幼少期⑨

脳死状態でも、本当はまだ希望があるのだろうかと感じてしまう様な事が多々あった。

手を握ると一瞬だけ、手が動いたり。
涙を零したり。

そして4日経ち、予告されていた余命の最終日。
しかし母は、変わらなかった。
動かないし、手の温もりもないし、自発呼吸もない。
それでも、母の心臓は1分間に60回程、動いていた
血圧も少し高めだったがしっかりとあった。
尿も少ないが出ていた。

やはりまだ希望が残っている。
某SNSで丁度脳死状態から生還した方の動画が流れてきた。
さらに希望が大きくなった気がした。

しかし、事態は少しずつ、ちょっとずつ
悪くなっていった。

あと4日と余命宣告を受けて2週間くらいだろうか。
朝方4時半。
ハッと目が覚めると、姉が私の肩を揺さぶっていた。
と同時に、耳に響く規則的な電子音と啜り泣く声が聞こえた。

静かだった。

心臓マッサージもしていなかった

お腹が痛くなった。

トイレに逃げた。

病室に戻った。

呆気なく、母はいなくなった。

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