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サマージャム

私が勤めてるパン工房は、同居人のご両親が経営してる。移住したばかりの頃はそこに住ませてもらっていた。今はもうそこを出たが、週に一度くらいは訪問し、パン仕事を手伝ったり、一緒に食事をしたりしてる。

台風前のある日、朝市で売っていたパンが思ってたよりも残った日があった。少なければそのまま貰うこともあるが、その日は工房に届けることにした。

工房に着くと、義両親と猫が出迎えてくれた。奥で滞在中のハイジとマリアンヌが朝ごはんを用意してる。残ったパンを義母に見せ、「これで朝ごはんにしちゃおうか」と話し合った。

残りもののパン

マリアンヌが用意してくれたサラダと、ハイジが入れてくれたカプチーノ、残り物のパンを囲んで、テラスで食事をとる。後から猫もついてきて、こぼれものを狙ってた。

私はちっとも英語が喋れないので、ハイジやマリアンヌとはほぼ単語での会話、あとはジェスチャーしかできない。詳しいことは、義父が通訳してうちらを繋げてくれる。

だけど会話ができなくても、食事を囲むことはできるし、おいしいねって言い合える。スイスから来た二人とここの文化は、多分そう遠くない。みんなカプチーノが好きやし、チョコレートが好きや。猫のことも好き。それだけで私たちは、繋がってられる気がする。

テラスで朝食をとった日
ハイジが持ってきたチョコレート


また、今月11日からは美術館で合同展が始まった。私もハイジもマリアンヌも、出展してる展覧会や。通訳なしで詳しい作品のコンセプトや意図を読み取るのはむずかしい。でも言葉にならないようなものこそ、作品から伝わってくるし、私はそれに共感した。全然別のところで生まれたのに、分かち合えるものがあることが嬉しい。こうやって同じ場所で作品を飾ることができたことも、光栄だ。

(もちろん言葉じゃないと伝わらないこともあるので、後日手紙を送りたい。)

オープニングレセプションの日
会場の様子
会場にいる同居人

二人がスイスに戻る日、名前を呼びながらハグをした。その時、自分の中に、愛みたいなものがジュワッと湧いてくるのを感じた。言葉の通じない人でも好きになれるんだ…それを実感した一時やった。


こちらの美術展に参加しています。

若手アーティスト応援展 INTERACT/インタラクト
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生きる糧にします