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『Fate』の切嗣は正義の味方を目指した。では、今の自分がやるべきことは?:ふーみんさん

趣味で、コンテンツを軸に半生や価値観を聞いて記事としてまとめている、なべしきと申します。

大学生・ふーみんさん(@KADOanime)さんに、アニメから受けた影響と価値観の変遷について聞かせていただきました。

※この記事には、『Fate/Zero』のネタバレが含まれています。

『MAJOR』と祖父に影響され、野球漬けの日々

ーーふーみんさんは現在大学1年生ということですが、まずは中学までの生活についてお聞かせください。

小学校高学年から中学校まで、生活の中心は野球でしたね。小4から小6まで少年野球団に所属し、中学は野球部に入ってました。

ーー野球を始めたきっかけは?

じいちゃんが巨人(読売ジャイアンツ)ファンだったことと、小3くらいで『MAJOR』のアニメの再放送を見たことですね。元々はあまり興味なかったんですけど、MAJORで野球のルールを理解した上でテレビ中継見ると面白くて。

僕、出身は兵庫なんですが、小学校6年のとき、大会を勝ち抜いたおかげで甲子園球場で練習させてもらう機会もあったんです。子供ながらに感動して、中学でも野球を続けました。中学は特に、野球一色の生活でしたね……。ポジションはセンターやファースト、打順は5番を打たせてもらうことが多かったです。

ーーでは、高校も野球部に入ったんですか?

いえ、中学の3年間で燃え尽きてしまって(笑)。良い思い出で終わったほうがええかなと思い、同じくボールを打つ競技である、テニス部に入りました。

あと、勉強への意識がめっちゃ高まった時期で、部活と勉強半々くらいの力の入れ方でしたね。

ーー「勉強」というと、受験勉強のことですか?

はい、仲の良い友達が高校1年のときから受験勉強してたんですよ。当時はまったく意味がわからなかったですね。国公立の良いところ入りたいってことでしたけど、そこまでやらな間に合わんのかと焦りました。それで感化されて、その友達を中心に4人ぐらいのグループで勉強するようになりました。

朝は5時に起きて7時まで家で勉強して登校。部活が18時まであるので、終わり次第、21時くらいまで校舎で勉強。そんな日々でした。

『Fate』で、勧善懲悪ではない価値観に触れた


ーー学校の授業時間以外に、毎日5時間も勉強していたとは……。では、なかなか本や漫画などのエンタメ作品に触れるのは難しかったんじゃないですか?


いえ、深夜アニメは結構見てましたよ。中3のとき、『SAO』(『ソードアート・オンライン』)を友達に教えてもらったのをきっかけに、『魔法科高校の劣等生』『黒子のバスケ』など、1クールに2〜3本は見るようになりました。

特にハマったのは、『Fate』シリーズです。入り口は、高校に入る直前に勧められた『FGO』(『Fate/Grand Order』)でした。

『Zero』(『Fate/Zero』)や『stay night』(『Fate/stay night [Unlimited Blade Works]』)のアニメを観てからは、キャラの背景や聖杯戦争というフォーマットがわかって、より『FGO』のシナリオが楽しめました。

ーー『Fate』で、特に好きなキャラクターはいますか?

衛宮切嗣ですね。そもそも、『Zero』自体、今までに観ていたような(全年齢向けの)アニメとは違う“重さ”を感じていたんですけど、16話、(敵勢力の)ケイネスの最期と、その後の切嗣とセイバーの会話が印象的でした。

切嗣:
僕は聖杯を勝ち取り世界を救う。そのための戦いに最も相応しい手段で臨んでいるだけだ。正義で世界は救えない。そんなものに僕はまったく興味がない。
セイバー:
切嗣、わかっているのか。悪を憎んで悪を為すのなら、その怒りが、憎しみが、また新たな戦いを呼ぶだろう。衛宮切嗣、かつてあなたが何に裏切られ、何に絶望したのかは知らない。だがその怒りは、嘆きは、紛れもなく正義を求めた者だけが抱くものだ、切嗣、若き日の本当のあなたは、正義の味方になりたかったはずだ。世界を救う英雄を誰よりも信じて求め欲していたはずだ。違うか。
切嗣:
終わらぬ連鎖を終わらせる。それを果たし得るのが聖杯だ。僕がこの冬木で流す血を人類最後の流血にしてみせる。そのために、たとえこの世のすべての悪を担うことになろうとも構わないさ。それで世界を救えるのなら、僕は喜んで引き受ける。


ーーどういった点が、心に残ったのでしょうか。

単純な“勧善懲悪”ではない価値観を見せられたのが新鮮だったんです。

これは、後から観た『コードギアス』(『コードギアス 反逆のルルーシュ』)でも感じました。見始めた当初は、スーパーパワーを持った主人公が無双するのかと思っていたら、実際はまったく思い通りにはならないわけじゃないですか。

それに、価値観としても、主人公のルルーシュとその敵であるシュナイゼルが異なる正義を掲げていて。シュナイゼルは恐怖で平和を実現しようとして、ルルーシュは人の可能性を信じていた。どっちも一理あるなと。きっと、もっと小さいころだったら消化しきれなかったと思います(笑)。

「才能という言葉に甘えていた」

ーー高校を卒業して以降のお話を聞かせてください。現在の大学に進学された、ということで良いですか?

いえ、卒業して2年くらい、フラフラしてました。

ーーあ、そうなんですか?“フラフラ”とは……浪人をされていたということでしょうか?

そういう言い方もあるかもしれませんね。家族はそう思っていたと思います。でも、正直、何もしていなかったです(笑)。

大学受験に懸けていたので、落ちたことがショックで、気力がさっぱりなくなってしまって。勉強もせず、本読んで、寝て、野球やアニメを観る生活をしていました。

20歳になったとき、ようやく大学に行ってみる気になって。今年(2020年)入学したんですが、コロナの影響で、思っていたキャンパスライフにはなりませんでした(笑)。

ーーそうだったんですね……ショックが大きかったと。

さっき話した通り、高校のころはこれまでで一番勉強に力を入れていたんですけど、結局いい加減な努力しかしていなかったと、気付かされました。

ーー1年生のころから毎日数時間の自主学習。いい加減とはとても思えませんが……。

ただ量をこなすだけになっていて、努力の方向性や質が悪かったな、と。もっと一緒に勉強している賢い子の勉強法とかを真似すればよかったと思うんです。

『俺ガイル』(『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』)のヒロインの1人、雪乃がこんな言葉を言ってるんですよ。

「最低限の努力をしない人間には才能がある人を羨む資格は無いわ。 成功できない人間は成功者が積み上げた努力を想像できないから成功できないの」

今振り返ると、僕は“才能”という言葉に甘えてたんやないかと思います。「どうせあいつはもともと賢いから」と、勉強ができる子がやっていた積み重ねを想像できていなかった。

『Fate/Zero』は切嗣が「正義と向き合う」物語。これからの自分は?

ーー2年の充電期間で色々と考えることがあったのですね。

はい、そんな風に努力について考えていたら、いわゆる“スター”と呼ばれている人をすごく尊敬するようになりましたね。特にスポーツ選手のドキュメンタリーは、泣いてしまいます。

たとえば阪神に藤浪ってピッチャーがいるんですけど。ドラフト1位で入って、最初の3年目までは毎年2桁勝利で順調だったんですが、その後、深刻なスランプに陥ってしまって。僕も野球もしていたからわかるんですが、野球やめたくなったやろうな、と。それでも粘って、今年ようやく復活してきています。

才能ある若い選手もドラフトでどんどん上がってきている、競争の厳しいプロの世界で粘って頑張り続けること。それは本当にすごいことだと思います。

ーー言われてみると、その通りですね。

あと、ドキュメンタリーを見るのは、僕が「過程」を見るのが好きだというのもあります。

『Fate』に話を戻しますが、切嗣が聖杯に願った先を見たシーン※で初めて切嗣の鉄仮面が剥がれ、葛藤が見えた気がしたんです。

※すべての願いを叶えると言われる「聖杯」に、切嗣は恒久的な平和を願おうとした。しかし聖杯は“人類の皆殺し”という歪んだ形でしかその願いを叶えられないことを、切嗣は悟った。

ずっと僕は切嗣のことは、大局を見ているリアリストだと思っていました。でも、そこでようやく人間らしさが見えたんです。そのときに、これは切嗣が「正義と向き合う」物語だったんだと感じました。

つまり、登場人物を最初から正義側と悪側に割り振っている作品も多いですが、『Fate/Zero』は、切嗣が正義のキャラクターになるにはどうしたらいいか、その過程を描いているんです。それからは、ドキュメンタリーもしかりですが、アニメを観る時もそのキャラのプロセスに注目するようになりました。

ーー物語の中での成長・前進に目を向ける、とも言えるかもしれませんね。では、前進という観点で、ご自身のことも聞かせてください。これから先、挑戦したいことはありますか?

卒業後の進路は、いま現在はアニメ関連会社への就職を考えています。ただ、そのためには圧倒的に知識がないので、大学生のうちは本をひたすら読みたいです。ノムさん(故・野村克也氏)は、「豊富な知識がピンチを救う」と言っていましたし。

それから、現在は「Freeeat」という食品廃棄削減プロジェクトに取り組んでいます。僕はサポーターという立場ですが、もともと問題意識のあったフードロスについて、noteなどの媒体で周知をしています。


こんな風に、自分にないものを羨むのではなく、できることから始めよう、と今は考えています。

<了>

取材協力:ふーみん(@KADOanime)さん


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