテンディを獲得したり、ヒックスやショートだったIKFを起用したりするも、なかなかうまくレフトを固定できていません。
ずっとガードナーの抜けた穴を埋められず、毎年夏の補強ポイントとしてあがりつつ、それと同時にいつまでもガードナー再契約説が飛び交うのです。

ヤンキースがレフトに求めているのはこの3点。
1. 広い左中間を守れる守備力があること。
2.狭いライトを活かしたバッティングができ、出塁率が高い左打者。
3.ニューヨークのプレッシャーに負けないメンタリティ(new!)


ギャロのケースから3点目が重要になりました。

ベリンジャーは外野の守備力があるだけでなく、ライト方向に長打を打て、元々選球眼が良かった左バッター。さらに、ドジャースというロサンゼルスを本拠地とする注目の集まるチームでプレーし、ポストシーズンでの活躍経験もあります。

ヤンキースの大御所ジーターさんが「ソトを獲得せよ」なんておっしゃっていますが、ベリンジャーもターゲットの1人であることは間違いありません。


ただ、statcastのバッティングの数値がいまいちパッとしたいのが悩み・・・


ちなみに、ベリンジャーのお父さんはヤンキースの選手でした。



【クリスチャン・イエリッチ】

巧打者からの覚醒


一方、イエリッチはマーリンズでデビューした、ベリンジャーと同じ左の外野手。
当時イチローがチームにいたこともあり、日本国内の中継でよく観ることのできた選手でした。

イエリッチは元々中距離ヒッターの巧打者タイプでしたが、ブリュワーズに移籍後に覚醒。
移籍初年度の2018年は後半戦に25HR、OPS .1219と爆発。チーム7年ぶりの地区優勝に導いたこともあり、地元ではカルト的なヒーローとなりました。

さらに翌2019年は4月に14HRを記録。シーズンMVPはベリンジャーに譲るも、年間を通して終始ハイレベルなMVPレースを展開し、成績も前年を上回る活躍をしました(2018年OPS1.000, 2019年OPS 1.100)。

ツキがなかった3年間

さて、好不調の波は見事にベリンジャーとシンクロし、イェリッチも2020年より背中や膝の怪我に悩まされ不調に陥るのです。2020年以降のスラッシュラインは以下の通りです。

2020年 .205/.356/.786
2021年 .248/.362/.736
2022年 .252/.366/.738

出塁率は高い数値をキープしていたものの、2018年から2年連続して首位打者を獲得したイエリッチにとっては打率、OPSは低い成績で終わった3年間でした。

ただ、打球速度、ハードヒット率等statcastの指標は決して劣化していなかったのです。


2019年

2020年

2021年


2022年

守備指標は目をつぶるとして、バッティングの指標はメジャーでもトップレベルを維持。3年もの長期間、打率、長打率、ホームランといった成績に反映されないのが不思議でした。唯一ネガティブだった点は打球角度が下がっていたことで、ゴロ率が上昇。それがダイレクトの成績に反映する形となっていたものの、そこまではっきり不振となるか、というものでした。


トップバッターとして復活

さて、そんなイエリッチは、トップバッターしての適性があったようです。
長打力があることから、ブリュワーズ移籍後は主に二番、三番として出場していました。ただ、2022年から一番での起用が増え、.378と高出塁率を記録。次に出場が多かった三番では.306だったので大きな差がありました。
その結果、今季も主にトップバッターとして出場し、出塁率はさらに改善し.383に。トータルでも出塁率はリーグ9位にランクインしています。

前年までと同様に、今季もstatcastでは良い数値をキープ。今季は成績にも反映されており、7/16時点で.286/.378/.850です(加えて今季は守備力が向上していますね)。



以上が近年不振に苦しんでいた元MVPのふたり、ベリンジャーとイエリッチの紹介でした。
2019年にMLBで大きな注目を浴びた2人だっただけに、ここ数年の不振にフラストレーションが溜まっていたファンも多いはず。後半戦はさらに成績を伸ばし、また当時のようにタイトル争うをするようなパフォーマンスを期待していますし、イエリッチは好調なチームの主軸として、ベリンジャーはトレード先のチームの一員として、それそれポストシーズンで活躍する可能性が大いにあります。



出典、画像参照元
https://www.mlb.com/news/christian-yelich-cody-bellinger-an-mvp-race-to-watch
https://www.mlb.com/
https://baseballsavant.mlb.com/
https://www.baseball-reference.com/

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