原村朝市と
AM4:55、寝室にアラーム音が響いた。隣で寝ている同居人も同時刻に設定していたみたいで、想定の2倍大きな音が流れてる。
瞼は重いが、体を起こすことはできた。早く動きすぎないように気をつけながら、身支度を始める。同居人はまだ起き上がれず、ゴロゴロしてた。
今日から原村朝市が始まる。夏の間だけ開催される朝市で、お客さんは地元の人だけでなく県外の人も多い。私の家からは車で一時間ほど走ったところにあり、今日は私と同居人とふたりで店番する日やった。
会場に着くと、既に50店舗ほどのテントが並んでる。入り口近くのブースを借りて、私と同居人はパンを並べ始めた。
コロナに入ってから、『信州薪窯パン野良屋』の営業は縮小され続けた。もともとイベント出店をメインに商いをしていたので、コロナ禍では仕方ないことや。代わりに、スタッフはそれぞれアルバイトに出た。
だから今日のイベント出店は一年ぶり。どんなもんやろうなと思った。パンの価格とか、並べ方とか、私はちゃんと覚えてるやろうか。寒いかな。それとも暑いかな。朝は起きれるかな。お弁当忘れずに持っていけるかな。
実際、搬入は以前よりも手際が悪かったと思う。でも並べるうちに、感覚を思い出してきた。お客さんが来ると、自然に挨拶をして、自然に接客する自分がいた。
パンの総額をお客さんに電卓で見せる。会計をしながら、ちょっとした雑談をする。ワンコと一緒に来た人には、ワンコの話をする。海外から来たお客さんは、パンの写真を撮ってく。時々、「私も移住したばかりで」と身の上話をしてくれる人もいる。
どんなもんやろうと思った出店は、一年あいてるとは思えないような馴染むものやった。市場の開放感と、私の接客とが重なり合う感じ。この場に溶け込んで、自分の役を果たせてる感じ。それは幸せな感覚やった。
「そうや…私はいつでも風景に溶け込みたいんやよな」と思った。それが自然でも、社会も、風景である限り溶け込みたい。だけど実際には、特に社会で、私は浮くことが多い。それは「少し変わってる」程度なんやけど、その少しが自分は気になってしまう。
菊池亜希子さんというモデルがいる。彼女の仕事を見た時、背景と馴染む演技力が高いように感じた。「すごく華がある」とかじゃなくて、背景の配色と自分の色みを合わせることで、画全体をおしゃれにさせる。だからスタジオだけじゃなくて、ロケ地でもどこでも画になる人や。
私も亜希子さんのような仕事がしたい。モデルをしたいって意味じゃなくて、自分のやり方でそういうことがしたい。そんなことを教えてくれる、原村朝市やった。
⚫︎原村高原朝市
8/31まで毎日開催してます。
時間は朝6時半から8時まで。
毎週月・金・土月曜日がるきさんのお店番の日です。日曜日は父ちゃんと母ちゃんがお店番してます。
Instagram: 原村高原朝市
⚫︎展示のお知らせ
信州高遠美術館にて開催される『INTRACT /インタラクト』に参加します。
私は以前福岡で展示した、『風景につかる』というインスタレーション作品を飾ります。
季節は夏。避暑がてら、ぜひ遊びにいらして下さいね。
Facebook: 若手アーティスト応援展ーインタラクトー
生きる糧にします