公衆衛生の世界への扉
そうつぶやいたのは国内外で活躍する感染症内科医である。彼女の何気なく言ったそのひとことが、進路に迷っていた私の背中を押した。微生物レベルから患者集団レベルまで、ズームの段階、つまり視点を切り替えながらアプローチできることが感染症に携わる醍醐味であるという意味であったのだろう。当時はその言葉の真意を正確に捉えることができなかったにもかかわらず、まるでこどものように心の底からワクワクしたのを鮮やかに記憶している。
その出会いから数年の間に、臨床から研究にフィールドを移しながら感染