見出し画像

世界遺産のグヌン・ムル国立公園 02/05

秘境のリゾート、巨大洞窟とコウモリ達、そして、アントゥー(精霊)

プナン族という民族は、元来(今でも多少いますが)、森の中で移動をしながら、生活をしていた移動狩猟民族でした。

そういったプナン族の人々でも、対照的な農耕民族のブラワン族の人々でも、その先祖たちは、絶対に、洞窟の中には入らなかったそうです。

何故かというと、彼らにとって、洞窟の中は、魔物(アントゥー)が住む場所と考えていたのです。鍾乳石が創り出す岩々は、見方によっては、色んなものに見えます。きっと、そういったものは、魔物の化身と思えたのでしょう。

 しかし、魔物は、どこにでもいます。特に、森には、いろいろといます。森での掟は、次回に回すとして、本当にあった話を書きます。

それは、ディア・ケイブへ行く木道の修復工事をしていた労働者たちが、森の中に泊り込みで、工事をしてました。
真夜中、一人で事務所へ行かなければいけない用事が出来た人がいて、暗い道を約1km先の事務所へ行き、その戻る最中、何か、後ろからつけられている様な気がして、彼は怖くなって、急ぎ足で、戻りました。

工事している場所に辿り着いた所、慌てているので、他の人が理由を尋ねると、この事を話しました。すると、中の一人が、そんな幽霊(アントゥー)なんかいないと大笑いをして、彼を罵りました。

事件は、翌日、起こりました。 工事は、未だ続いておりましたが、翌日、この罵った彼が、行方不明になったのです。しかも、その彼は、ここの人間ではなく、他所から来た人で、このあたりの森の様子が分からない筈。

心配した現地の人々は、銅鑼を鳴らして、森の中を、皆で探しました。伝統的に、森で人が行方不明になると、銅鑼を鳴らす事によって、その人を呼ぶのです。
1日目が過ぎ、2日目が過ぎ、3日目が過ぎ、そして、4日目が過ぎ、少し諦めの色が出だした時、新しい展開が起こったのでした。

 丁度、私は、その5日目にムルに到着し、この話を聞いたのですが、夕方、現地の人が言うには、空港から見える、約400m位の高さの石灰岩のむき出しになった絶壁の中腹(高さ200m位)に、彼が行方不明になった時に着ていた、赤いシャツらしきものが見えるそうです。

麓からは、木が邪魔をして、はっきりと見る事が出来ないので、ほとんどの人が空港近辺から見てるのですが、双眼鏡で見ても、確かに、立体的な赤いものが見えるだけ、そして、その日は、何もする事ができず、日が暮れてしまいました。

村人たちは、彼が山を登って、上から落ちて、中腹に引っかかってしまったか、とか、何かがあって、登って行ったけど、途中で力尽きてしまったのか、等といろんな憶測が飛び交っていました。

しかし、その絶壁は、傾斜がほとんど90度の断崖だった事から、謎は深まるばかりでした。

(03/05)に続く。。。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?